2025年12月3日、政府・与党が住宅ローン減税の延長にあたり「ハザードエリア」を適用除外にする方向で検討しているというニュースが報じられました。
記事リンク→住宅ローン減税 ハザードエリアを適用除外 政府与党が検討(Yahooニュース)
これまで立地に関する条件がなかった住宅ローン減税に、初めて「どこに建てるか」という制限が設けられようとしています!
この動きの背景には、「居住エリアの立地誘導」という国の明確な方針があります。
宇都宮市にも居住誘導区域外のエリアが多く存在する中、今回は新たな住宅ローン減税の適用除外エリアが、不動産マーケットへあたえる影響を深堀りしてみます。
目次
- 住宅ローン減税にハザードエリアの条件が加わる衝撃
- 住生活基本計画が示す「立地誘導」の本気度
- 宇都宮市の「住んでいい場所」は意外と狭い
- これから何が起きるのか?段階的に締め付けが強まる
- まとめ
住宅ローン減税にハザードエリアの条件が加わる衝撃
2026年度の税制改正をめぐり、政府・与党は「レッドゾーン」と呼ばれる災害危険区域や土砂災害特別警戒区域など、災害の危険性が極めて高い地域を住宅ローン減税の対象から外す方向で検討しています。
住宅ローン減税は、年末のローン残高の0.7%を最大13年間、所得税・住民税から控除できる制度です。
例えば、4,000万円の住宅ローンを組んだ場合、1年間に最大で28万円の税金が戻ってくる計算になります。
これまで、住宅ローン減税には「床面積50㎡以上」「所得2,000万円以下」「省エネ基準適合」といった条件がありましたが、立地に関する条件は一切ありませんでした。
つまり、極端に言えば「災害リスクの高いレッドゾーンの新築」でも「比較的安全なエリアの新築」でも、同じように減税を受けられていたわけです。
では、なぜ今になって立地条件が加わろうとしているのでしょうか。
住生活基本計画が示す「立地誘導」の本気度
なぜ今になって、住宅ローン減税に「どこに建てるか」という条件が加わろうとしているのか。
実は、この動きは突然始まったわけではありません。
国は10年ほど前から、「危険な場所には住まないでほしい」「街の中心部に住んでほしい」という方針を着々と進めてきました。
その総仕上げが、今回の住宅ローン減税の見直しなのです。
つまり、「住宅ローンを使って、住む場所を誘導する」政策が始まろうとしています。
もう少し具体的に言うと、「安全な場所に建てた家には住宅ローンの優遇を与え、危険な場所に建てた家には優遇を与えない」という仕組みを作ろうとしているのです。
わかりやすく例えるなら、こんな感じでしょうか。
「禁煙エリアでお食事されたお客様には10%割引、喫煙エリアでは割引なし」、飲食店なら「じゃあ禁煙エリアで」となりますよね。
国は同じ発想で、税金の優遇という「アメ」を使って、住む場所を誘導しようとしているわけです。
実は、この「アメとムチ」作戦はすでに始まっています。
2022年4月から、災害の危険性が高いエリアで新築した場合、固定資産税の減額が受けられなくなる制度がスタートしています。
通常、新築住宅は3年間(マンションなら5年間)固定資産税が半額になるのですが、危険エリアではこの優遇が受けられないのです。
今回の住宅ローン減税の見直しは、この流れをさらに加速させるものと言えるでしょう。
宇都宮市の「住んでいい場所」は意外と狭い
では、宇都宮市ではどこが「住んでいい場所」として指定されているのでしょうか。
実は、宇都宮市は2017年から「ここに住んでほしい」というエリアを明確に線引きしています。
これを「居住誘導区域」と呼びます。
過去ログ→【宇都宮市が誘導するエリアに移住するメリットとは?】建築コスト高騰で都市計画の理想と現実が見え始める!
私が宇都宮市の計画書を確認して驚いたのは、その範囲が思った以上に狭いということです。
具体的には、こんな感じです。
LRT沿線は、線路から両側500mくらいまで。つまり、LRTの駅から歩いて6〜7分程度の範囲です。
幹線バス路線沿いは、道路から両側250mくらいまで。バス停から歩いて3分程度の範囲しかありません。
「え、それだけ?」と思いませんか?
JR宇都宮駅周辺、南宇都宮駅周辺、鶴田駅、岡本駅、江曽島駅、西川田駅、雀宮駅といった鉄道駅の周辺や、LRT沿線のゆいの杜エリアなどは含まれています。
しかし、市街化区域内であっても、駅やバス路線から少し離れた住宅街は、軒並み「居住誘導区域外」なのです。
この街を不動産取引の現場から長年眺めて感じるのは、「え、あそこも区域外なの?」という場所が本当に多いということです。
例えば、昭和40〜50年代に開発された住宅団地。
当時は「便利な新興住宅地」として人気だったエリアも、幹線交通から離れているという理由で、居住誘導区域外になっているケースが少なくありません。
しかし、宇都宮市の計画とはうらはらに、計画が始まって5年以上経っても、居住誘導区域内の人口割合はほとんど増えていないというデータが出ています。
これは何を意味するかというと、多くの市民が「国や市が住んでほしくない場所」に住み続けているということです。
そして今後、そうしたエリアに対して、税制面での「ムチ」が振り下ろされようとしているのです。
これから何が起きるのか?段階的に締め付けが強まる
「でも、今回の規制はレッドゾーンだけでしょ?うちは関係ないよ」
そう思った方も多いかもしれません。
しかし、私はこれは始まりに過ぎないと考えています。
国の方針を読み解くと、規制は段階的に広がっていく可能性が高いのです。
私が予想する今後の流れをお話しします。
【第1段階】2026年〜:最も危険なエリアから
まずは「レッドゾーン」と呼ばれる、がけ崩れや津波で家が壊れる恐れがある場所。ここに新築しても、住宅ローン減税が受けられなくなります。
【第2段階】その後数年:黄色信号のエリアへ拡大
次に「イエローゾーン」。洪水で浸水する可能性があるエリアや、土砂災害の警戒区域です。固定資産税の優遇がなくなるなど、じわじわと締め付けが始まるでしょう。
【第3段階】さらに将来:居住誘導区域外すべてへ
最終的には、ハザードエリアでなくても、「住んでほしい場所」以外は全部対象になる可能性があります。
ここで怖いのは、宇都宮市内でも「今は大丈夫」と思っている場所が、実は危険エリアに該当しているケースがあることです。
宇都宮市の計画書を見ると、居住誘導区域内であっても約18%は洪水浸水想定区域に含まれています。
二荒山神社周辺や八幡山公園周辺、岡本駅周辺などには土砂災害警戒区域も存在します。
つまり、「居住誘導区域内だから安心」とは言い切れないのです。
今は「住んでいい場所」とされているエリアでも、ハザードマップで色がついていれば、将来的に規制対象になる可能性があります。
まとめ:「まだ大丈夫」が一番危ない
今回の住宅ローン減税の見直しは、単なる税制改正ではありません。
「ここには住まないでほしい」という国からのメッセージです。
防災意識の高まりもあり、現場で接するお客様からは、「うちの実家は大丈夫なのか」「今住んでいる場所はどうなるのか」というハザードマップエリアへの不安の声が増えています。
特に心配なのは、こんなケースです。
親から相続した実家が、居住誘導区域外やハザードエリアにある。今は住む予定がないけど、いつか売ろうと思っている。
でも、規制が始まってからでは買い手がつかなくなる可能性が高まります。
これから住宅購入を考えている若い世帯の皆さんは、「駅から遠いけど安いから」と飛びついた物件が、将来、住宅ローン減税も受けられず、売ることもできない負の資産になるリスクがあります。
「まだ規制が始まっていないから大丈夫」、この考えが一番危険です。
不動産市場は、規制が始まる前から動き出します。
「どうやらあのエリアは将来ヤバいらしい」という情報が広まれば、買い手は敬遠し始めます。
そうなってから売ろうとしても、すでに手遅れなのです。
宇都宮市内で不動産を所有されている方は、まず以下の2点を確認してみてください。
1. 居住誘導区域内かどうか 宇都宮市のウェブサイトで「立地適正化計画」の区域図を確認できます。
2. ハザードマップでの災害リスク 洪水、土砂災害、津波など、どのリスクに該当するか確認してください。
以前ご紹介した、「不動産情報ライブラリ」のサイトで簡単に確認できます。
過去ログ→宇都宮市のリアルな不動産相場をチェックできる無料の神サイト!】「不動産情報ライブラリ」で販売中の物件をチェック!割高?お買い得?
両方とも「セーフ」なら、ひとまず安心です。
しかし、どちらかに引っかかるなら、早めの対策を検討する価値があります。
不動産は「売りたいときに売れる」とは限りません。
特に立地に課題がある物件ほど、今のうちに動くかどうかで、将来の資産を守る大きな分かれ道になる可能性が高いでしょう。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2025年12月8日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★



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