多くの皆さまにとって、景気実感がないなか、株価や金などの資産だけが急騰していると感じているのではないでしょうか。
初の女性首相である高市総理誕生後、株価上昇だけでなく、円安も進行しています。
→日経平均株価終値5万512円、初の5万円超え 高市首相の経済政策期待(日本経済新聞)
円安が進めば、物価全体も更に上昇してしまうので、資産格差が一層広がることは確実です。
一見すると数字の上では日本経済は好調に見えますが、不動産市場では全く異なる現実が起きています。
東京都心部の高級マンションでさえ、転売住戸が増加し、価格改定が相次ぎ、在庫過多の状況が見え始めています。
株価は上がっているのに、なぜ不動産だけが売れなくなっているのでしょうか。
そして、この変化は宇都宮市の不動産市場にどのような影響を与えるのでしょうか。
今回は相場の方向性が読みにくい中での、「売り時」について考察します。
都心マンション市場に漂う不穏な空気
不動産投資家の間では、東京都心部のマンション市場に対する懸念が高まっています。
高級物件の大幅な価格改定、転売住戸の急増による在庫過多、一等地物件での継続的な価格下落。
これらは単発的な問題ではなく、都心マンション市場全体に構造的な変化が起きている証拠です。
「買った瞬間に含み損がある」「転売住戸が多すぎて在庫過多」「価格の切り下がりが止まらない」といった声が続出しています。
これまで右肩上がりだった都心マンション市場が、明らかに息切れを起こしているのです。
興味深いのは、日経平均株価は最高値を更新し、円安が進行しているにも関わらず、不動産市場だけが取り残されているという点です。
株式市場と不動産市場の温度差は、近年まれに見るほど拡大しています。
J-REITの10年低迷が示す不動産市場の構造問題
株価と不動産相場の乖離を示す、極めて象徴的なデータがあります。
過去10年間(2015年〜2025年)の日経平均株価、金価格、そしてJ-REIT指数を比較すると、驚くべき事実が浮かび上がります。
日経平均株価は約2倍に上昇し、金価格も大きく上昇しているのに対し、J-REIT指数はほぼ横ばいで推移しているのです。
2015年を起点として見ると、日経平均株価は+180%程度まで上昇し、金価格も+270%超と大幅に上昇しています。
ところが、J-REIT指数は10年間でほぼ0%の値動きにとどまっています。
ここで重要な点があります。
J-REITは年間4〜5%程度の分配金を投資家に支払っているため、10年間保有していれば累積で40〜50%程度のインカムゲイン(分配金収入)が得られます。
つまり、価格上昇(キャピタルゲイン)は0%でも、分配金を含めたトータルリターンでは+40〜50%程度のリターンがあったということです。
しかし、それでも問題は深刻です。
日経平均株価も同様に配当を出しており、配当利回りは年2%程度です。
10年間で累積20%程度の配当収入があることを考えると、株式のトータルリターンは+180%(価格上昇)+20%(配当)=約+200%となります。
一方、J-REITのトータルリターンは0%(価格上昇)+40〜50%(分配金)=+40〜50%程度です。
つまり、分配金を考慮しても、不動産のリターンは株式の4分の1程度にとどまっているのです。
さらに、金価格は配当も分配金も生み出さない資産ですが、それでも+270%という圧倒的なリターンを記録しています。
過去ログ→【インフレで現金をもつことがリスクに?現物ゴールド最高値を更新し急騰中!】宇都宮市内でも金融商品化した不動産が流通し始めた!
この事実が意味することは何でしょうか。
それは、不動産投資市場への資金流入が、株式市場や金市場と比較して圧倒的に少なかったということです。
株式市場には海外投資家や富裕層のマネーが継続的に流入し、企業業績の向上とともに株価は上昇してきました。
金も、インフレヘッジ資産として世界中の投資家から資金が流入しました。
しかし、不動産投資市場には同じようなマネーの流入が起きていないのです。
この背景にあるのは、実質賃金の長期的な低下です。
都心に限らず全国的に実需ではすでに新築は「高嶺の花」となり、中古マーケットが活況し始めています。
過去ログ→【宇都宮市で中古物件の需要が急増中!】実質賃金マイナス&新築高騰で全国で中古マーケットが活況に!
株式市場は海外投資家や富裕層の巨大マネーで動いていますが、不動産市場は都心マンションの一部を除いて、大半の物件は、実需層の購買力に支えられています。
その実需層の購買力が長期的に低下し続けてきたため、いくら金融市場が好調でも、不動産価格を支えきれなくなっているのです。
宇都宮市内でも、この構造的な変化の兆候が徐々に現れ始めています。
宇都宮市内でも始まった在庫増加・販売期間長期化の兆し
宇都宮市内の不動産市場を見ていると、都心ほど顕著ではないものの、確実に変化の兆しが現れています。
新築物件の販売期間が明らかに長期化しており、以前なら完成前に完売していた物件が、完成後も売れ残るケースが増えています。
複数のデベロッパーとのヒアリングからは、想定していた価格では買い手がつかず、値下げに踏み切らざるを得ない物件が目立ってきています。
実際に、宇都宮市内でも今、売れ残りの大セールをやっている新築物件が複数存在しています。
興味深いことに、新築が苦戦している一方で、中古物件市場は比較的堅調です。
建築費高騰前の築浅物件は、今の新築と比べて建築コストが大幅に安い時期に完成しており、コスパが良好です。
つまり、品質は新築とほとんど変わらないのに、価格は相対的に割安という状況が生まれているのです。
実質賃金が低下し続ける中、無理な新築購入を避けてコストパフォーマンスの良い中古物件を選ぶという、賢明な選択をする方が確実に増えています。
しかし、ここで重要なのは、新築も良質な中古物件も供給自体が絞られているという現実です。
建設会社の採算限界により、新築の供給は激減していますが、良質な中古物件の売り出しも同時に減少しています。
その結果、市場に出てくる物件は新築・中古を問わず、購入者の予算上限、つまり「これ以上高くすると誰も買えない」という価格帯に集約されつつあります。
売主は少しでも高く売りたい、しかし買主の予算にも限界がある。
この綱引きの結果、実質賃金の低下により縮小し続ける購買力の上限ギリギリのところで、新築も中古も価格が収束しようとしているのです。
特に注目すべきは、宇都宮でもJR宇都宮駅周辺でキャピタルゲイン狙いの投資物件が増えてきたことです。
宇都宮市内でも、利回りがほぼない、値上がり益だけを期待した投資物件が市場に出始めています。
確かに、東京都心部の一部の高級マンションは過去10年で大幅な価格上昇を記録しました。
しかし、それは極めて限定的なエリアの、極めて限定的な物件での話です。
過去10年間のJ-REIT指数がほぼ横ばいだったという事実は、都心の一部を除く大多数の不動産では価格上昇(キャピタルゲイン)が期待できなかったことを示しています。
そして、宇都宮市の多くの不動産は、J-REITと同等か、それ以下のパフォーマンスしか残せていないのが現実です。
つまり、不動産投資全体で見れば、値上がり益を得られたのはごく一部の勝ち組物件だけだったのです。
宇都宮市のような地方都市で、都心と同じような値上がりを期待するのは現実的ではありません。
購買力の上限で価格が頭打ちになる中、値上がり益が見込めなくなれば、価格は収益還元価格に戻ってしまうため、利回りの低い投資物件は極めてリスクが高いといえます。
「今なら売れる」が「来年は売れない」になる可能性
不動産売却で最も重要なのは「タイミング」です。
都心マンション市場では、転売住戸の急増、価格改定の続出、販売期間の長期化という調整のサインが出ています。
そして何より、過去10年間、日経平均株価が+200%(価格上昇+配当)、金価格が+270%のリターンを記録する中で、J-REITは+40〜50%(価格横ばい+分配金)にとどまり、宇都宮市のごく一部の優良立地の不動産のみがJ-REITと同水準、その他ほとんど市内の不動産はインフレのなかほぼ横ばいのパフォーマンスしか残せなかったという事実はしっかり頭に入れるべきです。
これは、都心の特別なエリアを除く大多数の不動産市場への投資需要が、他の資産と比較して圧倒的に低迷していることを示す明確なサインです。
宇都宮市内でも、この変化の波は確実に押し寄せています。
今はまだ、好立地の物件なら適正価格で売却できる状況です。
しかし、都心で起きている調整が本格化し、地方都市にも波及してくれば、「売りたい時に売れない」「希望価格では売れない」という事態が現実になる可能性があります。
特に、以下のような物件を所有されている方は、早めの行動を検討すべきでしょう。
将来的な売却を考えている投資物件、転勤などで賃貸に出している元マイホーム、相続した実家で活用予定のない不動産。
過去ログ→【宇都宮市の実家が空き家になったら売却すべき?】相続まで持つのは正解か?地方都市の厳しい現実とは!
これらの物件は、市場環境が悪化すれば真っ先に売却が困難になります。
実需で使っていない不動産は確実にインフレに負けている
ここで重要なのは、実需として自分で住んでいない不動産の厳しい現実です。
投資物件として保有している、転勤で賃貸に出している元マイホーム、相続した実家を空き家のまま放置している。
これらの物件は、過去10年間でインフレに大きく負け続けてきました。
具体的に考えてみましょう。
10年前に3000万円で購入した投資物件が、現在も3000万円程度の評価だとします。
一見すると価格が維持できているように見えますが、この10年間で金価格は+270%も上昇しました。
つまり、もし10年前に3000万円を金に投資していれば、現在は約1億円になっていたということです。
不動産に投資した結果、7000万円もの機会損失を被ったことになります。
株式に投資していても、配当込みで+200%ですから、3000万円が9000万円になっていた計算です。
不動産を保有したことで、6000万円の機会損失です。
さらに、この10年間で物価は確実に上昇しています。
同じ3000万円でも、10年前と今では購買力が大きく異なります。
実質的には、資産価値は確実に目減りしているのです。
加えて、不動産には固定資産税、修繕費、管理費などのランニングコストがかかり続けます。
賃料収入があったとしても、これらのコストを差し引けば、手元に残る実質リターンはさらに低くなります。
空き家のまま放置していれば、賃料収入もなく、コストだけが発生し続けるという最悪の状況です。
そして、保有し続けることで、さらにインフレに負け続けるという悪循環に陥るのです。
まとめ:冷静な判断が大切な財産を守る
株価が最高値を更新する中、都心の一部を除く大多数の不動産市場がインフレから取り残されているという厳しい現実があります。
過去10年間で、日経平均株価+200%、金価格+270%に対し、J-REITは+40〜50%、そして宇都宮市のごく一部の優良立地がJ-REIT水準、その他ほとんどの市内不動産はほぼ横ばいという結果が、都心の特別なエリアを除く不動産市場への投資需要の低迷を物語っています。
特に、実需で使っていない不動産は、確実にインフレに負け続けてきました。
投資物件、賃貸中の元マイホーム、相続した空き家。
これらの物件を保有し続けることは、金や株式への投資機会を失い続けることを意味します。
都心マンション市場では、転売住戸の急増、価格改定の続出、在庫過多といった明確な調整のサインが出ており、この変化は確実に宇都宮市内にも波及し始めるでしょう。
短期的には、都心での調整が本格化すれば、地方都市の不動産市場にも影響が及び、「今なら売れる」物件が「来年は売れない」という事態も十分に考えられます。
もちろん、長期的には実質金利がマイナスのままであれば、ごく一部の優良立地物件はインフレヘッジとしての最低限の機能を果たせる可能性もあります。
しかし、それでも株式や金と比較すれば大きく劣後したリターンしか期待できないことは認識しておくべきでしょう。
大切なのは、ご自身の状況と物件の特性を冷静に見極めることです。
20年以上この業界で仕事をしてきて確信していることは、不動産の問題は「先延ばしすればするほど選択肢が減る」ということです。
都心マンション市場の変化は、地方都市にとって他人事ではありません。
今こそ、冷静に自分の不動産を見つめ直し、必要であれば行動を起こす時期なのかもしれません。
今回の内容が、皆さまの大切な財産を守るための判断にお役に立てば幸いです🙌
本記事は2025年10月28日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★



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