ブログでも何度か解説していますが、2024年の登記義務化に向けて、政府は着々と外堀を埋める準備を進めています。
不動産登記の義務化は、現在においても増え続けている放置空き家も含めた「所有者不明土地」の問題を解消することが目的です。
ブログを書くにあたり、この所有者不明地が、どれくらいあるか調べてみました。
一般財団法人_国土計画協会内に設けられた「所有者不明土地問題研究会」による、2017年12月の最終報告書によると、約410万ヘクタールでした。
410万ヘクタールと言われても、ピンとはきませんよね。
ちなみに九州本島の面積が約367万ヘクタールです。
つまり……九州本島よりも大きな面積の土地所有者が不明なんです。
さらに……
このまま放置を続けると
なんと2040年には720万ヘクタール、つまり
「北海道本島に近い面積が所有者不明地になる!!」と報告書で試算結果を公表しています。
悠久の自然に囲まれた、でっかいど~北海道ですよ。
それとほぼ同じ面積が所有者不明になるとは……
さて、本題に入ります。
日本に存在する土地や建物の全てには、国有地や市有地なども含め、必ず所有者が存在します。
つまり誰の持ち物でもない土地や建物は存在しない訳ですが、土地や建物に名前を書く訳にはいきませんから、公に所有者を分かるようにしてあげないと勝手に空き家に住み着いて「ここは、俺の家だ!!(これを第三者占有といいます)」なんて人が出てきてしまうのです。
国は不動産を重要な財産であるとしてその価値を保証していますが、それが登記であり、その登記を管理しているのが法務局です。
ですから全ての不動産には地番(建物の場合は家屋番号)が割り振られ、登記簿が存在しています。
あまり登記簿に馴染みのない方もおられると思いますから、簡単に説明しておきます。
基本的に登記簿は表題部・権利部(甲区)・権利部(乙区)で構成されています。
表題部には所在地(地番)が記載されています。
つまり場所ですね。
そして、権利部(甲区)には、所有者の住所と名前が記載されています。
権利部(乙区)には所有権以外の権利、分かりやすく説明すると、住宅を購入するときには大半の方が住宅ローンを組まれるますが、銀行はその不動産に「お金を貸していますよ」ということを誰が登記簿を見ても分かるように記載します(この場合は抵当権といいます)
乙区に記載される権利には、抵当権以外にも賃借権や質権、根抵当権など様々な種類が存在しますが、長くなるので割愛します。
話を戻しますが、登記簿は誰もが自由に、どの場所でも所有者の許可なく法務局で申請し取得することができますが、これも国が不動産を保証する意味で、場所や大きさ、所有者やその不動産を担保にお金を借りているかどうかを分かるようにするためです。
ですから、登記簿に記載されている内容は正しくなければならない。
当然ですよね、そうでなければ登記の意味がなくなります。
ところが……
この甲区(所有権)に記載されているはずの所有者が正しくない。
その数はなんと、622,608筆中(不動産の数は「筆」と表現します)125,144筆、つまり約20.1%になります。
つまり5件に1件が、所有者不明なんですね。
「所有者不明?」でも、「所有権のところに名前が記載されているじゃないか」と、お思いになるでしょう。
確かに名前が書いてあるのですが、その住所に訪ねていっても住んでいない。
郵便物を送付しても、宛先不明で返送されてくる。
登記簿に記載されている方が、すでにお亡くなりになっている。
なぜこんなことになっているのでしょう?
放置すれば2040年には全国津々浦々の合計面積が北海道と同等の大きさで所有者不明となり、治安悪化や国土荒廃、土地取引の停滞等が起きてしまうのにです。
その理由が、所有権の登記が義務ではなかったからです。
法格言に「権利の上に眠る者を保護せず」なんて言葉もありますが、これは「所有権を登記しておかなければ、悪い人に不動産を乗っ取られても自業自得だからね。国は、そのような人は保護しませんよ」と言うほどの意味です。
多少難しい表現になりますが、登記をしなければ所有権を主張できませんから、第三者にたいする対抗要件を具備しません。
ですから、万が一他人に占有されても対抗要件をもたないなどの不利益はあっても、メリットがありません。
なのに、なぜ移転されていない所有者不明地がこれだけの面積に及ぶのか?
それは所有者不明地の多くは、「相続未登記の連鎖がネズミ算的に拡大した結果」だからです。
相続未登記の理由には、「面倒くさいから」「知らなったから」なんて理由も一部では存在しているようですが、多くは相続で揉めているからです。
「相続」で揉めることを、士業の間では「争続(あらそいぞく)」なんて言葉で表現しますが、相続が争続化する原因のほとんどが、相続対策を生前から行っていないことです。
特に、相続財産が現金や有価証券など按分しやすいものではなく、不動産に偏っている場合には争続化しやすいと言われています。
専門家の間では「現金と不動産のバランスが悪い」と表現します。
一筆の不動産を複数の人で所有する場合には共有持ち分となり「法務甲太郎_持ち分5分の1」などと権利部(甲区)に記載されますが、あくまでも不動産全体の中において持ち分を所有しているに過ぎず、「ここからここまでは私の敷地だからね!!」なんてことは言えません。
だからモメるのです。
「現金」を相続してるのであれば、取り分で揉めることはあっても、1円単位まで分けることができるので比較的に問題があっても解決しやすいのですが、不動産の場合には現金化(売却)するにも共同持ち分全員の同意が必要です(実際は持ち分だけでも売買できますが、争続化している持ち分を購入する人はいないでしょう)
つまり争族化していると、誰かが反対していると売却ができません。
さらに相続人が亡くなった場合には、浮いたいた相続持ち分が相続されて細分化されます。
そうなると、解答のない算数の問題みたいに迷宮化して手が付けられなくなります。
不動産において所有者が誰が誰やら分からないぐらいにもつれた状態、つまり「相続未登記の連鎖がネズミ算的に拡大した結果」です。
とはいえ、登記義務化はカントダウンに入りました。
★荻原功太朗の業務について★
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