日本国内でのライドシェア全面解禁に向けての国の動きが活発になっています。
今年2024年4月からスタートした「日本版ライドシェア」。
タクシー会社が運営主体となり一般ドライバーが有料で人を運ぶサービスで、今後、タクシー会社以外の事業者の参入を認める全面解禁になるかどうかが焦点となっています。
→ライドシェア、全面解禁不透明 河野氏と国交省に隔たり(時事ドットコム)
端的に言うと、今まで禁止されていた一般人が自分の車を使って他人を有料で運ぶ、いわゆる「白タク」を全面解禁するかが争点となっています。
既得権のあるタクシー業界はもちろん猛反発していますから、大手IT企業のバックアップを受けた規制を緩和したい勢力と規制を維持したい勢力のせめぎ合いが続いています。
ネット上では否定的な意見が優勢
ネット上の口コミを見ていると、ライドシェアの解禁に否定的な意見が多数を占めています。
私は6.7年前から海外に行った際、移動するのにほぼライドシェアを利用し、トータル100回くらい実際に乗車した経験から、ネット上で心配されているような事象はあまり問題ないと思っています。
私が主に利用していたのは、東南アジア諸国で、現地ではボッタクリタクシーが横行しています。
ライドシェアなら、料金が明瞭会計で車内での支払いもなく、ルートも事前にわかり、配車の際もマップ上でどの位置に迎えの車があるのかがわかるため、大変便利に利用しています。
海外では日本のように真面目なタクシー会社ばかりでなく、メーターを使わないで割高な運賃を請求してきたり、わざと遠回りして運賃を稼ごうとするタクシー運転手も多いので、ライドシェアが一気に普及したとも考えられます。
日本でも、私がJR宇都宮駅からワンメーターくらいの距離をタクシーで移動したいと思って、駅前に並んでいるタクシーを使うのを遠慮してしまいます。
駅に並んでいるタクシーをワンメーター利用したことある方ならわかると思いますが、運転手の方がとっても不機嫌そうにされるので、乗りにくいのです。
時間かけて客待ちの列に並んで、ワンメーターの距離の利用に怒りたくなる気持ちもわかりますが、利用者の立場では気軽に駅前のタクシーが利用できない現実もあります😅
今、否定的な意見を口にしている方々も、実際に日本国内でライドシェアが全面解禁されて、利用しだしたら、便利で素晴らしいサービスだと感じてしまうでしょう。
ライドシェアは利用者視点では、移動の選択が増え、料金もタクシーより安いので、便利さしかないからです。
そのため、世界中でライドシェアが一気に普及しました。
しかし、問題もあり、派遣労働の規制緩和と同様にタクシー業界のワーキングプア化につながると危惧される一面もあります。
世の中、何事もプラスだけのことはなく、セットでマイナス面も付いていきます。
どこでトレードオフのバランス取るかが重要でしょうね😅
ライドシェア解禁で宇都宮市のような地方都市では何が起きる?
これから考えられるライドシェアの全面解禁で、考えらるメリットとデメリットで羅列しみます。
【ライドシェアのメリット】
・タクシーよりも格安でドアツードアの移動が可能になる
・マイカー以外で人々の移動が増え、中心市街地に活気が出る
・公共交通までのラストワンマイル問題が解決する可能性がある
・観光客の移動が容易になり、街全体に経済効果が期待できる
・インバウンドの観光客が増える
・駐車場だった場所の開発が進む
・副業の選択肢が増える
【ライドシェアのデメリット】
・ドライバーや車の種類により安全面が低下する可能性がある
・公共交通の利用者が減る可能性がある
・自動車代行業の売上が減少する
・駐車場の需要が減少する
・タクシー運転手の収入が減少する
・タクシーの数が減少し、宇都宮市の郊外は今より不便になる可能性がある
・天候や時間帯によっては、利用料金がタクシーより高くなる可能性がある
・地域内の格差が広がる
ライドシェアが街に与える好影響を考えると・・
利用したことがあるのでわかりますが、公共交通の不便な場所へもドアツードアでスムーズにしかも格安で移動できるようになることで、宇都宮市のようなマイカー依存社会では大きな革命的な変化が怒ることは間違いないでしょう。
特に、マイカーの普及により停滞してしまった中心市街地は、人の回遊が増え、元気を取り戻すきっかけになるでしょう。
もしかすると、LRT開業より街全体に与えるインパクトは大きいかもしれません。
また、宇都宮市が進めているコンパクトシティ構想にも大きく寄与すると思います。
なぜなら、ライドシェアの普及で、公共交通へのアクセスの課題と言われている、ラストワンマイル問題、つまり、最寄りの駅やバス停から自宅や目的地まで徒歩20分ほどの移動の問題が大きく解決する可能性を秘めているからです。
土地勘のない観光客にとっては大きなメリットがあります。
慣れない路線バスを使って移動するのと違い、直接目的地までタクシーよりも便利に格安で移動できるメリットは計り知れません!
必然的に、街全体に観光収入増をもたらす可能性が高くなるでしょう。
また、日本語に不慣れな外国人も気軽にマイナースポットに観光できるようになるため、公共交通の貧弱な地方ほどインバウンド観光の恩恵を受けられるでしょう。
ライドシェアが街の開発に与えるインパクト
ライドシェアが宇都宮市内で普及すると、移動時のマイカー依存度が低下しますので、街の都心部において、駐車場の需要が低下することが考えられます。
車の所有台数も減るでしょう。
実際にアメリカではライドシェアの普及した場所では、マイカーを手放した人がかなりの割合でいたと報道されています。
→米国で「30万人以上がマイカー放棄」、ライドシェアが直視させた車の経済価値(日経クロステック)
ライドシェアが普及すると、都心部の駐車場として利用されている土地の収益が悪化するため、都市開発が後押しされる可能性が高くなると予想されます。
また、気軽に飲みに行く機会が増えることから、中心市街地の飲食店にはプラスの影響があるでしょう。
街の都心部を中心に人の移動が増えることで、街全体の経済にプラスになる可能性が高く、商業店舗も駐車場の確保が軽減され、不動産開発には好影響が期待されます。
マイカーの有効活用と気楽な副業ができるように
大都会に比べるとずっと生活費が安いと言われる地方の暮らしにおいて、唯一かさむのが、マイカーの維持費です。
一家に1台どころか、一人1台の暮らしは、いかに駐車場のコストが安いといえども、負担は大きいです。
国交省の調査によると、クルマ社会と言われる地方部でも、毎日のクルマの利用時間はせいぜいたったの1時間です!
人の活動時間を18時間とすれば、1日のうち、たったの6%でしかクルマは使われていないことになります。
それだけ稼働率が低いものなのに、維持費は高く、保険代、車検代、タイヤ代など含めれば、月数万円にもなります。
マイカーを利用して気軽に副業ができる選択肢ができることは、地方に住む人にとっては大きなメリットです。
ライドシェアでは、天候や混雑具合によって利用価格が変動する、ダイナミックプライシングが導入される可能性が高いので、スキマ時間で効率よく稼げる可能性が高いです。
1日数時間の労働で、車の維持費くらい楽に稼ぐ人も出てくるでしょう。
また、不便な地方においては、地域の高齢者の足として人助けの側面も大きいです!
全国各地ですでにライドシェアを利用した、助け合いの試みが始まっています。
→ライドシェア、過疎の地方で「助け合い」 非営利が先行 運転手不足の先へ(日本経済新聞)
ライドシェアの問題点を考えると・・
ライドシェアの話が出たときに一番問題となるのが、安全面についてです。
この点は、規制でがんじがらめのタクシーと比較すると心配に感じる方が多いのもうなずけます。
そのため、長い間白タク行為は禁止されていましたからね。
しかし、時代は変わり、誰もがスマホを持つ時代で、IT技術も進化しています。
事故等が心配なら、ライドシェアの運営会社に保険を義務付けるなどして、報酬の一部から保険料を徴収するなりすれば、簡単に解決できると思います。
また、ドライバーへの心配ですが、実際には乗り降りした際、ドライバー、利用者、双方に評価機能があるため、マナーの悪い人は、ライドシェアの仕組みから除外させることは容易にできるので、こちらもそれほど心配する必要はないと思います。
安全面が心配なら、高評価で実績のあるドライバーだけを指名すればいいだけの話です。
タクシー&運転代行業者への負の影響は大きい
既得権を持つ既存のタクシー業界には、ライドシェアの普及は破壊的な影響があるでしょう。
ライドシェア大手2社のウーバーとリフトの本社があるアメリカ、サンフランシスコでは、地域最大のタクシー会社が倒産してしまいました。
低料金のライドシェアに利用者を奪われて利用客が激減したことが背景にあります。
また、宇都宮市のような地方都市で普及している運転代行業へも大きなマイナスの影響を受けるでしょう。
もっとも懸念されるのは、ドライバー全体の収入が減少してしまう懸念です。
このサービスの発祥の地であるアメリカでは、料金がタクシーの半額程度で利用でき、ドアツードアの利便性も確保されているため市場が急拡大しています。
ライドシェアの全面解禁となれば、多くの外国人ドライバーも参入してくることは容易に想像できます。
そのため、ワーキングプアのための低賃金労働としてライドシェアが定着してしまうことが危惧されています。
また、公共交通の利用が減ることも予想されます。
特に、本数の少ないバス路線などは、更に乗車率が低下してしまうことが考えられます。
近距離の移動は、ドアツードアで便利な上、低価格のライドシェアが圧倒的な競争力を持つことになるので、公共交通とどのようなバランス取るかは課題になると思います。
不便な場所がより不便に・・
個人的に最も懸念しているは、都市内の地域格差が拡大することです。
現実的に今の時点でも、Uber Eats等の出前サービスは宇都宮市全域で利用できる状況ではありません。
便利な出前サービスである、Uber Eatsが宇都宮市内で利用できるのは、街の都心部に限られています。
郊外では、サービスの恩恵を受けられない状態で、すでに宇都宮市の都市内でも格差が出ています。
当然ですがライドシェアは出前サービス同様に、民間サービスですから、利益の出ない場所にサービスを提供しようする作用は働きません。
宇都宮市の郊外など、不便な場所では、配車依頼をしても全然車がつかまらない可能性が十分に考えられます😅
また、配車依頼の少ない場所へもライドシェアを確保するため、不便な場所は利用料金が高く設定されることも考えられます。
現存するタクシー会社の多くが無くなってしまったら、不便な場所が更に不便で住みにくい場所になる可能性が高いです。
都市内の格差を解消するために、行政が不便なエリアのライドシェアに補助金を出す等の対応が必要になるかもしれません。
トータルで見ればプラスだが、調整も不可欠に
ライドシェアの導入がなぜここへきて急に浮上しているのかと言えば、ひとえに人手不足の影響からです。
タクシーは、法律で公共交通に位置づけられています。
そのため利用料金も一律で規制があるのです。
しかしタクシーのドライバーの数が、この10年でおよそ4割も減って利用するのが難しくなっているエリアが徐々に拡大しています。
そのため、国も急ピッチでライドシェア解禁に動いているのです。
タクシーに限らず、バスの運転手も不足していることから、近い将来にライドシェアが全面解禁となるのは、時間の問題でしょう。
同じ宇都宮市内といえ、地域内の不動産格差はこれからより鮮明になっていくと予想しています。
便利な場所はより便利に、不便な場所はより不便に、宇都宮市内でも不動産の価格差が広がる一方になってしまうでしょう。
★荻原功太朗の業務について★
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