自動運転バスへの期待は高いですね。
昨年末、宇都宮市長選挙のときに、LRT西側延伸をやめて、自動運転バスの導入を推進する候補者がいましたが、結果は大惨敗でした。
宇都宮市ではLRTブームでバスは時代遅れ感が強くなっていますが、現状、地方都市の公共交通の主軸を担っているのは、公共バスです。
豊富な予算や住民の理解、長期的な需要が見込めれば、宇都宮市が導入しているLRTのような新たな公共交通の整備も可能でしょうが、実際に整備を実現するのは容易ではありません。
宇都宮市でさえ、構想から、実際の開業までに30年以上もの歳月を要しています😅
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少子高齢化と人口減少が加速するなか、運転手の深刻な人手不足で全国のバス路線はすでに、待ったなしの崩壊が始まっています💦
過去ログ→【宇都宮市のLRT西側延伸、待ったなし!?】バス運転手不足で公共交通の崩壊が始まっている!
しかし、皆の期待をよそに、自動運転車の実用化は一向に進む気配を見せてません。
ニュースなどで話題になっている自動運転のバス路線も限られた一部エリアのみ、実証実験ばかりで、全国的にバス路線の崩壊を止める手段にはなっていません。
すでに政令指定都市クラスでも、バス路線の崩壊で通勤や通学に支障をきたす地域が出てきています。
今回は、皆様の期待に反するかもしませんが、自動運転バスに関する、厳しい現実について深堀りし、宇都宮市や地方都市の公共交通の未来を考えたいと思います。
LRTよりコスパがいいと思われていた自動運転バスの現実
昨年末の市長選挙のときもそうでしたが、LRTは新たなインフラ整備をするからコスト高で、自動運転バスは既存のインフラ(車両や道路)を利用するからコスト安だと勘違いしている方も多いと思います。
しかし現実的に、自動運転バスで既存のバス路線を維持しようとするなら、多額の設備投資が必要となります!
夢ふくらむ次世代の技術に期待するのは理解できますが、自動運転バスへの移行には重大な課題があり、実現可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
以下、その理由に迫ります。
自動運転システムの実用化には莫大なエネルギーが必要
公共交通の問題を自動運転を利用した仕組みで解決しようと考えるなら、AI処理やセンサー解析、通信システムの維持に24時間365日、莫大な電力供給が必要となります。
また、これらのシステム導入、更新にも継続的なエネルギー消費が必要となります。
さらに、自動運転バスの実現には全車両のEV化が前提となります。
つまり、既存のバス車両では対応できないので、新たに全てのバスを買い替えて、EV化する必要があるのです。
これは、高度な自動運転システムに安定した電力供給を確保するために必要なものとなります。
しかし、既存のバス車両をEVに置き換えるには、1台あたり約3,500万円の追加コストが発生します。
宇都宮市規模の運用でも、車両調達と充電インフラ整備に数千億円規模の投資が必要になります。
また、これだけの電気バスを運用するには、新たな発電所の建設が必要になります。
既存の電力網では、夜間充電でも電力需給が逼迫する可能性が高く、変電設備や送電網の大規模更新も必要となります。
日本の公共バスすべてをEV化するなら・・
先程もふれましたが、公共バスを自動運転化に対応させるならすべてのバスをEV化する必要があります。
日本の全国の路線バス台数は約70,000台と推定されていますので、その数字をもとに試算してみます。
EVバスの価格
- 大型路線バス(10.5m): 約5,000万円
- 中型EVバス: 約3,500万円(平均価格として推定)
- 小型EVバス: 約2,000万円
全ての路線バスを中型EVバスに置き換えると仮定し、1台あたりの平均価格を3,500万円とすると、
70,000台 × 3,500万円 =
24兆5,000億円
なんと、、24兆円超と、途方もない予算が必要になります💦
また、この金額は車両費用のみの概算で、充電設備や電力インフラの整備費用は含まれていません。
さらに自動運転に対応するための、センサーやAIシステム、ソフトウェア開発費・維持管理等のコストも含まれていません。
そこまでいれると、いくらになるのか想像を絶する金額になります。
宇都宮市のバス路線を自動運転化するとなると
では、次に宇都宮市内で主要なバス路線を運行する「関東自動車」の乗合バス車両(405両)を自動運転化することを考察してみます。
わかりやすいように、LRT西側延伸費用と比較してみますと、
・LRT西側延伸の概算費用と運営費
- 概算事業費:約400億円
- 年間運営費:約5億円
・自動運転バス全域導入(405両)
初期投資:
- EV自動運転バス:1,417億円
- 充電設備:162億円
- 自動運行システム開発:300億円
- 変電設備:100億円
- 配電網整備:80億円
- 発電設備:600億円
年間運用コスト:
- 電力費:35億円
- システム更新:180億円
- センサー交換:80億円
- 保守管理:50億円
5年間総コスト比較
・LRT:約425億円
・自動運転バス:約3,004億円
自動運転バスの全面導入には、LRT事業費の約7.5倍のコストが必要になると試算され、全く桁違いの金額となります。
自動運転にさせることで、運行台数が20〜30%削減できるかもしれませんが、それでも、現時点でLRTとは全く勝負になりません。
また運用コストもLRTに比べ、自動運転バスは桁違いに高いため、公共交通への導入が進まないのもうなずけます。
まとめ
すでに、大都市ですら、路線バスの崩壊が始まっています。
夢の技術「自動運転バス」は、深刻な運転手不足を解決する手段にならないのは明らかです。
宇都宮市のLRTへの投資は確かに巨額ですが、現時点で、問題解決のアプローチとしてはもっとも効率的だと思われます。
ただし、以前からお伝えしているように、インフレと人手不足による供給制約の問題から、宇都宮市が計画しているLRT西側延伸でも、全国で頻発している再開発延期や見直しの影響が出てくるのは間違いありません。
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もし、宇都宮市でLRT西側延伸が実現できなかった場合、自動運転バスへの移行というプランBはありません。
LRT西側延伸ができなければ、既存の運行システムの維持・延命に注力するしかなくなり、公共交通網の大幅な縮小が迫られるでしょう。
近い将来、好むと好まざるに関わらずインフラ提供の限界から、コンパクトシティ化が加速していくのかもしれませんね。
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