皆さま、こんにちは!サンプランの荻原功太朗です。
日経新聞に、香川県さぬき市の大学移転に伴い、大学周辺エリアの不動産マーケットが大混乱している記事を目にしました!
→学生が消えた街、香川県さぬき市 文理大移転でワンルーム空室5割(日本経済新聞)
突然、地域にいた学生や教職員・関係者が消えた結果、旧キャンパス周辺の不動産市場は暴落といえる状況で、宇都宮市にとっても決して他人事ではない話です。
すでに地方都市のほとんどは人口減少が始まっており、これからは都市の縮小が当たり前の流れになっていきます。
今回は、他都市の事例を見ながら、宇都宮市内で学生や特定企業に依存した物件のリスクを深堀りしてみます。
1500人が一瞬で消えた衝撃の現実!
徳島文理大学が香川キャンパスから高松駅前に移転して、わずか3か月で何が起こったのか。
学生と教職員1500人が一気に旧キャンパス周辺から消えました。
結果は悲惨でした。
この地域には学生向けワンルーム3000戸があったのですが、なんと5割が空室になったというのです。
これまで満室だった物件が一夜にして半分も空いてしまう。
不動産投資をしている方なら、この恐ろしさがよくお分かりいただけると思います。
家賃相場も月3万円だったものが、市外業者が2万円で貸し始めるという価格競争に突入しています。
これまで「利回りの良さで県外にも知られていた」というこの地域の物件が、一転して売りたくても売れない、買いたくても金融機関が融資を渋るという負のスパイラルに陥りました。
宇都宮市で同じことが起こる可能性
もし宇都宮市内の大学が移転や募集停止・廃校になったり、大手企業が工場を閉鎖したら、さぬき市と同じような現象が起こる可能性は十分にあります。
記憶に新しいのは、2018年にシャープの工場が撤退してしまった矢板市の例です。
最盛期には3,100人の従業員が働き、地域経済を支えていましたが、 工場が閉鎖されると、街は急速に衰退し、駅前商店街はシャッター通りと化してしまいました。
このような状況になると、学生向けアパートや企業の社宅として使われている物件は、需要の大元が失われ、一気に価値が蒸発してしまいます。
宇都宮市には宇都宮大学をはじめ、複数の私立大学もあり、多くの学生向け賃貸物件が存在します。
また、工業団地も多く、企業の従業員向けの住宅需要も相当な規模です。
これらが何らかの理由で失われたとき、同じような不動産市場の混乱に巻き込まれるのは確実です。
さぬき市では苦肉の策として、外国人技能実習生や特定技能労働者向けの住居として活用する動きに出ているようですが、これは決して理想的な解決策ではありません。
従来の大学生や優良な法人顧客と比べて、外国人労働者向けの賃貸には様々なリスクが伴います。
言葉の壁によるコミュニケーションの問題、生活習慣の違いから生じる近隣トラブル、ゴミ出しルールなどの徹底した説明が必要など、管理コストは確実に上がります。
記事内でも「日本と外国の常識は違うことをしつこいくらい繰り返すことで、地域での摩擦も減った」とありますが、これは裏を返せばそれだけ手間がかかるということです。
しかも、これだけでは3000戸の空室を埋めることはできません。
結局のところ、入居者の質を下げながらも根本的な解決には至らないという厳しい現実があります。
地方不動産の三極化が現実のものに
以前からこのブログではお伝えしていますが、地方都市の不動産市場はすでに三極化へと舵を切り始めています。
価格を維持・上昇させることができるのは全体の10-15%程度の優良物件だけで、残りの85-90%の物件は価値下落の圧力にさらされ続けるというのが現実です。
さぬき市の例を見ても、根本的な解決策は「跡地の有効活用」しかありません。
しかし現実は厳しく、一度失われた大学機能を代替できる施設を見つけるのは容易ではありません。
実は宇都宮市周辺でも同様のリスクが高まっています。
日産自動車が経営不振で栃木工場(上三川町)の一部売却・縮小を検討していることが明らかになりました。
栃木工場は敷地面積約292万㎡で日産の国内工場最大面積を誇り、約5300人の従業員が働いています。
日産は2025年3月期で6708億円の赤字に陥り、2万人削減という大規模なリストラ策「Re-Nissan」を発表しています。
宇都宮市の佐藤市長も上三川町長と連携して対応を協議しているとのことですが、地元では「存続」と「閉鎖」の予想が交錯し、関連企業や上三川町への影響を懸念する声が広がっています。
→宇都宮市長、日産・栃木工場の存続訴え 上三川町と連携(日本経済新聞)
栃木工場周辺には多くの関連企業があり、従業員の多くが宇都宮市内にも居住しているため、影響は宇都宮市全体に及ぶ可能性があります。
宇都宮市でも情報収集の徹底が生命線
この記事の例からもわかるように、宇都宮市というミクロなエリアでの情報収集が何より重要になってきます。
大学の統廃合計画はないか、主要企業の事業縮小や移転の動きはないか、行政の開発計画に変更はないか。
こうした情報をいち早くキャッチすることが、資産を守るための第一歩です。
さぬき市の不動産業者は「4年半後に高松移転」という発表を2020年12月のニュースで知って仰天したそうです。
しかし、実際には大学内部では数年前から検討が始まっていたはずです。
表面に出てくる情報を待っていては手遅れになってしまいます。
地域の不動産業者や建設関係者、金融機関の担当者など、様々なルートから情報を収集し、変化の兆しを早期に察知することが重要です。
宇都宮市内においては、大学や企業の動向に加え、これから予定されているLRT西側延伸計画が予定通りに進むのか注視する必要があるでしょう。
計画の遅れは、計画そのものの破綻に繋がるおそれがあり、どのエリアにどんなリスクが潜んでいるのか、常にアンテナを張り巡らせておくことが重要です。
早めの損切りと資産組み換えが賢明な判断
人口減少と少子高齢化だけでなく、世界の経済情勢の変化によって、大学や企業の撤退リスクは確実に高まっています。
宇都宮市のような地方都市でも、長期的に価値を維持できるのは本当に一握りの物件だけになるでしょう。
さぬき市の不動産業者は、「3000戸のなかには管理が行き届いていない物件もあり、解体費用を補助するなどして戸数を減らす必要がある」と語っているように、需要に見合わない物件は街全体のバランスを考え、早期に整理していくことが求められる厳しい時代となりました。
多くの物件が値下がりし続けると予想される中で、将来性のない物件は早めの損切り判断をして、より安定性の高い立地や用途の資産に組み換えていくことが重要になってきています。
長く不動産を所有していると、感情的になって塩漬けにしてしまう気持ちもわかりますが、冷静に市場の変化を見極めながら、機動的な資産運用を心がけたいものです。
特に宇都宮市内では、駅前再開発エリアや新しい商業・公共施設周辺など、将来性の高いエリアと、郊外の住宅地など価値下落リスクの高いエリアの格差が今後ますます広がっていくと予想されます。
地方の現実を直視し、宇都宮市の細かな動向を注視しながら、情報収集を重ね、適切なタイミングで行動していくことが、これからの時代には求められるでしょう。
今回の内容が、皆さまの大切な資産を守る、お役に立てば幸いです🙌
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