先日、衝撃的なニュースが報じられました。
10年物国債の表面利率が17年ぶりに1.7%へ引き上げられたのです!
→10年物国債の表面利率、17年ぶり1.7%に 入札結果「やや低調」(日本経済新聞)
これは何を意味するのでしょうか。
日銀の追加利上げ観測や財政悪化への懸念から、国内金利は確実に上昇基調に転じています。
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは、先日17年ぶりの高水準をつけました。
つまり、これまで「低金利が当たり前」だった時代が完全に終わりを告げ、金利上昇リスクが現実のものとなってきたということです。
この金利上昇局面で、最も警戒すべき住宅ローンの組み方があります。
それが「夫婦ペアローン」です。
宇都宮市内でも急増するペアローン契約
最近、宇都宮市内の不動産売買の現場で驚くべき変化が起きています。
過去ログでもお伝えしましたが、地元企業にお勤めのご夫婦が、新築分譲マンション5000万円超えを夫婦ペアローンで購入するようなケースが確実に増えているのです。
マンション販売の営業マンと話をすると、「ペアローンを前提にしないと、もはや新築マンションは売れない」という厳しい現実が見えてきます。
建設コストの高騰により、宇都宮市内の新築マンション価格は年々上昇を続けています。
かつては「宇都宮で3000万円台が普通」だった時代から、今では駅近の新築なら5000万円超えも珍しくなくなりました。
その結果、単独の年収では住宅ローン審査が通らず、夫婦の年収を合算したペアローンでなければ購入できない状況が生まれているのです。
不動産業者の営業トークも巧みです。
「人気物件で早いもの勝ちです!」 「ご夫婦の年収を合わせれば、年収の8倍まで借りられますよ!」 「今の低金利のうちに変動金利で借りれば、当面は返済も楽ですよ!」
確かに、書類上は借りられるかもしれません。
しかし、「借りられる額」と「返せる額」は全く別の問題です。
変動金利の恐怖:月4万円の負担増が家計を直撃
財務省は3カ月に1度、10年債の利率を見直していますが、7〜9月の1.5%から10月には1.7%へと引き上げられました。
わずか3カ月で0.2%の上昇です!
さらに深刻なのは、国債の入札で応札倍率が前回9月の3.92倍から3.34倍へ低下したことです。
これを分かりやすく例えるなら、超人気ブランドの福袋に例年なら行列ができるのに、今年は「ちょっと様子見しようかな」という人が増えて、行列が短くなってしまった状態です。
国債というのは、政府が発行する日本で最も安全とされる投資対象です。
その国債ですら、プロの投資家たちが買い控え始めているのです。
なぜでしょうか。
彼らは「これから金利がもっと上がるかもしれない」「日本の財政は大丈夫だろうか」という不安を抱き始めているからです。
今買ってしまうと、数ヶ月後にはもっと高い金利の国債が出てくるかもしれないから、様子見しておこうというわけです。
この金融市場の変化は、変動金利で住宅ローンを組んでいる方にとって、決して他人事ではありません。
現在、宇都宮市内で変動金利0.5%程度で借りている方も多いでしょう。
しかし、「変動」金利というのは文字通り「変動する」のです。
日銀の追加利上げが実施されれば、この低金利はあっという間に過去のものとなります。
具体的な数字で見てみましょう。
仮に5000万円を変動金利0.5%、35年返済で借りた場合、月々の返済額は約13万円です。
年収600万円のご夫婦なら、ボーナス払いなしでも何とか返せそうな金額です。
しかし、金利が1.5%に上昇すれば月々の返済額は約15.3万円、2.5%なら約17.7万円へと跳ね上がります。
当初の13万円から比べると、月に約4.7万円も増えることになります。
月に4万円以上の負担増というのは、家族4人の1ヶ月分の食費に相当し、子ども2人の習い事をすべて諦めなければならない金額であり、妻がパートで働いて得られる収入の大部分が消えてしまう金額です。
つまり、金利上昇によって、それまでできていた貯金が全くできなくなったり、子どもの教育費を削らざるを得なくなったり、生活そのものを大きく見直さなければならなくなるのです。
過去の歴史を振り返ると、一度金利が上がり始めると、なかなか下がりません。
国債を買い控える投資家が増えれば、政府はさらに金利を上げて買ってもらうしかありません。
この悪循環が始まれば、金利上昇は今より加速する可能性すらあるのです。
ペアローンの構造的リスク
ペアローンの最大の問題は、夫婦双方の収入が「永続的に安定している」ことを前提としている点です。
しかし、人生にはさまざまな変化が訪れます。
最も深刻なのは、妻の妊娠・出産による収入減少です。
産休・育休中は収入が大幅に減少し、復職後も時短勤務などで以前の収入水準に戻らないケースが一般的です。
それにもかかわらず、住宅ローンの返済額は変わりません。
夫の収入だけでローンを返済し、生活費も賄わなければならない状況に陥れば、家計は一気に逼迫します。
特に、変動金利が上昇局面に入れば、この負担はさらに重くのしかかります。
マイホームを購入検討している楽しい時期には考えもしないでしょうが、実際、現代は3組に1組が離婚する時代です。
そして、離婚原因の最上位に挙げられるのが「金銭問題」なのです。
ペアローンで購入した自宅は、離婚時に大きな障害となります。
どちらかが住み続けるにしても、残債の負担をどう分けるか。
売却するにしても、ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」状態であれば、売るに売れません。
金利上昇局面では、このオーバーローン状態に陥るリスクがさらに高まります。
物件価格が下がる一方で、返済総額は金利上昇により増大するからです。
営業トークに惑わされない冷静な判断を
不動産業者の営業マンは、当然ながら物件を売ることが仕事です。
「人気物件で早いもの勝ち」というプレッシャーをかけ、冷静な判断をさせないようにするのは、よくある営業手法です。
確かに、ペアローンを使えば年収の8倍近い金額を借りることも可能でしょう。
しかし、それは金融機関が「貸せる」と判断しただけであって、「あなたが無理なく返せる」という保証では全くありません。
特に変動金利の場合、今は低くても将来の金利上昇リスクを完全に借り手が負うことになります。
国債金利が17年ぶりの高水準となった今、このリスクは決して小さくありません。
「今の低金利のうちに」という営業トークも要注意です。
今回の国債金利引き上げが示すように、「低金利時代」はすでに終わりを迎えつつあるのです。
本当に必要な住宅購入の判断基準
では、どのように考えればよいのでしょうか。
まず大前提として、住宅ローンは「夫単独の収入で返済可能な金額」に抑えるべきです。
妻の収入は、教育費や老後資金の貯蓄に回すくらいの余裕を持った資金計画が理想的です。
もし夫単独の収入では希望する物件が買えないなら、それは「身の丈に合わない物件」ということです。
選択肢は主に3つあります。
新築をあきらめて中古物件を検討する、購入エリアを見直す、あるいは賃貸生活を続けながら頭金を増やす期間を設ける、などです。
過去ログでもお伝えしたとおり、宇都宮市内では中古市場が今後の主戦場となる時代が確実に到来します。
→過去ログ:【全国で公共工事のストップが続出!都心マンションバブルでも供給減!】つくれない時代が宇都宮市の不動産に与える影響とは?
新築供給が極めて限定的になる中、質の良い中古物件への需要は確実に高まります。
「新築でなければ」というこだわりを捨てれば、より現実的な予算で良い住まいを手に入れられる可能性があります。
また、金利タイプの選択も慎重に行うべきです。
変動金利は確かに当初の金利は低いですが、今回の国債金利上昇が示すように、金利上昇リスクは確実に高まっています。
多少金利が高くても、固定金利で将来の返済額を確定させる選択肢も真剣に検討すべきでしょう。
まとめ:冷静な判断が人生を守る
国債金利が17年ぶりに1.7%へ引き上げられた今、変動金利のリスクは確実に高まっています。
このペースが続けば、2年後には2%を超える可能性も決して否定できません。
にもかかわらず、宇都宮市内では夫婦ペアローンで年収の8倍近いリスクの高い、住宅ローンを組む方が増えているという現実があります。
不動産業者の「人気物件で早いもの勝ち」「年収を合わせれば借りられます」という営業トークに惑わされず、一度冷静に立ち止まって考えてみてください。
借りられる額と返せる額は全く別の問題です。
妻の妊娠・出産による収入減、金利上昇による返済増加、3組に1組が離婚する現代において、無理な住宅ローンは人生設計そのものを狂わせるリスクがあります。
20年以上この業界で仕事をしてきて、無理な住宅ローンで人生が狂ってしまったケースを数多く見てきました。
不動産売買のミスをリカバリーするのそれだけ大変なのです。
特に夫婦ペアローンで上限いっぱいまで借りた方々が、数年後にどのような状況に陥るか。
30年あまりの長期間であるため、夫婦関係含め、複数のリスクが重なったとき、本当に返済を続けられるのでしょうか。
今こそ、「ピカピカのマイホーム所有こそ幸せ」という固定観念から自由になり、自分たちの収入と将来設計に本当に合った住まいを選択する勇気が必要です。
中古物件の検討、購入エリアの見直し、固定金利の選択など、現実的な選択肢は必ずあります。
金利上昇という新しい時代の入り口に立った今、冷静な判断こそが、あなたの大切な人生と家族を守る最良の選択となるはずです。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
★荻原功太朗の業務について★






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