【相続対策の不動産購入に問題が!?路線価による相続計算は誤り?】実勢価格との差を最高裁が指摘する!?

2022年1月5日水曜日

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皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。



さて、『一物四価』と言う言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?



不動産には、四つの価格が存在することを表す言葉です。



まず私たちが仲介などで販売をしている実勢価格流通価格ともいいます)そして


公示価格_国土交通省が毎年1月1日時点の土地を算定した金額。一般の土地取引の指標とされています。


固定資産評価額_固定資産税の算定基礎となる土地価格の評価です。


相続税評価額_相続税の算定基礎として国税庁が算定します。どちらかと言えば路線価のほうが馴染み深い表現かもしれません。


つまり一物四価とは、一つの不動産にたいして、これら四つの価格が存在するという意味です。


購入時には実勢価格ばかりに目が行きがちですし、実際に取引される価格ですからそれで問題はないのですが、所有してからはそれ以外の価格が維持費などに大きく関わってきます。


固定資産評価額は実勢価格の7割程度が目安であるとされていますが、あくまでも目安です。


建物の固定資産評価は建築構造によりことなります。


例えば木造住宅は22年で原価償却(あくまでも税法上です)されますので、新築時から少しづつ評価額が下がっていくのですが、それにたいして土地の評価額は据え置き、もしくは上がり続けています(下がることはありません)


余談ですが、販売計画が頓挫したニュータウンなどは住宅もまばらであり、土地の買い手がいないことから投げ売り状態のような価格が実勢価格です。


そのような場所では固定資産評価額が実勢価格を上回る場合が多々あります。


実勢価格にたいした固定資産評価が高すぎる場合には、評価見直し時期に固定資産評価審査委員会(固定資産課税台帳に登録された価格に対する納税者からの不服を審査・決定する中立機関)に不服申し立てできる制度があることから、私も一度おこなったことがありますが……



「実勢価格と比較して固定資産税が高く、見直しを求める」というこちらの申請にたいして、読むだけで頭が痛くなるような、ちょつとした辞書ほどの厚みもある弁明書が市から提出されてきて、争うのも面倒くさくなり取り下げた経験があります。


どの市町村でもそうですが固定資産評価は大切な税収の根拠ですから、当初の評価方法に誤りがあろうがなかろうが、一度決定したものはおいそれと覆りません。


調べてみても、全国で固定資産税不服申し立ては相応の件数が行われているはずなのですが、固定資産評価審査委員会が市町村ごとに組織されているためなのか、情報がまとめられておらず、申請件数や結果について確認することができません(申請しても通らないことが発覚しないように、あえて情報を公開していない気がしますが……)


私の知る限りですが、納税者、つまり私たちの主張が認められたとの話を見聞きしたことが、まったくありません。


余談が長くなり恐縮ですが、本題に入ります。


相続が発生した場合に、土地の評価は相続税評価額を基準として計算し納税する。


この方法に手落ちはまったくありません。


ところが、国税局が「路線価による評価は適当ではない」として納税計算した金額では足りないとして、相続人による財産評価を否認し、追徴課税したことで裁判が提訴され、最高裁第3小法廷が当事者の意見を聞く上告審弁論を2022年3月15日に開くと決めたことで注目を集めています。


ちょつと分かりにくいでしょうから、細かく解説します。


まず国税庁が相続財産の算定基準のひとつとする路線価は、土地取引の目安となる公示地価の約8割です。


ですから実勢価格より低いのが一般的ですが、その価格差を利用して節税目的で不動産を購入する富裕層が多くいます。


それ自体は合法ですから、まったく問題ないのですが……


今回の事案は実勢価格から大きく乖離(かいり)した路線価を基にした相続財産の評価が問題とされています。


つまり相続税対策として、節税目的で不動産購入した事案にたいして最高裁がどのように判断を下すかです。


事件の概要ですが


原告は、故人が銀行から融資を受けて購入した不動産の相続人です。


すでに一、二審の判決で判決は下されていますが


事実認定によると、原告は東京都内と神奈川県内のマンション計2棟を相続した際、路線価に基づいて財産を約3億3000万円と評価しました。


銀行からの借り入れもあったため、相続税額を「0」として申告しました(もちろん間違いではありません)


もともと故人が購入した価格は2棟で約13億8700万円でした。


ここで注目して戴きたいのが、路線価計算では約3億3000万円ですが、実勢価格は13億8700万円だということです。


差額が8割どころじゃない。


実勢価格が高騰すると、このような現象がおこりうるのです。


実際に裁判で証拠提出された国税当局の不動産鑑定による評価も2棟合計で約12億7300万円です。


不動産市場は生き物ですから、日々、価格は動いているといえます(もっとも株のように毎日小刻みに変動するようなものではないですが)


国税局は相続人の申請にたいして「路線価による評価は適当ではない」として約3億円を追徴課税したことにより、相続人が不当であるとして訴えたのが、事の起こりです。


なんせ、相続税が「0」「3億」かです。


しかも固定資産評価額による相続税計算もきちんとしているのに、追徴課税がきた。


そりゃ裁判もしたくなります。


ところが一審・二審とも国税局が正しいと判決しているのです。


一審の東京地裁判決では、路線価に基づいて申告した評価額について「不動産の客観的な交換価値を示しているかは相応の疑義がある」と指摘しています。


たしかに固定資産税評価額は、実勢価格よりも低いのが普通ではありますが……


裁判所は「特別な事情がある場合には路線価以外の合理的な方法で評価されることが許される」として、課税処分は妥当だと判断し、二審の東京高裁判決も判断を維持しました。



先ほど解説したように、最高裁が意見聴取するのは来年3月15日ですが、個人的には一審・二審の判決を、最高裁が維持する可能性が極めて高いかなと……


考えて見れば国税庁が財産評価基準の在り方を示している『財産評価基本通達』6項では「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」との例外規定があるのですね。


ですから紹介した国税局の対応も無理難題ではなく、通達の手順を遵守して行われているわけです。


不動産業界を含め税理士などがこの裁判に注目している理由は、特例である財産評価基本通達_6項の規定適用について司法判断が下される可能性があるからです。


この特例の規定適用が最高裁で示された場合、不動産購入による相続税対策の根幹が、一気に崩れる可能性があります。


もっともこのような判例などの情報を持ち、適切にアドバイスできる私たちであればそれほど大きな影響を受けないのですが、建築により借入負債を増加させ、相続税対策であると言い切って営業展開している大手の会社などは、ビジネスモデルを根底から見直す可能性が出てくるかもしれません。


この記事の続編は、最高裁判断が示された時期を目安としてお届けしたいと思います。


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