2025年11月26日、政府・与党が投資用不動産の相続税評価ルールを根本から変える方針を打ち出しました!
記事リンク→投資用マンション節税に歯止め、相続直前購入なら税重く 政府・与党検討(日本経済新聞)
一棟マンション節税、不動産小口化商品による節税スキームが次々と封じられる中、宇都宮市内の地主さん・富裕層の皆さまは、今後どのような相続対策をとればよいのでしょうか。
長年この業界で仕事をしてきた立場から、現実的なアドバイスをお伝えします。
目次
不動産節税を封じる、国税庁の「伝家の宝刀」
不動産業界が騒然となったニュースが飛び込んできました。
2025年11月26日、日本経済新聞によると、政府・与党は投資用不動産の相続を巡る節税策の防止に乗り出すことを正式に発表しました。
そもそも、なぜ不動産で相続税を減らせるのでしょうか。
簡単に言うと、現金1億円をそのまま相続すれば1億円に対して相続税がかかりますが、1億円で不動産を買って相続すると、相続税の計算上は5000万円や3000万円といった「低い評価額」で計算されるからです。
この評価額の差を利用して、相続税を大幅に減らす手法が広まっていました。
特に都心のタワーマンションや一棟マンションは、実際の購入価格と相続税評価額の差が大きく、「節税の切り札」として富裕層に人気でした。
しかし、国税庁はこの状況を「あまりにも不公平だ」と問題視してきました。
そして、徐々に規制を強化してきたのです。
ここで、不動産節税をめぐる動きを振り返ってみましょう。
2012年、相続直前に一棟マンションを購入して節税を図った事例に対し、国税庁が「ちょっと待った」をかけました。通常の評価ルールを適用せず、実際の取引価格で評価し直し、約3億円の追徴課税を行ったのです。当時はまだ「よほど悪質なケースだけ」という例外的な対応でした。
2022年、この国税庁の対応が最高裁で認められます。「節税目的で借金をしてタワマンを買い、相続税を減らすのは認めない」という判決が出たのです。これで、国税庁は堂々と過度な節税に「待った」をかけられるようになりました。
2024年、タワーマンションの評価ルールそのものが変更されました。高層階ほど実際の価格は高いのに、相続税評価額は低いままという「ねじれ」が是正され、タワマン節税の効果は大幅に薄まりました。
そして2025年、いよいよ一棟マンション節税と不動産小口化商品にも規制の手が及ぶことになったのです。「伝家の宝刀」として個別対応していた国税庁の姿勢が、正式なルールとして制度化される流れになりました。
2026年度税制改正で何が変わるのか
では、具体的に何が変わるのでしょうか。
日経新聞の報道から、2026年度の税制改正大綱に盛り込まれる見込みの内容をわかりやすくまとめてみます。
一棟マンション・賃貸不動産の評価見直し
ポイントは「買ってから5年以内に相続が発生したら、買った値段で評価しますよ」ということです。
これまでは、例えば21億円で一棟マンションを購入しても、相続税を計算するときの評価額は4億円程度まで下がることがありました。
つまり、21億円の現金を持っていれば21億円に課税されるのに、不動産に換えれば4億円分しか課税されなかったのです。この差額17億円分の相続税が「節税」できていたわけです。
新ルールでは、購入から5年以内に相続が発生した場合、「購入価格×地価の変動×0.8」で評価されます。
具体的な数字で見てみましょう。
【従来】 21億円で購入 → 相続税評価額 約4.2億円(約8割減!)
【新ルール】 21億円で購入 → 相続税評価額 約16.8億円(2割減のみ)
つまり、「相続直前に慌てて不動産を買って節税する」という手法は、もう通用しなくなるということです。
逆に言えば、5年以上前から保有している不動産については、従来通りの評価方法が適用されます。長年にわたって賃貸経営をしてきた地主さんにとっては、すぐに影響が出るわけではありません。
不動産小口化商品の評価見直し
記事リンク→相続節税、イタチごっこ 不動産「小口化」市場が急伸(日本経済新聞)
不動産小口化商品とは、簡単に言うと「高額なビルやマンションを、100万円や1000万円といった小口に分けて販売する投資商品」です。
一人で10億円のビルを買うことはできなくても、100人で分ければ一人1000万円で済みます。この仕組みを使った投資商品が、近年急速に増えていました。
問題は、この小口化商品でも相続税の評価額が極端に下がるケースがあったことです。
国税庁が紹介した事例では、3000万円で購入した小口化商品が、相続税評価ではわずか480万円になっていました。
84%もの評価減です。
新ルールでは、購入時期に関係なく、実際の取引価格をもとに評価されるようになります。
一棟マンションの規制が「5年以内」に限定されているのに対し、小口化商品は購入時期を問わず新ルールが適用されます。
これは、小口化商品が「節税目的で買われるケースが特に多い」と国税庁が見ているからでしょう。
つまり、「不動産で相続税を減らす」という発想自体が、これからさらに難しくなるということです。
なぜ不動産節税は封じられ続けるのか
ここで、なぜ不動産を使った節税スキームが次々と封じられていくのか、その構造を理解しておく必要があります。
不動産の相続税評価には、実は構造的な「逆相関」が存在します。
市場価格は、稼働状況が良く、賃貸割合が高いほど上昇します。
当然ですよね。満室で家賃収入がしっかり入る物件は、投資家にとって魅力的ですから。
一方、相続税評価額は、借家人が多いと利用の制約も多いとみなされ、評価額は実際の取引価格よりも下がる傾向にあります。
この差は何でしょうか。
つまり、「収益性が高い物件ほど、相続税評価額が低くなる」という逆転現象が起きているのです。
この制度的な「抜け穴」を利用して、節税スキームが生まれてきたわけです。
しかし、国税庁はこの状況を「相続税制度の公平性を損ねる」として問題視してきました。
そして、タワマン節税、一棟マンション節税、小口化商品と、順次規制をかけてきたのです。
私が長年この業界で仕事をしてきて感じるのは、ここ10年ほどで国の財政が逼迫してきたこともあり、年々、制度の抜け穴を突いた節税対策が無効化され続けていることです。
節税目的だけで不動産を購入することのリスクは、今後ますます高まると言わざるを得ません。
宇都宮市内でこれからもできる相続対策
では、宇都宮市内の地主さんや富裕層の皆さまは、今後どのような相続対策をとればよいのでしょうか。
過度な節税スキームが封じられる中で、今後も有効な相続対策について整理してみます。
1. 小規模宅地等の特例を最大限活用する
これは今後も変わらず有効な制度です。
亡くなった被相続人が住んでいた自宅の土地(特定居住用宅地等)を相続する場合、330㎡まで評価額を80%減額できます。
例えば、宇都宮市内で5000万円の土地を相続する場合、この特例を使えば評価額は1000万円まで下がります。
ただし、適用には条件があります。
配偶者は無条件で適用されますが、同居していた親族は相続税の申告期限まで所有・居住し続ける必要があります。
重要なポイントは、この特例は「実際に生活の基盤として使っていた土地」を守るための制度だということです。
節税目的で購入した投資用不動産とは、そもそも制度の趣旨が異なります。
宇都宮市内でも、親御さんと同居されている方、あるいは二世帯住宅にお住まいの方は、この特例をしっかり活用できる可能性があります。
2. 事業用宅地の特例を活用する
宇都宮市内で事業を営んでいる方には、特定事業用宅地等の特例が有効です。
被相続人が事業で使用していた土地を相続する場合でも、400㎡まで評価額を80%減額できます。
また、賃貸アパートや駐車場など貸付事業用の宅地についても、200㎡まで50%減額の特例があります。
注意すべき点は、これらの特例は「相続税申告の期限まで事業を継続しながら土地を所有し続ける」ことが条件だということです。
節税だけを目的として、相続後すぐに売却することは想定されていません。
3. 生命保険の非課税枠を活用する
意外と見落とされがちなのが、生命保険の活用です。
法定相続人が受け取る死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。
例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の計3人なら、1500万円までは相続税がかかりません。
現金をそのまま相続するよりも、生命保険に組み替えておくことで、確実に節税効果が得られます。
しかも、この制度は不動産節税のような「抜け穴」ではなく、正式に認められた非課税枠です。
4. 早期の財産整理と現金化
これは少し逆説的に聞こえるかもしれませんが、「不動産を持ち続けることが必ずしも得策ではない」という視点も重要です。
以前のブログでお伝えしましたが、宇都宮市内でも「空き家予備軍」は急増しており、郊外の住宅地では需要が激減するリスクが高まっています。
過去ログ→【宇都宮市で「空き家予備軍」が急増中!?】団塊世代の高齢化で2030年までに何が起こるのか?
特に、立地の悪い不動産を節税目的で保有し続けることは、将来的に「売れない」「貸せない」「維持費だけがかかる」という三重苦に陥る可能性があります。
相続対策として、立地の良い不動産に集約し、将来性の乏しい不動産は早期に現金化するという選択肢も、十分に検討する価値があります。
5. 相続時精算課税制度の活用
2024年の税制改正で、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。
60歳以上の親から18歳以上の子・孫への贈与について、2500万円までは贈与税がかからず、相続時に精算する制度です。これに加えて、毎年110万円までは相続時の持ち戻しも不要になりました。
ただし、この制度で贈与された宅地には小規模宅地等の特例が適用できないため、どちらが有利かは個別に検討が必要です。
まとめ:節税から資産承継へ発想の転換を
不動産を使った相続税の節税スキームは、タワマン節税から一棟マンション節税、そして不動産小口化商品へと、次々と規制の対象になってきました。
国の財政が社会保障費の急増で逼迫し始めており、徴税を強化する流れを見ていると、「制度の抜け穴を突いた節税」という発想自体を見直す時期に来ていると感じます。
過去ログ→【国立大病院の赤字が年間400億円超えで、破綻状態に!?】医療へのアクセス困難が宇都宮市の不動産にもたらす影響とは!?
国税庁が問題視しているのは、「実際に生活や事業に使っていない不動産を、相続税を減らすためだけに購入する」という行為です。
一方で、小規模宅地等の特例や生命保険の非課税枠など、「生活や事業の基盤を守るための制度」は今後も維持される可能性が高いです。
宇都宮市内の地主さんや富裕層の皆さまにお伝えしたいのは、「節税」から「資産承継」へと発想を転換していただきたいということです。
大切なのは、相続税を減らすことだけではありません。
次の世代に、価値のある資産を、トラブルなく引き継ぐこと。
そのためには、立地の良い不動産に集約し、将来性の乏しい不動産は早期に整理し、家族でしっかりと話し合っておくことが重要です。
税制は常に変わります。
しかし、本当に価値のある資産を守り、次世代に引き継ぐという本質は変わりません。
今回の税制改正を機に、ご自身の資産状況を見直してみてはいかがでしょうか。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2025年11月27日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★




%20(1).png)

0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。