少子高齢化が進み相続で不動産を譲り受ける事案が急増してきています。
また、長寿になったこともあり、高齢になってから相続を受ける方も増えており、すぐにまた次の代への相続になるケースも増えています。
不動産を相続する際に、不動産取引に詳しくない専門家の意見を鵜呑みにして、後々に子や孫の代で相続トラブルとなり苦労されるケースも散見されるようになっています。
不動産を相続する際に、後々大きな問題となるのが、所有権を兄弟や親族で共有名義にすることです!
今回は相続不動産を共有名義にすることについて深堀りしてみます。
相続時なぜ不動産を共有名義にしてしまうのか?
宇都宮市内で、賃貸マンションの相続が発生し、順調にキャッシュフローがあるような物件だったりすると、「売るのももったいないし、とりあえず共有名義にしておくか」なんてケースはよくあります。
相続人の数や財産の種類は人それぞれですが、規模の大きな不動産は複数人で分けるのは大変です。
資産価値の高い都市部の物件であれば、売却したくない相続人とさっさと現金化してキャッシュが欲しい相続人にがいたり、相続人みんなが欲しがる不動産があったりすると、遺産分割でもめることになりがちです。
そのため、遺産分割でもめた場合に一時的な解決法として実務に詳しくない方の助言で、共有名義を選択するケースはよくあることです。
共有名義にするメリットは?
共有名義の最も大きなメリットは公平で、相続人にとって納得感が強いことです。
加えて、相続した物件が収益を出せる物件であれば、利益を持分ごとに公平に配分できます。
2つ目は売却時の利益に対する控除額が上がることです。
共有名義の住宅を売却すると、譲渡所得にかかる税金控除をそれぞれ受けられます。
相続した不動産の多くは減価償却されており、取得費が少ないことから税金の負担が減少することは大きなメリットと言えますね。
こうやってメリット並べて見ると簡単に遺産分割の問題が解決しそうな不動産の共有ですが、後々トラブルとなることが多いのです!
共有名義のデメリットは?
共有不動産の大きなデメリットは資産価値の減価です!
帳簿上はだれが持ち主だろうと、不動産の価値は変わらないように見えますが、実際の取引の現場では状況が変わってきます。
共有不動産は賃貸に出すにも、売却に出すにも権利者全員の合意が必要となるため、収益性、流動性が低くなりますので、不動産の価値そのものが第三者から見ると低くなります。
そして最大の問題点は共有関係者の世代交代です!
共有名義がそのままになっていると、子どもや孫の世代に相続するのが非常に困難になります。
例えば親が亡くなって、3人の子どもが賃貸マンションを相続したとします。
その子どもがの一人が亡くなって孫3人に受け継ごうとすると、共有者が5人になってしまい、どんどんと権利が複雑になってしまいます。
数世代後の共有者は当初の共有者同士よりも関係性が希薄になるので、共有者全員の意思をまとめるのが困難になります。
さらに、共有不動産は利用していなくても、持ち分に応じた固定資産税等の負担があり、共有者で連帯納税義務も負います。
そして厄介なことに、未利用の共有持分も相続財産として評価されますので、子や孫に親族間の不和を招き、処分の難しい厄介な資産を残すことにつながります。
のちのち子や孫に資産を受け継がせ、一族の平安を望むなら、相続時の不動産共有は避けておくのが無難です。
なにより一旦バラバラにしてしまった権利を再度一つに戻すのにはものすごいエネルギー(お金)と労力が必要になるので、安易な不動産権利の分割はできるだけ避けることが、財産の安定継承には不可欠です。
参考過去ログ→【熱力学の法則から導く損しない物件選び!】なぜ不動産の再開発は難しいのか!?
相続時に安易に不動産を共有名義にするくらいなら、第三者に売却し、金銭でしっかり相続財産を仕分けしておくほうが、後々一族間での不和やトラブルを減らせることになるでしょう。
共有名義の不動産を相続することになったらどう解決する?
不動産の共有を解決する方法は大きく分けて2つになります。
持分を手放す人がその対価を【金銭で受け取る】か、【土地で受け取る】かです。
解決策はシンプルですが、利害関係を調整しながら、合意形成を図るのは、当事者が増えれば増えるほど困難になります。
したがって、利害が対立する当事者間だけで解決するより、調整に慣れている第三者を交えて話をまとめていくほうが現実的です。
持ち分を手放す人が金銭を受け取る方法
金銭で権利調整をする方法は大きく分けて3つあります。
1,共有者同士で持分を売買する
2,共有者全員で第三者に持分を譲渡し、持分に応じて代金を分け合う
3,単独で共有持分を第三者へ売却する
1の方法では、売買諸条件で当事者間が納得すれば問題ありません。
ただし、親族等の近しい関係者間の取引の場合には、売買価格は税務上の適正価格から乖離すると「みなし贈与」とみなされる可能性があるので、不動産業者や税理士等から適切なアドバイス受ける必要があるでしょう。
2は、権利者全員の合意形成ができれば可能となる手法です。
ただし、注意すべきは単に「売却すること」だけの合意だと、金額や売却時期、誰に売却するかなど様々な契約条件での合意も必要となるため、実際の実務ではこちらをまとめるのが難しい点になります。
3の単独で持分を売却する方法は、驚く方も多いと思いますが、他の権利者の同意はおろか、事前事後の通知も不要で単独で売却が可能です!
ただし、このような複雑な権利関係の不動産を好んで取得するのはプロの不動産業者となるため、売買価格は一般的に取引される価格より相当安くなります。
持ち分を土地で受け取る方法
土地で受け取る方法には、複数名で所有している不動産を共有者の持分に応じて分筆して各々の所有地を作る手法と、複数の土地を共有している場合に各々持分を交換する手法があります。
ただし、土地だけの物件ならいいですが、建物が建っている場合は取り壊して更地にするなど、取り壊しの合意も必要になります。
地形のいい物件や共有者が少ない場合は、敷地も分割しやすいですが、どちかが旗竿地のような使いにくい形状の土地になってしまう場合、分割面積の割合などでもめる場合も多々あり、権利調整は非常に難しいでしょう。
他にも、共有名義の不動産を維持したい場合は、自分で他の権利者の持分を買い戻す方法もあります。
安易な相続時の共有がもたらす後々の不和
これまでの共有解消の流れをみれば、共有名義の不動産を相続される方がいかに大変かを理解できると思います。
時間の経過とともに、権利関係者が増え、一族全体で不和の種になりやすいのが共有名義の不動産の特徴です。
ではなぜ、相続時に不和の種となる共有名義で不動産の権利を分割してしまうのか?
多くは実務の専門知識のない、税理会計士さんのアドバイスによって安易に共有分割してしまうケースを散見します。
相続時にもめないことだけを考えれば、その場しのぎの安易な解決策でいいのかもしれませんが、後々の親族間の不和となる原因を作らなためにも、長期的な視点を踏まえた提案力が真のプロには要求されます。
自分の子や孫の世代が困るような資産を創出し、一族に不和の種を作らないためにも、今回のコラムが役に立てば幸いです。
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