宇都宮市ではここ数年20階建て以上のタワーマンションと呼ばれるような物件が続々と分譲されています。
LRT沿線の駅東大通り(東宿郷エリア)では現在3棟ほど分譲マンションが建設中ですし、JR宇都宮駅西口の駅前にも高層タワーマンションが建設される計画もあります。
宇都宮市でも分譲される大規模タワーマンションはさらに増加していくことなるでしょう。
勢いを増すタワー系のマンションですが、ところで何階以上のマンションを「タワー」と呼んでもいいのかご存じですか?
じつはタワーマンション、自社の思い描いている基準、つまり階数やデザイン形状で「う~ん。階数が20階だからタワーでいいよね」なんてノリで企画販売するデベロッパーが名付けているだけ。
つまり明確な定義が存在していないんです。
そもそもが建築関連法規に「超高層建築物」の規定がありません。
建築基準法第20条第1項において「高さが60mを超える建築物において安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術基準に適合するものであること」とされていますので、そのあたりが一応の目安となるのかなと……
高さ60mだと、だいたい20階建てに相当します。
ですが階数が20階でも、真四角の団地形状型マンションに「タワー」と名前を付けるのは気が引けるでしょうから「階数20階建て以上で、ほっそりとした塔形状の外観を特徴とする居住用マンション」と考えれば良いかも知れません。
もちろん定義が存在していないイメージ先行の名称ですから、企画販売するデベロッパーが「階数は17階建だけれどフォルムがタワーっぽいから、○○タワーと名付けよう」としても問題はありません。
「私の住まいは、東口駅近くのタワーマンションですことよオホホ……」なんて言えば、それだけでハイソなイメージが増します。
そのようなブランド志向のある購入検討者からすれば「○○タワー」の名称が選択の基準になっているのかも知れません。
余談が長くなりましたが本題に入ります。
つい先日「中古タワーマンション」の購入希望のお客様が来社され、内見でご案内しました。
16階部分の部屋でしたので眺望もよく、お客様は眼下に広がる風景をニコニコと見下ろされていましたが、その時に「万が一、火事になったら一体どこに逃げればいいんでしょうね……」とポッリ。
確かに心配になりますよね。
火事についても心配ですがそれは後ほど解説するとして、例えば停電時。
頻繁にあることではないのですが(あっても困りますが)停電でエレベーターが止まってしまった場合、仮に20階の部屋に住んでいるとして、非常階段を利用して降りる分にはよいのですが、とても上る気にはなりませんよね。
東日本大震災以降のタワーマンションは、そのような有事にそなえて停電時においてもエレベーターを稼働できるよう、非常用電源を備えている(全てではありませんのでご注意を)マンションが増加しましたが、実はこの非常用電源ですが実際には役には立ちません。
そもそも、タワーマンションではなくても31mを超えるマンションには非常用エレベーターの設置が義務づけられています。
非常用エレベーターは耐火構造の壁で囲まれ、万が一火災などにより停電した場合でも非常電源で稼働できるようになっていますが、これは居住者用ではなく消火活動や救急搬送用を目的としたものです。
非常用電源は軽油などを燃料を利用して発電するエンジン方式ですから、燃料の備蓄が必要です。
管理会社により異なりますが、燃料は劣化しますからむやみにため込む訳にもいかず、概ね4時間程度発電できる程度を目安に備蓄されます。
非常用エレベーターの分は優先的に備蓄されますが、それ以外の居住者用であるエレベーター分も相応に備蓄されているはずなのですが、東日本大震災の直後において居住者用のエレベーターを稼働したケースは、その後の報告によると皆無でした。
「なんだソレは、意味がないじゃないか!!」と怒りたくもなりますが、続きをお読みください。
震災の直後に発生する停電は、復旧にどれだけの時間が必要か分かりません。
停電の原因により、時間もことなるからです。
2018年に発生した北海道胆振東部地震では、人口約200万人の政令指定都市である札幌市は大規模な低電に見舞われました。
速いところでも1日、復旧が遅れたエリアでは3日も停電状態が続いたようです。
さてここで考えて見ましょう。
復旧の見込みが立たない状態で、備蓄量4時間程度の燃料を一気に使用するでしょうか?
使い果たしてもライフラインの断絶により、補充の目途も立たない状態ですから万が一の救急搬送などに対応するため可能な限り温存するでしょう。
もっともそのような事態の反省を踏まえ備蓄量24時間型など、燃料のストック場所を確保して対応するタワーマンションも増加していますから、購入を検討する場合には営業マンに「非常用電源の燃料確保はどの程度?」と質問して確認するのが良いでしょう(この程度の質問に答えられない営業マンからは、購入してはイケマセン!)
続いて火災に関してです。
実は皆さん考えることは同じで、火災に関しての質問はよくあります。
話題にもなり、記憶の新しいところでは2017年6月14日未明に発生した、ロンドンにある24階建て高層公営住宅「グレンフェル・タワー」での火災事故があります。
鎮火後の現場検証による報告では火災発生は4階で、出火すると一気に上層階まで燃え広がり、タワー全体が焼き尽くされました。
日本でも盛んに報道されていたので記憶に残っている方も多いでしょう。
この火災事故で、少なくとも70人以上の尊い犠牲者がでる大惨事になりました。
ですが同様の火災が日本のタワーマンションで起こっても、ここまで被害(延焼)が広がることはないと言えます。
根拠は内外装の建材の違いです。
とくに高層建築に使用される建材の違いですが「グレンフェル・タワー」は外装が可燃素材で覆われており、建物の外部から燃え広がったと報告されています。
日本において高層建築物の外装は耐火構造と定められており、また室内も耐火性の高い不燃材で作られています。
端的に言えば、意図的に燃やそうと思っても燃えない建材です。
また建築基準法や消防法で火災報知器やスクプリンクラー、防火シャターなどの設置も義務づけられており、延焼の可能性が著しく低いのが違いとしてあげられます。
万が一出火しても、専用住戸もしくは最小限の影響で封じ込めてしまう造りですね。
世界的な基準からみても耐震・耐火性能に求められる基準が高いのが日本の高層建築物で、この点についてはあまり神経質にならくても問題ありません。
万が一の脱出用としては非常用エレベーターも、緊急避難時には利用できますしタワーマンションにはヘリポートも設置されています。
消防庁による「緊急離着場等設置指導基準」により、高さ31m~100mの場合は緊急離着陸場か緊急救助用スペースを、高さ100m超の場合は緊急離着陸場を設置しなければならないという設置基準が規定されているからです。
タワーマンションの屋上に設置されているヘリポートは、セレブがお忍びで部屋を利用するために設置されている訳ではありませんの悪しからず。
タワーマンションの購入に限らずではありますが、大切な財産である不動産を購入する場合には、うんちくも含めてこのような説明がスラスラとできる営業マンから購入するのが一番の対策かも知れませんね(良いところも悪いところも、きちんと説明をしてもらえると安心できます)
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