先日、衝撃的なニュースが相次いで報じられました。
全国42の国立大学病院の2025年度の赤字額が、過去最大の400億円を超える見込みとなったというのです!
国立大学病院長会議の会長は「過去最大の危機を迎えていると言っても過言ではない」と述べ、医療現場の深刻な状況を訴えました。
さらに深刻なのは、日本の主要な病院団体による調査結果です。
全国の病院の医業赤字割合が73.8%、経常赤字割合が63.6%に達し、約7割の病院が赤字経営に陥っているという驚愕の実態が明らかになりました。
つまり、全国の病院の約7割が赤字に陥り、地域医療が音を立てて崩壊し始めているのです。
→国立大病院の赤字、400億円超に拡大の可能性 法人化後で最大(日本経済新聞)その結果、宇都宮市のような医療アクセスの良い都市部への移住需要が確実に高まり、クリニックが充実している市内中心部の不動産相場は今後も堅調に推移すると予想されます。
一方で、郊外部ではかかりつけクリニックの閉鎖が加速し、不動産価値の二極化がさらに進みそうです。
今回は、この深刻な状況が不動産相場に与える影響を深堀りしてみます。
病院経営悪化の実態:売上は伸びても利益は減る矛盾
日本の主要な病院団体による調査結果を詳しく見ると、極めて深刻な状況が浮かび上がってきます。
この状況をわかりやすく例えるなら、こういうことです。
あるラーメン屋さんが、去年より客が増えて売上が伸びました。
しかし、材料費や光熱費、アルバイトの時給が大幅に上がってしまい、結局は去年より赤字が増えてしまった、というような状態なのです。
実際の数字で見ると、2023年度と2024年度を比較して、病院の収益は2.8%増加しました。しかし、支出はそれを上回る3.4%も増加してしまったのです。
その結果、もともと赤字だった病院経営は、さらに赤字幅が拡大してしまいました。
これが「増収減益」という最悪の経営状態です。
さらに深刻なのは、赤字に陥っている病院の割合が年々増え続けていることです。
2023年度には69.9%だった赤字病院の割合が、24年度には73.8%に増加し、経常赤字病院の割合も51.1%から63.6%へと大幅に増加していることです。
つまり、全国のほとんどの病院が赤字経営に陥っているという衝撃的な現実なのです。
物価と人件費の高騰が病院経営を直撃
では、なぜ売上が増えているにもかかわらず、赤字が拡大しているのでしょうか。
答えは明快です。
すべての費用が軒並み値上がりしているからです。
医薬品や診療材料などの材料費は3.5%増加しました。
これは、ラーメン屋さんで言えば、麺や豚肉、野菜の仕入れ値が上がったようなものです。
スタッフの給与も3.1%増加しました。人手不足の中で、看護師や医療スタッフの待遇を改善しなければ人が集まらないのです。
特に深刻なのが光熱費の高騰です。
電気料金は4.7%増、ガス料金はなんと12.7%増という驚異的な上昇率となっています。
病院は24時間365日稼働する施設ですから、この光熱費の影響は計り知れません。
報道によると、国立大学病院では機器の更新費用を27%も削減せざるを得ない状況になっています。
その結果、医療機器の更新や建物の建替えや修繕ができないような危機的状況で、すでに「高度医療に支障が少しずつ出てきている」と現場の声が報道されています。
医療崩壊は静かに、そして確実に進行している
東京科学大学病院の実態が報道で紹介されていました。
入院患者がいる場所以外では、スタッフが残っていてもエアコンを停止し、歯科衛生保健部部長は「夏は保冷剤をポケットに入れて働いた」と証言しています。
25年以上使用している古い歯科用ユニット(イス)を撤去しても、新しいものが買えない状態が続いています。
築40年ほどの建物は至る所が損傷したまま放置され、血管の撮影などができる約2億円で導入した機械も、2014年から更新できず耐用年数を超えて使い続けているような状況です。
多くの病院は「もう手立てはない。我々はやれることは全てやりつくした」と悲痛な声をあげています。
ここで重要な疑問が浮かびます。なぜ国立大学病院のような公的機関が、これほどまでの赤字経営に陥ってしまったのでしょうか。
最大の理由は、医療費(診療報酬)が物価上昇や人件費の高騰に全く追いついていないことです。
つまり、光熱費を下げたり、新しい診療科を作ったり、手術の枠を増やしたりと、病院側ができる経営努力は全てやり尽くした上での、この赤字額なのです。
保険医療機関の収益の大部分は公定価格である診療報酬です。
一般企業のように「物価や人件費が高騰したので、サービス価格を引き上げよう」と個々の医療機関が行動することはできません。
この構造的な問題が、病院経営を確実に蝕んでいるのです。
国立だからこそ、まだ破綻していないという皮肉
ここで考えなければならないのは、なぜこれほどの巨額赤字を出しながら、国立大学病院は運営を続けられているのかということです。
答えは簡単です。
国立大学法人であるため、最終的には国の財政支援によって成り立っているからです。
しかし、これは逆に言えば、民間病院であれば既に倒産している水準の赤字を垂れ流し続けているということを意味します。
実際、病院団体の調査によると、一般病院、療養・ケアミクス病院、精神病院、その他の病院など、すべての病院区分で経営が悪化しています。
大学病院や総合病院の経営危機以上に深刻なのは、実は私たちの日常生活に最も身近な、地域のクリニックや診療所が次々と閉鎖していることです。
全国の病院の約7割が赤字経営という状況は、大規模な総合病院だけの話ではありません。
むしろ、より深刻な影響を受けているのは、地域で日常的な診療を担ってきた小規模な医療機関なのです。
開業医の高齢化が進む中で、後継者が見つからずに廃業するケースが急増しています。
医師の平均年齢は年々上昇しており、60歳を超える開業医も珍しくありません。
しかし、若い医師にとって、赤字が常態化している地方での開業は魅力的な選択肢ではなくなっているのです。
建物の老朽化、医療機器の更新費用、人件費の高騰、そして診療報酬の伸び悩み。
これらの要因が重なり、地域のクリニックは次々と閉鎖に追い込まれています。
特に深刻なのは、高齢者が多く住む郊外の住宅地です。
これまで徒歩圏内で通えていたかかりつけのクリニックが閉鎖され、最寄りの医療機関まで車で20分、30分かかるようになってしまうケースが全国で報告されています。
医療の統廃合は加速し、都市部への集約が進む
このような状況下で、今後何が起きるのでしょうか。
まず確実なのは、医療機関の統廃合が加速することです。
赤字経営が続く中で、すべての医療機関を維持し続けることは不可能です。
特に地方や郊外の小規模クリニックは、採算性の観点から真っ先に閉鎖の対象となるでしょう。
病院団体の調査結果が示すように、2024年6月と2025年6月を比較しても状況は悪化しており、「2025年度にはさらに厳しい状況になる」と推測されています。
つまり、医療崩壊は今この瞬間も進行中であり、今後さらに加速するということです。
その結果、医療へのアクセスは都市部に集中することになります。
高度医療はもちろん、日常的な風邪や生活習慣病の診療でさえ、都市部でなければ受けられない状況が生まれつつあるのです。
すでに地方では、最寄りの医療機関まで車で1時間以上かかるというエリアが増えています。
高齢化が進む中で、自分で運転できない高齢者にとって、医療へのアクセスは生死に関わる深刻な問題となっているのです。
宇都宮市の不動産市場への影響
この医療崩壊の進行は、宇都宮市の不動産市場にも大きな影響を与えることになります。
宇都宮市は栃木県の県庁所在地であり、人口が集中していることから県内の医療の中核を担い、高度医療を提供できる病院が市内に集積しています。
また、隣接する壬生町には獨協医大、下野市には自治医大があり、宇都宮市民にとっても重要な医療拠点となっています。
しかし、重要なのは大学病院や総合病院へのアクセスだけではありません。
むしろ、日常生活でより切実な問題となるのは、徒歩圏内や自転車で通える範囲に、かかりつけのクリニックがあるかどうかなのです。
全国で病院の約7割が赤字経営に陥り、特に地方や郊外での小規模クリニックの閉鎖が加速する中で、宇都宮市のように医療施設が充実した都市部への移住需要は確実に高まるでしょう。
特に高齢者にとって、医療へのアクセスは住まい選びの最重要事項です。
持病を抱えた高齢者や、定期的な通院が必要な方々にとって、かかりつけ医まで車で30分、1時間かかるような場所での生活は、もはや現実的な選択ではなくなりつつあります。
実際に、私が不動産の現場で接するお客様の中でも、「病院が近い」ことを第一条件に挙げる方が確実に増えています。
興味深いのは、多くの方が求めているのは「大学病院の近く」ではなく、「クリニックが徒歩圏内にある」立地だということです。
日常的な風邪や生活習慣病の診療、定期的な健康チェックなど、普段使いできる医療機関へのアクセスこそが、高齢者の生活にとって最も重要なのです。
宇都宮市内でも、JR宇都宮駅周辺や大通り沿いなど、複数のクリニックが徒歩圏内にある地域への需要は、今後さらに高まることが予想されます。
医療アクセスが不動産価値を決める新時代
これまでの不動産価値は、駅からの距離、商業施設へのアクセス、学区の良さなどで決まっていました。
しかし、これからは「医療へのアクセス」も重要な価値要素の一つとなっていくでしょう。
宇都宮市でも高齢化率は年々上昇しており、高齢者人口が増加する一方で医療提供体制は、建築コストの高騰がとどめとなり縮小していくのは確実です。
この需給ギャップが、医療アクセスの良い立地の不動産価値を押し上げることになるのです。
過去ログでもお伝えしてきた通り、宇都宮市内では不動産の三極化が進行しています。
LRT沿線やJR宇都宮駅徒歩圏内などの「選ばれるエリア」と、それ以外のエリアの格差は、医療アクセスという観点からもさらに拡大することになるでしょう。
実際に、現場で接するお客様からは、このような声が増えています。
「子どもたちは都会に出てしまって、夫婦二人だけで郊外に住んでいるが、かかりつけの先生が高齢で廃業してしまい、病院通いが大変になってきた」「車の運転に不安を感じるようになり、バスやLRTでアクセスできて、徒歩圏内にクリニックがある場所に住みたい」
このような声は、今後さらに増えていくことが予想されます。
その結果、宇都宮市内の都心部、特に医療アクセスの良い地域への移住需要は確実に高まり、不動産相場を下支えすることになると予想されます。
まとめ:医療崩壊を直視した投資判断を
国立大学病院の赤字が過去最大の400億円を超え、全国の病院の70%以上がが赤字経営に陥っているという事実は、日本の医療提供体制が危機的状況にあることを示しています。
病院団体の調査が示すように、病院経営は年々悪化の一途をたどっており、2025年度にはさらに厳しい状況になると予測されています。
今の日本の厳しい財政事情では、診療報酬の大幅アップはほぼ不可能でしょう。
そなると、全国で医療機関の統廃合が加速し、特に地域のクリニックの閉鎖が相次ぐ中で、医療へのアクセスは都市部に集中していく。
この流れは、もはや避けられません。
その結果、宇都宮市のような医療施設が充実した都市部への移住需要は確実に高まり、特に医療アクセスの良い立地の不動産価値は堅調に推移することが予想されます。
不動産投資や住まい選びにおいて、この医療崩壊という構造問題を冷静に分析し、医療アクセスの良い立地を考慮することに注目している方はまだ少数です。
医療アクセスという観点からも、宇都宮市内の不動産市場の三極化はさらに進行し、「選ばれるエリア」と「見放されるエリア」の格差は拡大していく一方になりそうです。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2025年10月13日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★
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