4月に入り新年度に入りました。
宇都宮市でも、「新年度」にふさわしく、新たな計画や事業の実績報告が随所に見受けられます。
先日のコラムでも紹介した、栃木県宇都宮市西川田地区の「総合スポーツゾーン西側」市道に計画された円形環状交差点(ラウンドアバウト)が30日に開通しました。
栃木県内では2カ所目、市街地では初の設置となり、減速した車が次々と合流し、サークルの中を周回している姿は、なかなかに面白いものです。
この交差点は環道を走る車両が優先で、通行車両は手前で減速・徐行して安全確認してから進入し、時計回りでサークル内を走行して、サークルから出る時には左折合図を出しながら離脱します。
まだ不慣れな方が多いのか、左折合図を忘れる車両や、合流のタイミングが上手くいかず手前で立ち往生している姿も見受けられますが、すぐに慣れていくでしょう。
地元のランドスケープとして愛されるようになって欲しいと思います。
また、次世代型路面電車(LRT)沿線の平出町と下平出町に「トランジットセンター(TC)ゾーン」として整備する都市公園の都市計画素案がまとまり、具体的な内容についての情報が公開されました。
交流施設など3.6ヘクタール 宇都宮市LRT「TCゾーン」素案(下野新聞)
名称は「東部総合公園」と決定され、区域はLRT停留場北側の約3.6ヘクタールとされました。
TCはLRTとバスや自転車などとの乗り換え施設。TCゾーンは民間の手法を活用し、TCと一体的に整備される予定となっています。
施設としては、「スマートシティ宇都宮」らしく、「テクノロジーと自然調和」を意識して、3人制バスケットボールやスケートボードといった都市型スポーツを基本とした交流施設のほかにも、農産物の直売所、カフェやレストランなどを想定して計画を進める予定となっています。
このように新年度として新しいプロジェクトが立ち上がり活性化しているわけですが、不動産に関しても新しいプロジェクトが動き出しています。
「住宅ストック市場活性化への取り組み」です。
住宅ストック市場、日本においては「中古市場」と表現した方が通りもよいかも知れません。
現在、日本における住宅新築業界は極端な2極化が進んでいます。
いわゆるローコストと高性能・高品質住宅です。
この傾向はコロナ禍以降ますます加速化し、会社の規模でも異なりますがIT対策に順応し、SMSなどを駆使しながら購入のしやすい価格帯でデザイン性などに特化したローコスト住宅が業績を伸ばす一方、ZEH(ゼッチ)やLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)など高気密・高断熱・高性能住宅建築での差別化を図り業績を伸ばす会社です。
このいずれにもよらない中途半端な建築会社は、長引くコロナ禍で業績を悪化させています。
ローコストと高性能の二極化。
極端な構図でありますが、どちらが良い・悪いということはありません。
見た目お洒落で購入価格が低い住宅を選ぶも、適切なメンテナンスをほどこせば「100年」持つ住宅を選ぶも購入者の価値観次第です。
ですが、忘れてはならない建築価格。
高性能住宅は目に見えない部分に費用がかかりますが、それは当然のことです。
目に見えない部分にも手を抜くことなく高性能建材を多用し、経年変化を受けづらい部材を選別して使用するのですから費用が高くついてあたりまえです。
「高性能の家は高くつく」そのかわりに「快適な住環境で、家も長持ちする」ということです。
高性能住宅もクロスを張ってしまえば内部構造を見ることも出来ませんから、暖房光熱費にかかる費用や居室内における温度ムラがないなど、体感しなければ分からないですし、住宅の見た目で判断することも出来ません。
ローコストや高性能住宅、このどちらにおいても、入居当初ピカピカであった住宅が経年劣化でそれなりになります。
一昔前から、日本の住宅寿命は30年前後と言われてきました。
今でも年配者の多くは、この言葉を疑いもなく信じ込んでいます。
税法上の減価償却期間も、木造22年、マンションなどの鉄筋コンクリート造で47年とされています。
もちろん税法上の減価償却は建物寿命と一切、関係がありませんが、日本における「木造住宅の寿命30年説」も、この税法上の減価償却期間が根拠とされているのかも知れません。
この考え方は高温多湿という日本の自然環境の中で、構造躯体の多くが「木」であるということと、今では普通である通気工法や防湿防水シートの普及が進んでいない時代の建築技術によるものであり、ローコスト住宅はさておいても、高気密・高断熱・高性能住宅であれば、「適切なメンテナンスをほどこす」という前提があるものの、「100年住宅」はあたりまえになっています。
躯体が「石」であることや気候の違いはありますが、例えばイギリスでは「築100年超」住宅はあたりまえで、築200~300年の住宅も適正な評価で売買されています。
そこで、問題となるのが日本における中古市場です。
私たち不動産業界の人間はインスペクションの斡旋なども含めて、住宅性能の違いによる「評価」も理解し、実際の査定においても「適正評価」するのですが、高性能住宅であっても「金融機関」が、貸してくれません。
「築30年……いや~申し訳ないのですが建物の評価は出来ませんから、ご希望する金額はとてもとても」
こちらがどんなにインスペクション記録(建物現況調査書)や、建築当時の構造図面、住宅オーナーが行ってきたメンテナンス記録を提示して言葉を尽くしても
「当行の審査基準から外れていますので」と、言われてしまいます。
納得して高額な建築費で高性能住宅を建築し、その後も大切にメンテナンスしてきた住宅。
私たちも適正に評価し、査定額を算出します。
ところが、金融機関が評価してくれない。
結局は中古市場において、「高性能住宅を購入する時には自己資金が潤沢になければ購入出来ない」という構図が出来上がっています。
このような状況で、脱炭素化に貢献するLCCM住宅や、高性能を前提として創エネシステム(太陽光発電)を搭載条件とするZEH住宅など、あたりまえに建築費が高くなる住宅建築を推奨する前に
「ストック市場(中古市場)における金融機関対策が、先だろうと!!」と、様々な不動産業界の会合などで私が声を上げてきたことと関係はないと思いますが
やっと、国交省も重たい腰をあげました。
それが「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」です。
直接の対応は「国土交通省住宅局住宅生産課住宅瑕疵担保対策室」になります。
取り組み概要としては以下のように公表されています。
【事業概要】
【維持管理やリフォームの実施などによって住宅の質の維持・向上が適正に評価されるような、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みの開発・普及等に対する支援を行う事業】
これをきっかけに、良質な住宅が適正評価(特に金融機関)され、ストック市場が活性化されることを願っています。
★荻原功太朗の業務について★
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