「相続税なんて、お金持ちの話でしょ?」そう思っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、2025年度の相続税収は過去最高の3.6兆円超を見込み、課税対象者は10人に1人まで拡大しています!
記事リンク→大相続時代、広がる負担の裾野 地価高騰や少子化で税収3兆円超(日本経済新聞)
今回は、相続した不動産を「とりあえず賃貸に出す」という選択がなぜ危険なのか、税制面から考えます。
目次
- 「大相続時代」の到来、10人に1人が相続税を払う現実
- なぜ相続税の負担が急拡大しているのか
- 「とりあえず賃貸に出す」が危険な3つの理由
- 宇都宮市で相続不動産を持つ方への現実的なアドバイス
- まとめ
「大相続時代」の到来、10人に1人が相続税を払う現実
2025年度の相続税収(贈与税含む)は3兆6930億円と過去最高を更新する見通しです。
これは、2013年度と比べてなんと、2.3倍もの税収アップになります。
さらに驚くべきは、課税対象者の割合です。
国税庁のデータによる1年間に亡くなった方のうち相続税が発生した方の割合は、2023年度で9.9%。
つまり、およそ10人に1人が相続税を払う時代になっているのです。
2013年度には4.3%だったことを考えると、わずか10年で倍増しています。
「相続税はお金持ちだけの話」という時代は、完全に過去のものになりました。
日経新聞の記事では、都心に暮らす男性の事例が紹介されていました。
25坪ほどの小さな自宅兼貸しビルを所有するこの男性は、「親が亡くなったときは相続税がゼロだったのに、まさか自分が亡くなると2000万円の相続税が子どもに生じるとは」と悩んでいるといいます。
10年前に母親が亡くなったときは、法定相続人が3人いたこともあり相続税はゼロでした。
しかし現在、妻はすでに他界し、子どもは1人。
不動産評価額の上昇もあって、次の相続では約2000万円の税負担が発生する計算になるそうです。
こうした状況は、決して都心だけの話ではありません。
地方都市でも、立地の良いエリアでは同様のケースが起こり得るのです。
では、なぜこれほど急激に相続税の負担が広がっているのでしょうか。
なぜ相続税の負担が急拡大しているのか
相続税の課税対象が急拡大している背景には、主に3つの要因があります。
要因1:2015年の基礎控除縮小
2015年から、相続税の基礎控除が大幅に縮小されました。
それまでは「5000万円+法定相続人1人あたり1000万円」だったものが、「3000万円+法定相続人1人あたり600万円」に引き下げられたのです。
具体的にどう変わったか、例を挙げてみましょう。
配偶者と子ども2人が相続人の場合、以前は基礎控除が8000万円ありました。
それが現在は4800万円です。
つまり、控除額が3200万円も減ったのです。
この変更により、「うちは関係ない」と思っていた多くの方が、新たに課税対象となりました。
要因2:地価の上昇
日経の事例では、10年前に1平方メートル84万円だった路線価が、現在は147万円と75%も上昇しています。
親御さんの代に「普通の価格」で購入した土地が、時間の経過とともに評価額が上がり、相続税の課税対象になる。
こうしたケースが全国で増えています。
宇都宮市内でも、JR宇都宮駅周辺やLRT沿線では地価上昇が続いています。「うちは地方だから大丈夫」とは言い切れない状況になっているのです。
要因3:少子化で相続人が減っている
見落とされがちですが、少子化の影響も深刻です。
相続人が多ければ、基礎控除額も増えます。
しかし、子どもが1人しかいない場合は基礎控除が最小限になり、1人当たりの相続資産も増えるため、税率も高くなりがちです。
つまり、相続税の負担拡大は一時的な現象ではなく、これからも続いていく構造的な問題なのです。
「とりあえず賃貸に出す」が危険な3つの理由
親御さんが亡くなって実家を相続したとき、「すぐに売るのはもったいない」「とりあえず賃貸に出して様子を見よう」と考える方は少なくありません。
一見、賢い選択に思えるかもしれません。
しかし、税制面から見ると、この「とりあえず賃貸」という判断には大きな落とし穴があります。
理由1:3000万円の税金控除が使えなくなる
マイホームを売却する際には、「居住用財産の3000万円特別控除」という制度があります。
これは、売却で得た利益から最大3000万円まで差し引ける、非常に大きな税制優遇です。
例えば、3000万円で買った家が5000万円で売れた場合、利益は2000万円。
この特例を使えば、2000万円全額が控除され、税金はゼロになります。
ところが、この特例には「自宅として使っていること」という条件があります。
賃貸に出した時点で、この特例は使えなくなります。民泊に使っても同じです。
つまり、「とりあえず賃貸に出す」と決めた瞬間、将来売却するときに使えたはずの3000万円の控除枠を、永久に失ってしまうのです。
これは、場合によっては数百万円の税負担増につながります。
「とりあえず」の判断が、とても高くつく可能性があるのです。
過去ログ→【転勤族の宇都宮脱出事情を考える!】売却か賃貸か?2025年のリアルな現場の判断基準とは!?
理由2:賃貸収入は思ったほど手元に残らない
「賃貸収入が入るなら、持っていた方が得では?」と考える方もいらっしゃいます。
確かに、不動産の賃貸収入には節税効果がある場合もあります。減価償却などを差し引いて税務上「赤字」になれば、給与所得と相殺できることもあります。
しかし、現実はそう甘くありません。
宇都宮市内の賃料水準で考えると、管理費用、修繕費、固定資産税、空室期間の損失などを差し引くと、手元に残るお金は思っているより少ないのが実情です。
特に、もともと賃貸用に設計されていない一戸建ての場合は注意が必要です。
駐車場の確保、設備の更新、入居者が退去するたびの多額の原状回復費など、想定外のコストが次々と発生することが多いのです。
大家業は、賃貸経営として事業であり、片手間で始められるほど甘いものではありません。
理由3:売却するときに不利になる
賃貸に出した不動産を将来売却する場合、買い手には「投資物件」として評価され、通常の中古住宅とは別の評価基準になります。
投資物件の価格は、「この物件でいくら稼げるか」で決まります。
宇都宮市内の賃料水準では、この計算をすると、自宅として売るよりも評価額が低くなるケースが多いのです。
さらに、入居者がいる状態での売却(オーナーチェンジ物件)は、買い手が投資家に限定されるため、売りにくくなります。
「とりあえず賃貸に出す」という判断は、将来の売却を困難にし、売却価格も下げてしまう可能性が高いのです。
宇都宮市で相続不動産を持つ方への現実的なアドバイス
では、宇都宮市内で親御さんから不動産を相続した場合、どのように考えればよいのでしょうか。
まずは「立地」で判断する
最も重要なのは、相続した不動産がどこにあるかです。以前のブログでもお伝えしましたが、宇都宮市内でも地域によって状況は大きく異なります。
過去ログ→【宇都宮市の実家が空き家になったら売却すべき?】相続まで持つのは正解か?地方都市の厳しい現実とは!
JR宇都宮駅徒歩圏内やLRT沿線の好立地であれば、保有を続けても一定の価値維持が期待できます。
一方、郊外の住宅地や交通の便が悪いエリアでは、今後も需要の減少が続くと予想されます。
宇都宮市民の半数以上が公共交通から遠い場所に住んでおり、LRT開業によりこの格差はさらに広がっています。
まずは、相続した不動産がどのエリアに位置するのか、冷静に見極めることが大切です。
「売れるうちに売る」という選択肢
人気エリア以外の物件を所有されている方にとっては、中古需要が比較的旺盛な今の市場環境は、貴重な売却機会かもしれません。
過去ログ→【栃木県の新築マンション年収倍率が12倍超に急騰!】中古需要は増加、しかし恩恵を受けるのは一部エリアだけ?宇都宮市の不動産市場の現実とは・・
金利上昇が本格化し、住宅購入者の購買力がさらに低下すれば、「売りたい時に売れない」「希望価格では売れない」という事態も考えられます。
将来的な売却を考えているなら、「いつ売るか」を真剣に検討する時期に来ているのではないでしょうか。
まとめ
相続税を払う人は、いまや国民の10人に1人。
税収は過去最高の3.6兆円を超え、「お金持ちだけの話」という時代は完全に終わりました。
背景には、2015年の基礎控除縮小、地価の上昇、そして少子化による相続人の減少という3つの構造的な要因があります。
こうした中で、相続した不動産を「とりあえず賃貸に出す」という判断には、大きなリスクが潜んでいます。
賃貸に出した瞬間、マイホーム売却時に使える3000万円の税金控除は永久に失われます。
賃貸収入も、管理コストや空室リスクを考えると思ったほど手元には残りません。
そして将来売却する際には、投資物件として評価されるため、自宅として売るよりも不利になることが多いのです。
「とりあえず」という言葉は便利ですが、不動産の場合、その判断が数百万円の損失につながることもあります。
何も決めずに放置すれば、管理コストは積み重なり、建物は老朽化し、選択肢は減っていく一方です。
大切なのは、「今すぐ売る」か「ずっと持つ」かの二択ではなく、将来どうしたいのかを明確にして、それに合った判断をすることです。
相続した不動産について、この機会に家族でしっかり話し合ってみてはいかがでしょうか。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2025年12月17日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★






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