「家を売るなら一括査定!」「複数の会社に依頼して最高値で売却!」
このような魅力的な広告を、宇都宮市の皆さまも目にすることが多いのではないでしょうか。
インターネット上には不動産一括査定のサイトが溢れ、まるで「使わなければ損」とでも言わんばかりの宣伝が繰り広げられています。
しかし、この便利そうに見えるサービスには、多くの方が気づいていない大きな問題が潜んでいます。
特にここにきて、宇都宮市内の不動産マーケットは、今まで上昇基調だった相場が足踏みを始め、一括査定の負の側面がより鮮明に表れてきているのが現状です。
今回は、一括査定の仕組みと隠された問題点について、宇都宮市の実情を交えながら詳しく解説していきます。
一括査定の仕組み 〜本当の受益者は誰か?〜
一括査定の仕組みは実にシンプルです。
売主さんがネット上で物件情報を入力すると、複数の不動産会社に一斉に査定依頼が送信されます。
しかし、この便利そうなサービスで本当に得をするのは誰でしょうか。
一括査定サイトを運営する企業は、不動産会社から1件あたり数万円の紹介料を受け取っています。
つまり、査定依頼をすればするほど、サイト運営会社の収益が増える構造になっています。
運営会社は、査定依頼だけもらえれば稼げるため、売主さんの満足度や適正価格での売却成功は、残念ながら二の次となってしまいます。
車やバイクの一括査定とは根本的に異なる問題
多くの方が「車の一括査定は便利だったから、不動産も同じでしょう」と考えがちですが、これは大きな間違いです。
車やバイク、引っ越しの一括査定と不動産の一括査定には、決定的な違いがあります。
車の場合、査定額がそのまま買取価格となり、その場で現金化されます。
査定業者は実際にその価格で買い取る責任を負うため、いい加減な高値査定はできません。
引っ越しサービスも、提示された見積もり価格でサービスを提供する義務があります。
しかし不動産の「査定」は、実際の売却価格を保証するものではありません。
査定業者(不動産会社)は、その価格で買い取る義務も、その価格での売却を保証する義務もないのです。
つまり、無責任に高い査定額を提示することができる構造になっています。
この根本的な違いを理解せずに、他業界の一括査定と同じ感覚で不動産一括査定を利用することが、多くのトラブルの原因となっています。
宇都宮市の不動産仲介業界は、地元に根ざした中小企業が中心となっています。
大手全国チェーンの進出は限定的で、地域の事情を熟知した地場企業同士が競争している構造です。
大手が市場シェアを独占していない地方では、大都市に比べ健全な競争環境があるとされますが、一括査定というシステムがこの競争を大きく歪めています。
不動産業者にとって高値査定は「リスクゼロ」の営業手法
ここで最も重要なポイントをお話しします。
不動産業者にとって、高値査定を出すことにはほとんどデメリットがありません。
むしろメリットしかないのが実情です。
高い査定額を提示すれば媒介契約を獲得できる可能性が高まります。
契約を獲得してしまえば、後は「市場の反応を見て価格調整しましょう」と言いながら、段階的に値下げを提案していけばよいのです。
この手法の巧妙な点は、売主さんが値下げに納得するまでの期間も仲介手数料発生の可能性を維持できることです。
最終的に売却が成立すれば手数料を得られ、仮に売却に至らなくても営業コストはほとんどかかりません。
つまり、業者側にはリスクがほぼ存在しないのです。
一方で、売主さんは貴重な売却タイミングを逸し、最終的により安い価格での売却を余儀なくされるケースも少なくありません。
これが一括査定の最も深刻な問題点です。
「値下げ前提」の営業戦略の実態
多くの売主さんは、不動産会社が提示した査定額が「売却可能価格」だと思い込んでいます。
しかし実際には、査定価格は「まずはこの価格で市場に出してみましょう」という意味でしかないのです。
よくあるケースは、高値査定で契約を獲得した後、以下のような流れで値下げを誘導するパターンです。
まず1〜2ヶ月様子を見て「反響が少ないので100万円下げてみましょう」、さらに1ヶ月後には「もう少し下げないと厳しいですね」といった具合です。
この過程で、売主さんは時間の経過とともに、徐々に価格への期待値を下げていきます。
最初に適正価格を提示されていれば素直に受け入れたであろう価格でも、高値から段階的に下げられることで「仕方がない」と納得してしまうのです。
業者側から見れば、この手法は非常に効率的です。
最初の高値査定で契約を獲得し、後は時間をかけて売主を説得していけばよいからです。
売主さんの貴重な時間や機会損失については、残念ながら考慮されていません。
正直な業者が損をする歪んだ仕組み
一括査定で最も深刻な問題は、誠実で正直な不動産業者が不利になってしまうことです。
適正な市場価格を正直に伝える業者は、一括査定では「安い査定」として敬遠されがちです。
例えば、適正価格3200万円の物件に対して、A社が3200万円、B社が3500万円、C社が3600万円の査定を出したとします。
売主さんの多くはC社を選びますが、結果的にその物件は長期間売れずに最終的に3100万円で売却される、このようなケースは珍しくありません。
A社の担当者は「最初から3200万円で売り出していれば2ヶ月で売却できたのに」と思いながらも、正直な査定を出したために契約機会を失います。
一方でC社は、高値査定で契約を獲得し、値下げを繰り返した後でも手数料を得ることができます。
この構造により、市場に詳しく誠実な業者ほど一括査定では不利になり、営業重視で後のことを考えない業者が有利になるという本末転倒な状況が生まれています。
これは宇都宮市の不動産業界全体にとって非常に不健全な状況です。
業界全体のモラル低下を招く悪循環
一括査定の普及により、宇都宮市内でも「高値査定が正義」という風潮が広がりつつあります。
本来であれば地域密着で信頼関係を重視していた地場業者も、一括査定で選ばれるために高値査定を出さざるを得ない状況に追い込まれています。
真面目に適正査定を出し続ける業者は契約機会を失い、経営が困難になります。
一方で、高値査定を乱発する業者は契約を獲得し続けます。
この結果、業界全体のモラルが低下し、売主にとって本当に有益なサービスを提供する業者が淘汰されてしまう危険性があります。
長期的に見れば、これは宇都宮市の不動産市場全体にとって大きな損失です。
信頼できる業者が減り、売主の利益を真剣に考える業者が生き残れない環境は、最終的にすべての不動産所有者の不利益につながります。
流動性阻害が生む市場全体の停滞
高値査定による売り出しが市場に溢れることで、宇都宮市の不動産市場全体の流動性が阻害されています。
購入を検討している方々は、相場より高い物件ばかりを目にすることになり、「今は買い時ではない」と判断して購入を先延ばしにします。
この結果、本来であれば成立するはずの取引が成立せず、売主さん・買主さん双方にとって不利益な状況が生まれます。
市場全体の取引量が減少することで、さらに売却が困難になるという悪循環に陥ってしまいます。
宇都宮市内でも、適正価格であれば2〜3ヶ月で売却可能な物件が、高値査定を鵜呑みにしたために半年以上売れずに最終的により安い価格での売却を余儀なくされるケースが増加しています。
市場規模が限られている地方都市ならではの問題が、一括査定により一層深刻化しています。
下げ相場で露呈する深刻な問題
2024年後半から2025年にかけて、金利上昇への懸念から不動産市場の様相が変化しています。
宇都宮市でも購入者の住宅ローン審査が厳しくなり、購買力の制約が顕著に表れ始めています。
上昇相場では「高値スタート→徐々に値下げ」という手法でも最終的に売却できていました。
しかし、現在のようなフラットや下降局面では、最初の価格設定ミスが致命的な結果を招きます。
高値で売り出された物件は、市場の変化により当初想定していた買い手層から完全に外れてしまい、大幅な値下げを余儀なくされます。
特に宇都宮市では購入希望者の絶対数が限られているため、一度機会を逸すると次のチャンスまで相当な時間を要する可能性があります。
このような環境では、正直で適正な査定を出す業者の価値がより一層重要になりますが、一括査定のシステムはそうした業者を排除してしまう構造になっています。
信頼できる業者の見極め方
では、どのように本当に信頼できる不動産会社を見つければよいのでしょうか。
最も重要なのは「査定額の高さ」ではなく「適正な価格提示と誠実な姿勢」です。
真に売主の利益を考える不動産会社は、市場相場を冷静に分析し、時には耳の痛い現実をお伝えします。
「他社より高い査定を出せば選ばれる」という安易な発想ではなく、適正価格での確実な売却戦略を提案できる会社こそが、本当に信頼できるパートナーです。
査定面談では、以下の点を確認してください。
「なぜその価格なのか」の根拠を具体的なデータとともに説明できるか、売却期間の見通しを現実的に説明できるか、そして何より「高く売り出して様子を見る」ではなく「適正価格で確実に売却する」戦略を提案してくれるかどうかです。
曖昧な説明で高値査定を提示する業者は、後の値下げ誘導を前提としている可能性が高いと判断すべきです。
一方で、他社より低めでも具体的な根拠を示して適正価格を提案する業者こそが、本当にあなたの利益を考えている業者だと言えるでしょう。
まとめ
一括査定サービスは、売主さんにとって一見便利に見えますが、車や引っ越しの一括査定とは全く異なる問題を抱えています。
不動産の査定価格には責任や保証が伴わないため、業者は無責任に高値査定を乱発できる構造になっているのです。
その実態は、査定サイトの運営会社と、一部の不誠実な不動産業者にとって都合の良いシステムとなっています。
特に深刻なのは、正直で誠実な業者が不利になり、業界全体のモラル低下を招いている点です。
高値査定はリスクのない営業手法であり、最終的に損失を被るのは売主さんだけという構造になっています。
さらに問題なのは、この仕組みにより市場に真摯に向き合う優良業者が淘汰されてしまう危険性があることです。
宇都宮市のような地方都市では、物件の多くが実需ベースで取引され、限られた市場規模の中で、適正価格での迅速な売却こそが成功の鍵となります。
他業界の一括査定サービスとは根本的に異なることを理解し、査定額の高さに惑わされることなく、誠実で現実的な提案をしてくれる不動産会社を慎重に選ぶことが重要です。
一括査定の甘い誘惑に惑わされず、長期的な信頼関係を築ける真のパートナーを見つけるよう心がけるようにしましょう。
それが結果的に、売主さんにとって最も満足度の高い売却成功につながり、宇都宮市の不動産市場全体にとっても健全化につながります。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
★荻原功太朗の業務について★
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