LPガスは私たちの日常にすっかり溶け込んでいます。
宇都宮市でもアパートなどの賃貸物件の多くは、都市ガスが整備されている地域でもLPガスを採用しています。
しかも利用料は都市ガスと比べるとかなり割高なのは周知の事実です。
LPガスといえば家庭用の個別タンクが敷地内の目立たないところに設置されているといったイメージですが、家庭で鍋などをする際に使用されているカセットコンロ、あれも中身はLPガスです。
最近の新築住宅においてはオール電化の普及にくわえ、都心部では都市ガス配管の埋設普及率があがっていることから、一昔前と比較すればLPガスの採用率は減っています。
とはいえ、現在でも全国の4割の世帯で使用されているといわれています。
LPガス販売業者の専従的な価格設定による「割高感」や、個別タンク意匠性の問題などにより採用率が低下しているLPガスですが、災害時の利便性という”点”においては他の追随を許さないといった特徴もまたあります。
今回の記事では、いがいに知られていないLPガスの特徴について解説します。
LPガスは英語表記では「Liquefied Petroleum Gas」とされ、日本語では「液化石油ガス」と呼ばれています。
LPガスの成分はプロパンガスとブタンガスです。
これにたいして天然ガス(都市ガス)の成分はメタンガスです。
「成分が違うだけで、ガスとしての使い勝手は同じでは?」と思われるかも知れませんが、性質がまったく異なります。
都市ガスも前面道路に配管が埋設されていない場合には、バルクタンクと呼ばれる大型のタンクに液化天然ガス(LNG)を充填して使用することができますが、都市ガスの原料であるメタンを液状化するには-162 ℃の超低温を必要とします。
天然ガスは気体としてガス田から採取される化石燃料の一種ですが、産出国は海外ですのでタンカーなどで運搬する際には利便性や経済性を考慮し液化して体積を圧縮します。
液化することにより体積は1/600になります。
輸入されてきた液化天然ガスを、今度は気体に戻して各家庭に供給するのですが「貯蔵・気化・保管」の大きな施設が必要になります。
また液化ガスを気体に戻すには海水を使用しますので、タンカーでの運輸などの利便性も含め全国に38箇所あるLNG基地は全て海沿いに設置されています。
つまり運用には、非常に大きな施設が必要であるというのが天然ガスの特徴です。
その点でプロパンガスは-42℃・ブタンガスは-0.5℃で液化できます。
また、プロパンやブタンは加圧により常温でも容易に液化できることから、楽に加工できるのが特徴です。
このような簡易性から、古くから家庭用やレストランなどの業務用のほか、工業用、自動車用の熱源・燃料として、さらには合成樹脂やゴムを作る原料としても使われてきました。
図_石油・天然ガス小委員会市場動向調査
都市ガス供給管は、全国的にみれば国土面積の7%しかなく、それも主に都市部に集中していますので山間部や離島では困難です。
利便性と簡易性が高いことから、先ほど解説したようにいまだ採用率の高いLPガスですが、新築時の検討でもっとも嫌われる原因が供給価格の高さです。
35坪程度のオール電化住宅と、10坪未満の賃貸アパートの光熱費が同程度(もしくは戸建ての方が安い)といった現象が散見されます。
これには理由があり、建築する時にLPガスを採択すると配管まで含めた設備費用は「無料」で、ガス販売会社が負担します。
「え、無料?」
そうなんです。
「お得じゃないですか」
一見するとお得にみえますがそれは建築会社にとってだけ、なんせ「タダより高いものはない」とばかりに、入居して実際に使用する方々が支払う月々のガス料金に、工事費用も含め上乗せされています。
長期継続供給の既得権を獲得するため、LPガス会社は設備費を無料で供給するんです(まさに、損して得取れ)
LPガス関連団体も、このような専従契約的な供給価格の高さを抑制し、本来は優れた性質を持つLPガスを普及しようと知恵を絞っていますが、なかなか苦戦しているようです。
ただし、震災などがおこるたびにLPガスの特徴である災害に強いエネルギーが脚光を浴びます。
もっとも大きな理由が「自立稼働が可能な分散型エネルギー」だからです。
LPガスは容器に充てんして必要とする場所に設置できる「分散型」で、電力などを介さずに独立して稼働します。
自家発電機用の燃料となる重油や軽油も、「自立稼働が可能な分散型エネルギー」に位置づけられますが、重油は3カ月、軽油は半年で劣化が始まるため長期保存には向きません。
LPガスは品質劣化や機材を腐食させてしまうなどのリスクもなく、長期保存といった特徴があります。
さらに、ガスボンベ供給体制そのものが、災害への備えにもなっています。
家庭用LPガスは、ガス切れを起こさないよう2本セットで設置されるのが基本であるのはご存じかと思います。
つまり使用中の1本に加え、満タンのボンベが予備として設置されている状態です。
災害によりライフラインが寸断されても、この予備ボンベがあることにより1カ月程度生活できるだけのガスが備蓄されていることになります。
このようなLPガスの災害への強さは、東日本大震災でも証明されました。
災害では、特に被災から3日間(72時間)をいかに乗り切るかが重要とされます。
実際に自衛隊などが援助に入るまで、各地の避難所でLPガスの軒下在庫を活用した暖房・炊き出しなどがおこなわれ、命をつなぐ役割を果たしたと報告されています。
また、設置の容易さから被災者用の仮設住宅でも、発電、冷暖房、調理、給湯の主要エネルギーとして用いられました。
復旧が早いのもLPガスの特長です。
被災しても、LPガスの場合は1戸単位での点検・修理で済み、ボンベから使用する場所までの配管も短いため、迅速に復旧できるのです。
東日本大震災を契機に、あらためてその強靭性が見直されたLPガス。
近年は、災害に備える自衛的な「備蓄燃料」としてのLPガスの活用が推進されています。
経産省が推奨している「LPガス災害バルク等導入事業」です。
この事業は、ライフライン機能の維持が求められる医療施設や老人ホーム、避難所となり得る自治体庁舎、学校、公民館、商業施設などを対象に、「LPガス災害バルク貯槽」やLPガス発電機などの設備導入にかかる経費の一部を補助するものです。
「LPガス災害バルク貯槽」とは、LPガスを貯蔵できる、耐震性や安全性にもすぐれた巨大タンクのことです。
施設の規模により導入されるタンクの容量は1トン~3トンなどさまざまにありますが、たとえば1トンのLPガスで、「発電機1台+ガスストーブ5台+70人分の朝昼晩の炊飯+ガスコンロ2台+1日3時間のシャワー」を12日間まかなうことができるとされています。
ガスをエネルギー源とする「ガスヒートポンプエアコン(GHP)」を使用すれば、冷暖房の供給も可能です。
私たちは不動産会社ですので、やみくもにLPガスを推奨しようと思っていません。
ただし良心的な価格でLPガスを供給している会社も数多くありますし、一部の暴利をむさぼるような価格設定で業界全体のイメージを落としている業者により、LPガスの有用性が理解されず毛嫌いされるのは如何なものか?
そのような意味合いも込めて、今回のブログを執筆させて戴きました。
私、荻原功太朗(宅建士・不動産コンサルティングマスター)は資産家の皆様を対象とした、投資物件の限定情報のご紹介、コンサルティング業務を担当致しております。不動産売買のご相談についても、ご指名頂ければ対応させて頂きます。
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