You Tubeを始め、ネット動画については、もはや説明が不要なほど皆さんの生活に根付いているのではないでしょうか。
HIKAKIN(ヒカキン)や、はじめしゃちょーなど代表的なユーチーューバー(YouTuber)の活躍の影響なのでしょうか、子供たちが将来なりたい職業にユーチーューバーがランクインしています。
芸能人や著名人もYou Tubeチャンネルを持ち、定期的に動画を公開しているなど、その影響力は一部ではテレビを超えていると言われるほどです。
確かに前述したユーチューバーによる代表的なチャンネル以外にも、アイロンの掛け方やお料理、ネクタイの結び方などの一般的な解説動画を始めとして、かなりマニアックなハプニング動画など様々なものが発信されています。
「ちょつとしたコツ」を調べる場合、本やインターネットによる文字情報を読むより、音声と動画で解説してくれるYou Tube動画を観るほうが理解も早いし手間もかからないのでしょう。
不動産業界でも新築や中古の物件紹介はもとより、「失敗しない方法」や「投資で成功するには」など様々なYou Tube動画が公開されていますが、不動産関連のニュースや情報を紹介しているネットニュース「住宅新報web版」で興味深い記事を見つけました。
住宅の3D(三次元)コミュニケーションプラットフォームを手掛けている「スタイルポート」という会社が調査した結果によると特定のマンション購入を検討した際に参考にする媒体の1位がYou Tubeであったという内容の記事です。
マンション購入時の参考「YouTube」最多 スタイルポート調べ_掲載記事はこちらから
詳細な内容は記事に譲りますが、公開されている参考媒体はYou Tubeを筆頭にInstagramにTwitterなど、動画の「質」などにもよりますが、個人や企業が比較的手軽に発信できる媒体であるものが上位を占めています。
もっともアンケートは、政令指定都市で居住用マンションを購入した40~50代の111人を対象としていますので、統計学的に考えてもかなりの偏差数による偏りがあると考えられますから、アンケート結果が全ての市区町村の方々に当てはまるとまでは思えませんが、少なからず利用されていることは間違いなさそうです。
確かに私自身、興味深いタイトルの不動産関連チャンネルは数多く視聴したことがありますし、ご覧いただいたことがある方ならご存じのとおり、内容については動画の作成者によりかなりの違いがあります。
まがりなりに私もプロの不動産業者ですから、内容を見て「なるほど」と感心するものがある一方で、「それ、ちがうだろ~」とツッコミを入れたくなるものまで玉石混交です。
信頼のおける某工務店の社長から聞いた話では、大手ハウスメーカーの営業マンが個人で公開しているYou Tube動画のできはとても良く、人気もあるらしいのですが、その営業マンは動画を見て問い合わせのあった方を他社に紹介して「紹介料」をせしめ、かなり儲けているのだとか。
本当かどうかまでは分かりませんが、ありそうな話です。
もっとも施工エリアから外れていれば自分が直接担当することは困難ですから、ある程度、信頼のおける工務店に紹介しているというのが実情かも知れませんが……。
You Tube動画の広告収入で利益を得ることができるのは「ほんの一握り」の方々だけですから、不動産という狭い範囲の動画はそのような収入目的ではなく、社長や勤務する営業マンが、自社の誠実さや仕事に対する取り組み方など文字では伝わりにくい情報を伝えるために利用されていることが多いように感じます。
先程、ご紹介した信頼のおける某工務店の社長は誠実で知識も豊富なことから自身でYou Tubeチャンネルを公開されているのですが、最近では問い合わせの多くがYou Tubeを見た方からのものであるとのことです。
もともとバックオーダー(依頼してから、住宅が完成して引き渡しを受けるまで)が1年前後の、いわゆる客待ち状態の人気工務店だったのですが、You Tube動画を公開して1年半を経過した現在では1年半~2年待ちなのだとか。
建物の精度を下げないためむやみに人材を募集し会社を大きくするという考えは持たず「年間棟数は○棟まで」と、現状の人員構成で対応できる棟数だけを受注するようにしているので、場合によっては「お断り」することも多いのだとか。
なんともウラヤマシイ話ではありますが、そのようなスタンスが人気の要因なのかも知れません。
このような誠実な方が公開しているYou Tube動画であれば間違いなく「参考」になると思うのですが、先程、解説したように「それ、ちがうだろ~」動画が多いのも事実です。
個人的な意見ですが「不動産投資」の関連動画は、とくにその傾向が高いようです。
まるで不動産投資は必ず成功すると誤解をまねくようなものが多く、必ず抑えておきたい相応のリスクなどはほとんど語られていません。
もっとも投資家を「その気に」させることを目的とした動画でしょうから、意図としては合っているのでしょう……。
私が不動産コンサルティング業務を行っていることから「この物件を購入して運用しようと思うのだけど、意見を聞かせてもらえないか」と相談されることがよくあります。
そこで、担当している営業マンが作成したレントロール(不動産投資の収支計画など、賃貸借条件を一覧表にしたもの)や物件資料を精査することがあるのですが、かなりの確率でリスクの読み込みが甘い(意図的なのか、知識が不足しているのか定かではありません)
レントロール自体は、立派なソフトを使用して作成されていますので、内容も一通り埋められており見栄えも良いのですが、満室状況の木造アパートなどの場合に家賃滞納状況の比率が情報として入っていなかったり、敷地内に駐車スペースがないため敷地外の駐車場を利用している方が多いのに、そのような情報がどこにも記載されていません。
また居住者に使い放題で提供しているネット設備の費用が計上されていないなど、不動産のプロとしては提案されている表面利回りはとてもじゃないけれど達成できないような内容だったりします。
ウソとまでは言いませんがレントロールに記載されている数字も、その他資料と突き合わせ調査すると、「明らかに怪しい」なんてこともよくあります。
弊社でも収益物件をご紹介していますが、その場合、想定されるリスクについてはご納得いただけるまで説明をさせていただきます。
さらにレントロールを作成する場合「希望的な観測」は持ち込まず、確実性の高い収益計算をするよう心がけています。
早期リタイアや目減りする年金を補うためなど、過熱気味と思えるほどに一般の方々が不動産投資を検討され、投資関連セミナーも人気となっているようですが、不動産のプロである私達ですら「読み」が甘いと失敗するのが不動産投資です。
世の中に「確実」が存在しないことは皆様もご存じかと思いますが、投資を検討する場合にはご自分で「学び」を深め、甘言に乗せられないだけの知識を得ておく必要があるでしょう。
結局のところ、物件購入でYou Tubeを参考にするのにしても「自分自身でその情報の真贋(しんがん)を見極める」といった心構えが大切なのかも知れません。
★荻原功太朗の業務について★
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