2025年の公示地価が国土交通省から発表されました。
今回もというか、年々、地価の二極化が鮮明になり、富が極へ極へと流れているのを実感します。
東京、大阪、福岡などの主要都市の商業地は10%を超える大幅な上昇を示す一方、開発から取り残された地方では上昇率が鈍化するか、下落を続ける地域も少なくありません。
宇都宮の地価は東高西低が鮮明に!
最新の2025年地価公示では、生活レベルでインフレを誰も実感するほど物価が上昇しているのに、栃木県全体の地価は、平均で0.1%下落し、33年連続の地価下落が続いています。
完全にインフレに負けちゃってます。。(T_T)
JR宇都宮線の沿線エリアや、JR宇都宮駅の東側(LRT開業済み)では地価が顕著に上昇する一方、宇都宮市内でも駅西側では上昇率が低く、いわゆる「東高西低」の状況が鮮明になっています。
具体的な数字を見ると、商業地の上昇率でトップ5を占めているのはいずれも宇都宮駅東側のLRTが通るエリアと日光市の中心部です。
特に「宇都宮市東宿郷1丁目」は1平方メートルあたり42万1,000円と県内で6年連続最高値となっています。
地価最高地点は6年連続で東口駅前となりました。
住宅地の最高額地点は24年連続で「宇都宮市宿郷5丁目」で、1平方メートルあたり14万7,000円(前年比4,000円増)となっています。
長年この街で不動産業を営む身として、旧市街地である街の西側より、新たに開発された駅東エリアに商業地、住宅地の地価最高地点が移動し、定着していることに、大きなトレンドチェンジを感じています。
また住宅地の上昇率で見ると「宇都宮市ゆいの杜4丁目」が7.7%上昇して4年連続で最も高い伸び率を示し、LRT沿線の住宅地が高い人気を維持しているのがうかがえます。
開業フィーバーは落ち着きましたが、地元民に愛される公共交通としてLRTが定着し、不動産相場に大きな影響を与えるようになってきました。
宇都宮駅東口から芳賀・高根沢方面へと延びるLRTの沿線では、新たな商業施設や住宅開発が加速し、不動産需要が高まっています。
一方、駅西側はLRT延伸計画はあるものの、建築業界の深刻な人手不足と、インフレによる建築コストの高騰が押し寄せ、各地で再開発の見直しが相次いでいることから、計画達成への不透明感が強まっています。
過去ログ→【LRT延伸に黄信号!?宇都宮市でも公共工事ができなくなる!?】全国各地で入札不調が乱発し、混乱が広がっている!
西側の再開発も構想段階のものが多く、東側と比較すると投資の流れが限定的です。
県内の地価動向全体を見ると、公共交通が充実しているエリアと外国人観光客が増加している日光市では上昇が見られる一方で、過疎化が進む地域では下落が一層大きくなっており、地域間格差が拡大しています。
現在は地価が落ち着いている駅西も、LRTの宇都宮駅西側延伸の動きが活発化し、期待が高まってくれば、沿線予定地を中心に、地価が上昇することが予想されます。
しかし、先日も北海道新幹線の開通が予定されていた2030年から、なんと8年も延期されると報道があり、再開発に限らずインフラの整備の遅れも目立ち始めていています。
→北海道新幹線延伸 開業時期の大幅遅れ 有識者会議が報告書提出(NHK)
LRTの西側延伸計画の進展具合によっては、現在の「東高西低」流れが変化する可能性もありますが、現時点ではすでにLRT開業済みで、沿線での不動産開発計画が着々と進行している東側優位の傾向がしばらく続くと見ています。
工業地に関しては県全体で前年比3.3%の上昇となっており、特にLRT停留場近くの芳賀町などで上昇が顕著です。
栃木県内の工業地の需要は底堅く、住宅地や商業地とは異なる動きを示しており、製造業を中心とした産業立地の需要が依然として堅調であることを示しています。
この状況をどう捉えるべきか、さらに詳しく考察してみたいと思います。
主要都市の地価上昇率に見る格差
日本全体の商業地の上昇率を見ると、東京23区が11.8%と前年の7.0%から上げ幅を拡大しています。
大阪市も11.6%(前年9.4%)、福岡市は11.3%と10%超の高い上昇がつづいています。
同じ政令市でも、札幌市は6.0%、神戸市5.5%、名古屋市5.0%、広島市は4.6%にとどまっています。
この数字の背後には、投資マネーの流れと人口移動という二つの要因が隠れています。
気になるのは、この格差が今後も広がり続けるのかという点です。
人口流入と地価の相関関係
興味深いのは、商業地の上昇率と人口移動の関係です。
総務省の住民基本台帳に基づく2024年の人口移動報告によると、転入超過が多い自治体ほど地価上昇率が高い傾向にあります。
当たり前といえばそうなんですが、高齢になってから転居する方は少ないので、移動する人の多くが若者だと考えると、若者の集まる場所に富が向かうのがわかります。
政令市の神戸市や広島市ですら、すでに近隣の大都市圏に人口を奪われ、それぞれ2000人台の転出超過という状況で、地価の上昇率も低めとなっています。
人が集まるところにお金も集まります。
シンプルな原理ですが、ここに現代の都市間競争の本質があるのかもしれません。
人口が流入する都市には、ビジネスと観光の両面で魅力があります。
大阪はインバウンド増加で関連産業が盛り上がり、福岡市は開業率が5.3%と全国の大都市で最も高く、新興企業支援に積極的です。
宇都宮市もこの地域間競争において、街の魅力を高め、現役世代の流出を防げるかが、今後の地価動向を予測するうえでのカギとなります。
建設コスト上昇の影響
足元では建設コストや維持・管理コストの大幅な上昇が続いています。
これは都市開発の在り方を根本から変える可能性を秘めています。
投資家も投資先を選別する動きが強まり、建築費が限界まで上がった今、事業者は需要が底堅い都心部の開発に集中するようになってきています。
この流れは、地方の再開発に大きな影響を与え始めています。
例えば岐阜市ではJR岐阜駅北側の再開発ビルがコスト高を理由に規模縮小を余儀なくされ、札幌市でも駅前の再開発計画が小規模化され、計画も再び延期されています。
インフレは世界的な流れであり、なおかつ日本の人手不足は今後ますます深刻になることは確実なので、今後着工が予定されている都市開発やインフラ整備の多くは、延期だけでなく、計画見直しや、中止も相次ぐことが予想されます。
住宅地の地価動向と格差社会の進行
都市部の住宅地も地価が上昇し、東京23区では7.9%上昇しました。
東京都心部では、利便性の高い駅周辺を中心に、高価格でも販売が堅調です。
千代田区、中央区、港区の都心3区では外国人や富裕層の需要が大きく販売も順調に推移しています。
大都市に不動産を所有している富裕層は、インフレ率以上に不動産価格が高騰していることから恩恵を受け、大きく資産が増えています。
この状況は住宅格差、ひいては社会格差の拡大にもつながりかねません。
一方、現役世代の勤労者の多くは、インフレに実質賃金が追いつかず、生活が困窮し始めています。
新築物件の高騰で自宅購入をあきらめ、賃貸や中古購入に流れる人も少なくありません。
都市の居住環境というのは、その社会の縮図でもあります。
貧富格差の拡大がつづき、日本全体の均衡ある発展が難しくなってきています。
地方の明暗を分ける要因
全国的に見ると、地方で地価上昇をけん引するのは、訪日外国人客の増加が目立つ観光地や半導体など先端技術の関連工場の誘致に成功した地域です。
兵庫県北部の豊岡市の城崎温泉では中心部の商業地が前年比20.2%も上昇しました。
長野県のスノーリゾートでも訪日客の増加で別荘需要が高まり、白馬村の中心部で29.6%上昇、野沢温泉村で20.9%上昇している地点があります。
半導体工場の周辺でも地価上昇が顕著で、北海道千歳市のJR千歳駅前の地点は48.8%上昇しています。
最先端半導体の量産を目指すラピダスの進出が地価を押し上げています。
地方でも需要さえつかめれば、インフレ率以上に、地価が高騰する時代に入りました!
宇都宮市の動向と今後の可能性
北関東の状況を見ると、栃木県の商業地は1993年から32年続いた下落を脱して横ばいとなりました。
宇都宮市の住宅地全体の平均は1.0%上昇しました。
これは注目すべき転換点ですが、地方において、もはや全体の平均値にほとんど意味がなくなってきています。
それだけ、せまい地域内でも不動産需要の「ある」「なし」がはっきり別れ始めています。
宇都宮市ではJR宇都宮駅徒歩圏内やLRT沿線での不動産需要が底堅く、一部の人気エリアに投資が集中する傾向が年々鮮明になってきています。
県内の工業地は芳賀町のLRT停留場近くの地点などがけん引し4年続けて上昇しています。
東京圏の近さや災害の少なさから工場進出意欲は高く、県や市は「産業団地」などの整備を急いでいます。
今後、宇都宮市がこの流れに乗って持続的な発展を実現できるかは、都市としての総合力が問われています。
交通インフラの整備だけでなく、魅力的な都市空間を創出し、いかに優良企業や優秀な人材を街に誘致できるかが、地価上昇と都市の繁栄を持続させるためのカギとなるでしょう。
富の偏在と今後の展望
今回の地価公示が示すのは、資本や富が一部の都市や特定の地域に集中する流れが加速していることです。
低金利環境下で海外からの投資マネーも日本市場に流入しており、2024年の国内の商業用不動産投資額は計5.5兆円で前年から6割ほど増えました。
うち海外の投資家分はおよそ1兆円で、前年から7割ほど増加しています。
また建設業では資材高騰に加え人手不足による人件費上昇が大きな課題となっており、すでに全国各地で再開発の見直しや延期が相次いでいます。
→相次ぐ大規模再開発の見直し…日本も「コンパクトな都市づくり」の検討時期に(日刊ゲンダイ)
今のままコスト上昇が続けば、地方を中心に商業地の再開発やマンション建設の見直しが広がる可能性が高まっています。
宇都宮市を含む栃木県の不動産市場も、これらの全国的な動向と無関係ではありません。
人口減少が進む中で、いかに地域の魅力を高め、持続可能な発展を実現するかが問われています。
また、急速に進む不動産マーケットの国際化は、地方において、地域住民とのあつれきを生む要因となり始めています。
外国人が無制限に日本国内の不動産を自由に売買できる制度は、そろそろ見直す必要があるかもしれません。
皆さまの参考になれば幸いです🙌
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