先日、金融業界で衝撃的なニュースが報じられました!
地方銀行の融資のうち、なんと5割以上が地元以外への「越境融資」になってしまったというのです。
→地銀、地元以外への「越境融資」5割超え 新たな預金減少リスク(日本経済新聞)
つまり、皆さんが地元の銀行に預けたお金の半分以上が、東京や大阪などの大都市へ流れているということになります。
この現象は単なる金融業界の内部事情ではありません。
宇都宮市のような地方都市の不動産開発や経済活動に、極めて深刻な影響を与える構造的な変化が今、起こっているのです。
地銀が「地元にお金を貸せない」深刻な理由
なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。
記事によると、地方では融資案件そのものが減少しているのが最大の理由です。
つまり、「貸したくても貸せる相手がいない」という厳しい現実があります。
一方で、首都圏や都市部では投資案件が豊富にあり、地銀としても収益を確保するためには、どうしても都市部の案件に手を伸ばさざるを得ないのです。
これを分かりやすく例えるなら、地元の商店街にお客さんが来なくなったため、商店主が隣町の繁華街に出店するような状況と考えてください。商売をやめるわけにはいかないので、お客さんがいる場所に行くしかないのです。
しかし、この「越境融資」には地方都市にとって見過ごせない大きな問題があります。
預金が戻ってこない「お金の流出構造」
最も深刻な問題は、越境融資によって地域の預金が流出してしまうことです!
地元企業に融資する場合を考えてみてください。
例えば、宇都宮市の企業が設備投資のために1億円を借りたとします。
その企業は工事を地元の建設会社に発注し、建設会社は地元の資材業者に支払いをします。
結果的に、貸し出されたお金の多くは同じ銀行の口座に預金として戻ってくることになります。
そして、地銀は戻ってきたお金を再度融資し、事実上、銀行が新たなお金を生み出し続け、経済成長を支えます。
これが地域内での「お金の循環」です。
しかし、東京の企業に1億円を貸した場合はどうでしょうか。
その企業は全国各地に取引先を持っており、支払いもメガバンクや都市銀行に分散されてしまいます。
地方銀行に戻ってくる預金はほとんどありません。
つまり、地域で集めた預金が都市部に流出し、二度と戻ってこないという現象が起きているのです。
宇都宮市の不動産開発に与える深刻な影響
実はすでに、進行中の再開発プロジェクトの5割超が東京都内に集中しており、「越境融資」の影響が鮮明になっています。
→市街地再開発、5割超が東京都 地方は採算確保難しく岐路に立つ再開発(日本経済新聞)
この地銀の融資方針変化は、宇都宮市の不動産開発に以下のような深刻な影響を与えています。
地元案件への融資が厳しくなる傾向
地銀としては、収益性の高い都市部案件を優先せざるを得ません。その結果、地元の中小規模な不動産開発や個人の住宅購入への融資基準が、従来より厳しくなってしまう可能性があります。
実際に、これまで地域密着の金融機関として気軽に相談できた地方銀行が、都市部の大型案件に人材と資金を割かれることで、地元の小さな案件への対応が後回しになってしまうケースが全国で報告されています。
開発資金調達の困難化
宇都宮市内での新築マンション開発や商業施設建設において、地元銀行からの資金調達が困難になれば、プロジェクト自体が実現しにくくなります。
過去のブログでもお伝えしたとおり、建設コストの高騰により不動産開発の採算は既に厳しくなっています。
そこに融資面での制約が加われば、地方都市での再開発事業はますます困難になってしまいます。
地域経済の循環機能低下
最も深刻なのは、地域でお金が回らなくなることです。
地元で集めた預金が都市部に流出し続けることで、宇都宮市内での投資や消費を支える資金そのものが減少してしまいます。
これは、過去ログで話題にしたJR宇都宮駅東口のハイブランドホテル計画の頓挫や、LRT西側延伸の延期といった問題とも密接に関連しています。
地域に十分な資金循環がなければ、大型プロジェクトの実現はより困難になってしまうのです。
事例が示す深刻な地方の現実
記事では具体的な事例として山陰合同銀行が紹介されています。
この銀行の融資内訳を見ると、まさに地方銀行が直面している課題が明確に表れています。
島根・鳥取という地方部が地盤でありながら、関西圏への融資が約9600億円、東京への融資が約5600億円と、地元の2県(約7300億円)を大きく上回っているのです。
これを宇都宮市に当てはめて考えてみてください。
もし足利銀行や栃木銀行が、栃木県内よりも東京への融資の方が多くなってしまったら、栃木県の経済にどのような影響があるでしょうか。
地域の金融機関が地域経済を支えられなくなってしまうという、極めて深刻な構造変化が全国で進行しているのです。
今後の宇都宮市不動産市場への影響予測
この地銀の融資方針変化により、宇都宮市の不動産市場には以下のような変化が予想されます。
新築供給のさらなる減少
過去ログでお伝えしたとおり、建設コストの高騰により新築供給は既に減少傾向にあります。地銀の融資姿勢がより慎重になることで、この傾向はさらに加速するでしょう。
結果的に、中古物件の価値が相対的に上昇し、新築と中古の価格差が縮小する可能性があります。
エリアの二極化加速
融資を受けやすい確実性の高い立地(JR宇都宮駅徒歩5分圏内、LRT沿線など)と、そうでないエリアの格差がさらに拡大する可能性が高いです。
金融機関も限られたリスク許容度の中で判断するため、「確実に売れる立地」以外への融資はより慎重にならざるを得ません。
個人の住宅ローン審査厳格化
地銀としては収益性を重視せざるを得ないため、個人の住宅ローン審査もより厳格になる可能性も考えられます。
これまで比較的柔軟に対応してくれた地域金融機関の特色が薄れてしまうかもしれません。
地域経済を支える新たな仕組みが必要
この問題の根本的な解決は容易ではありません。
地方銀行も営利企業である以上、収益を確保しなければ存続できないからです。
しかし、地域経済の持続可能性を考えるなら、何らかの対策が必要でしょう。
例えば、地域内での投資案件を創出する取り組み、地元企業の競争力向上支援、魅力的な投資環境の整備などが考えられます。
また、不動産投資を検討する個人にとっては、この状況を逆手に取って、中古物件の価値向上や立地の良い物件への投資集中といった戦略も有効かもしれません。
まとめ:構造変化を受け入れた現実的な判断を
地方銀行の越境融資が5割を超えたという事実は、地方都市を取り巻く金融環境の根本的な変化を示しています。
この変化は一時的なものではなく、人口減少や地域経済の縮小という構造的な問題に起因するものです。
宇都宮市の不動産市場においても、この変化を前提とした投資判断や事業計画が必要になってくるでしょう。
地域で集めた預金が地域で活用されない時代において、より慎重で現実的な視点での不動産戦略が求められています。
過去ログでお伝えしてきた新築供給の困難化、大型プロジェクトの実現可能性低下、エリアの二極化といった傾向は、この金融面での構造変化によってさらに加速することになりそうです。
理想を追求するよりも、現実を受け入れて最善の選択をする時代が到来したと言えるのかもしれません。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
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