【栃木県庁前の一等地、再開発に待ち受ける厳しい現実!】一等地でも再開発困難な時代にどう活用するのか!?

2025年11月17日月曜日

宇都宮市でマイホームを 宇都宮市のLRTについて 宇都宮市の賃貸ネタ 宇都宮市の不動産と街の動向 不動産投資・大家さんネタ 不動産売却

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 11月14日、栃木県は県庁前に所有する「栃木会館跡地」の再開発を担う民間事業者の公募を発表しました。

記事リンク→栃木県、県庁前「栃木会館跡地」の再開発担う民間事業者を公募へ(日本経済新聞)

広さ約6150平方メートルという、まさに県庁の目の前の一等地です。

県は商業・業務・医療機能を持つ複合施設として整備する方針を示しており、2026年2月にデベロッパーやゼネコン向けに募集要項を公表する予定とのことです。

しかし、このニュースを見て私が真っ先に思ったのは「一体どこの企業が手を上げるのだろうか」という疑問でした。

一等地であっても再開発が困難になっている今の時代、この計画は本当に実現できるのでしょうか。

詳細に迫ってみます。


民間企業は採算を最優先する

民間企業にとって、再開発案件は投資です。

投資である以上、確実にリターンが見込めなければ、誰も手を出しません。

まして、今は建設費が高騰し続けている時代です。

高騰し続けるコストと比較して、上がらない実質賃金。

その影響で、再開発の採算そのものが限界を迎え始めています。

政令指定都市として東北最大の人口(110万人)をかかえる、仙台市の駅前に直結する一等地でさえ、再開発計画が断念されました。

記事リンク→仙台駅西口のさくら野百貨店跡、PPIHが再開発断念(日本経済新聞)

駅前のペデストリアンデッキと連結する一等地でさえ、「物価高で投資コストの回収に見込みが立たない」という理由で撤退したのです。

栃木県庁前という立地は、果たして仙台駅西口よりも魅力的な投資先と言えるでしょうか。


民間企業にとって採算が合うのはマンションだけ?

冷静に考えれば、民間企業にとって採算が合う選択肢は、マンション開発くらいしかないように思えます。

商業施設は、郊外のショッピングモールとの競争に勝てる見込みが薄いのは誰の目から見ても明らかでしょう。

業務施設(オフィスビル)は、周辺の空きテナント状況を見ても、それほど大きな不足感も感じ取れず、テレワーク等の普及でオフィス需要そのものも減少傾向です。

医療施設は、初期投資が大きく、運営のノウハウも必要で、純粋な不動産開発としては難しい。

まして、医療業界全体もインフレにより、危機的な状況に立たされているような状況です。

過去ログ→【国立大病院の赤字が年間400億円超えで、破綻状態に!?】医療へのアクセス困難が宇都宮市の不動産にもたらす影響とは!?

一方、マンションであれば、県庁職員や周辺で働く人々、郊外から都心へ移動する裕福な高齢者層への需要が見込めます。

しかし、すでにマンション開発も建築コスト高騰で限界を迎え始め、完成在庫が急増し始めています。

マンション開発にも期待できないとなると、県が期待する「複合施設」とはほど遠い結果になってしまう可能性が高いです。


現実に需要があるのは公営駐車場だけ!?

栃木県庁前という立地で、本当に需要があるのは何でしょうか。

正直に言えば、公営の駐車場が最も現実的な活用方法だと思われます。

宇都宮市は、中心市街地に数多くの駐車場があり、中心市街地としての魅力を低下させる要因の一つになっています。

県が停めやすく、格安の駐車場を整備することで、周辺の空き地の再開発も促せます。

中心市街地の駐車場は、現在も増加傾向にあり、特に、中心部では一宅地程度の規模の小さい駐車場の割合が高まっています。

県庁への来訪者、周辺のオフィスワーカー、そして観光客にとって、駐車場は確実に需要がある施設です。

しかし、ここに大きな矛盾があります。

駐車場では、開発事業として十分な収益を上げることができません。

土地を取得し、建物を建て、維持管理を行いながら、駐車場収入だけで採算を取ることは極めて困難です。

県としても、貴重な一等地を単なる駐車場として活用することは、あまりにも「もったいない」選択に見えるでしょう。


まちづくりのコンセプトとの矛盾

さらに深刻な問題があります。

現代のまちづくりでは、都心部にできるだけマイカーを入れないことがコンセプトとされています。

公共交通を充実させ、歩いて楽しめる街を作る。

これが世界的な潮流です。

しかし、地方都市の現実は全く異なります。

宇都宮市を見てもわかるように、LRT沿線を除けば、ほとんどの市民がマイカーに依存して生活しています。

郊外のショッピングモールは、まさに人工的に作られた一つの商店街であり、広大な無料駐車場を完備しています。

中心市街地は、この交通アクセスの利便性でまったく太刀打ちできません。

「マイカーを排除したい」という理想と、「マイカーがなければ成り立たない」という現実。

この矛盾が、地方都市の中心市街地が抱える最大の問題なのであり、だからこそLRTの早期整備が必要だったのです。


計画発表のタイミングが悪すぎる

今回の栃木県の再開発計画発表には、さらに大きな問題があります。

それは、発表のタイミングです。

宇都宮市のLRT西側延伸が、2030年開業目標から2036年へと大幅に延期されたのは、つい先月のことです。

→過去ログ:【宇都宮市のLRT西側延伸、2036年に開業延期で事実上の計画凍結か!?】知事も弱気の発言で先行きの見通しはどうなる!?

当初の公約から6年もの遅れ、そして現時点から見れば10年以上も先の話になってしまいました。

栃木県庁は宇都宮市の中心部に位置しており、LRT西側延伸の恩恵を最も受けるはずのエリアです。

しかし、その延伸計画が事実上凍結状態になったタイミングで、民間事業者に再開発を呼びかける。

果たして、手を上げる企業がどれだけあるのでしょうか。

LRT延伸が実現すれば、中心市街地や駅周辺の地価上昇や人の流れの変化が期待できます。

しかし、その延伸が10年以上先、しかも実現するかどうかすら不透明な状況では、投資家サイドは厳しい判断を下すことが予想されます。


全国で広がる「建てたくても建てられない」異常事態

今、日本全国で公共施設や再開発案件の入札不調が続出しています。

静岡県で行われた調査では、主要建設会社6社のうち5社が「建設費が当初の見積もりから大幅に上振れしている」と回答しました。

記事リンク→静岡の建設大手、5社が建設費「上振れ」 行政案件も見直し相次ぐ(日本経済新聞)

どのくらい上振れしているかというと、当初想定から「1.1〜1.5倍」つまり最大で5割増し、別の案件では「3〜4割増」に達しているとのことです。

例えば、当初5億円で建てられると思っていた建物が、いざ着工しようとすると7億円から7.5億円になってしまう。こうした事態が当たり前になっているのです。

この影響で、静岡県が計画していた県立中央図書館の移転新設は、事実上白紙に戻りました。

建設費が予算を大幅に超えてしまったうえ、民間企業が入札に応じず、さらに国からの補助金も期待していたほど得られなかったためです。

静岡市でも、駅前の再開発ビルの完成が当初予定より2年遅れることが明らかになっています。

これは静岡だけの問題ではありません。

全国各地で、予算を用意しても建設会社が手を上げない、工事を受注すればするほど赤字が膨らんで会社が倒産してしまうという異常事態が起きているのです。

→過去ログ:【全国で公共工事のストップが続出、都心マンションバブルでも供給減!】「つくれない時代」が宇都宮市の不動産に与える影響とは?

このため建設会社は今、生き残りをかけて「選別受注」を進めています。

利益が見込める案件だけを厳選し、採算の取れない工事は最初から手を出さない。

これが当たり前になっているのです。

スーパーゼネコン5社の2024年度平均受注高は1兆6,412億円に達しており、東京都心部では複数の巨大再開発案件が同時進行しています。

建設会社は、こうした高収益案件を優先しています。

栃木県庁前の再開発が、果たしてこれらの都心部案件よりも魅力的な条件を提示できるでしょうか。


一等地でも再開発が困難な時代

今回公表された栃木県庁前の再開発計画は、現代の地方都市が直面している構造的問題を象徴しています。

どれだけ一等地であっても、採算が合わなければ民間企業は手を出さない。

建設費が高騰し続ける中で、予算内で計画を実現することが極めて困難になり、LRTのような交通インフラの整備さえ、延期や縮小を余儀なくされているのが現状です。

興味深いことに、栃木県は静岡県と同様に、県立図書館と美術館の移設再開発も計画しています。

しかし、静岡県立中央図書館の移転新設計画が建設費高騰により事実上白紙に戻った事例を見れば、同じ道をたどる可能性は否定できません。

人口減少が進む中で税収は伸び悩み、一方で社会保障費は増大し続けています。

県財政が逼迫する中で、大型の公共施設を建設する余力が本当にあるのでしょうか。

こうした状況で、県庁前という立地だけで民間投資を呼び込めるほど、今の時代は甘くないのが厳しい現実です。

2026年2月に募集要項が公表され、応募状況がどうなるのか注目されますが、正直なところ、厳しい結果になるのではないかと予想しています。

もし応募が集まらなかった場合、計画を大幅に縮小するのか、それとも公共施設として県が直接整備するのか。

いずれにしても、現状の経済情勢、建築コストの上昇、上がらない実質賃金といった問題を加味すると、当初の構想通りに再開発が進む可能性は低いでしょう。


まとめ:駅西エリア相場のシグナルに!?

栃木県庁前の再開発計画は、一等地であっても民間投資を呼び込むことが困難な時代を象徴しています。

LRT西側延伸の2036年への延期、建設費の高騰、財政の逼迫という三重苦の中で、この計画がどのような形で実現するのか、あるいは実現できないのか。

2026年2月に募集要項が公表される予定ですが、応募状況次第では、宇都宮駅西エリアの不動産相場に大きな影響を与える可能性があります。

仙台駅西口駅前の一等地でさえ、「採算が合わない」として再開発が断念された現実。

静岡県で相次ぐ公共施設計画の白紙化。

これらと同じ構造的問題が、県の再開発や宇都宮駅西口の再開発にも影を落としているのは間違いありません。

もし栃木県庁前の再開発が難航すれば、それは駅西エリア全体への投資意欲の減退につながります。

民間企業が「採算が合わない」と判断するエリアでは、既存物件の資産価値にも長期的な下押し圧力がかかることは避けられません。

一方で、既にLRTが開業している駅東エリアでは、地価上昇と開発が継続しています。

この東西格差は、今回の県庁前再開発の行方次第で、さらに鮮明になる可能性が高いでしょう。

並行して進む県立図書館・美術館の再開発も含め、県庁前の再開発計画の動向は、駅西エリアの不動産相場の長期的なトレンドを見ていくうえでも、注意深く見守る必要があります。

不動産を所有されている方、これから購入を検討されている方にとって、期待や願望ではなく、冷静な現実認識に基づいた判断が、今ほど重要な時代はありません。


今回の内容が、皆様のお役に立てば幸いです🙌


本記事は2025年11月16日時点の情報に基づいています。

 

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★荻原功太朗の業務について★

株式会社サンプラン所属。資産家の皆様を対象とした、「増やすよりも、守る」を目的とした、宇都宮市内での不動産の売買・運営・管理・資産保全をサポート。他にも2つの法人の役員を兼務。不動産売買のご相談についても、ご指名頂ければ、できるかぎり対応させて頂きます。

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