先日、宇都宮市のLRT西側延伸計画は、当初見込みの約400億円から約700億円へと事業費が1.7倍に膨らむことが明らかになり、詳細を当ブログでも触れました。
過去ログ→【宇都宮市のLRT西側延伸は物価高騰で事業費1.7倍に!】代替案も真剣に議論するべきタイミングか!?
着工はこれからということもあり、世界的な物価高騰と国内の深刻な人手不足で、さらなる事業費拡大が予想されています。
そして、「泣きっ面に蜂」といった表現が適切のような、開発計画そのものを見直しに追い込みかねないさらなる逆風が吹き始めています。
最近、日本の長期国債の利回りが急激に上昇しているのをご存知でしょうか?
→超長期国債「衝撃的な弱い入札」なぜ? 30年・40年債利回り過去最高(日本経済新聞)
あまり普段の生活で意識することはないかもしれませんが、これが私たちの暮らす宇都宮市の街づくり、特にLRT西側延伸計画に大きな影響を与える可能性があるのです。
長期金利の上昇が意味するもの
ここ最近、日本の30年国債の利回りは過去最高の3%に迫る勢いで上昇し、40年債に至っては3.5%を超える水準まで上昇しています。
「国債の利回り?それが何の関係があるの?」と思われるかもしれませんね。
実はこれ、宇都宮市や栃木県が大型プロジェクトを進める際の借入コストに直結する問題なのです!
過去5年間の激変 - 「金利のない世界線」から現実へ
振り返ってみれば、わずか数年前までの日本は「金利のない世界線」とも言える特異な環境にありました。
過去5年間の30年国債の金利推移を見てみましょう。
- 2020年:0.53%
- 2021年:0.67%
- 2022年:1.13%
- 2023年:1.50%
- 2024年:2.03%
- 2025年5月:2.49%(年初来平均)
そして今や、直近では3%を超え、ものすごい勢いで上昇し続けています。
つまり、LRT西側延伸計画が立案・検討されていた数年前と比べると、金利水準は5倍以上に跳ね上がっているのです!
この「金利のない世界線」では、自治体や国は、多額の借金をしてもほとんど金利負担がなく、財政の拡大余地がいくらでもあるように錯覚していました。
金利負担がなければ、大型開発計画の実行も比較的容易だったのです。
しかし、その世界線からは既に離脱し、私たちは今、「金利がある普通の世界線」に戻りつつあるのです。
LRT西側延伸計画の現状と金利上昇の影響とは?
現在、宇都宮LRTの西側延伸計画は当初予算が約400億円と見積もられていましたが、700億円まで膨れ上がっています。
この予算増大だけでも大きな課題なのに、ここにきて新たな逆風が吹き始めています。
それが冒頭で触れた長期金利の上昇です。
LRTのような大型インフラ事業は、通常30年から40年といった長期間の借り入れで資金を調達します。
金利が1%上昇するだけでも、700億円規模のプロジェクトであれば、その金利負担の増加は計り知れません。
例えば、仮に30年の借入で金利が1%上昇すると、単純計算でも追加で数十億円の金利負担が生じることになります。
さらに重要なのは、LRT計画が立案された「金利のない世界線」の時代には、事業の採算計算もその前提で行われていた可能性が高いということです。
当時は金利負担をほとんど考慮せずに計画を進められる環境だったのです。
街の持続的発展と現実を受け入れる必要性
LRT西側延伸は、宇都宮市が抱える街の課題を解決し、都市として持続的な発展・維持に必要不可欠なインフラです。
人口減少・高齢化社会において、コンパクトな街づくりと公共交通ネットワークの充実は避けて通れない課題です。
自家用車に依存した現在の都市構造では、将来的に市民の移動手段が確保できなくなる恐れがあります。
LRTはその解決策の重要な一手であり、環境負荷の低減や中心市街地の活性化にも貢献することでしょう。
しかし同時に、私たちは新たな経済環境の現実も受け入れなければなりません。
日本のインフレ率は3.6%を超え、米国よりも高い水準になっています。
長期間続いた「ゼロ金利時代」は終わり、金利負担がある世界に戻り始めています。
これは日本経済全体、そして宇都宮市の財政運営にとっても大きな転換点です。
過去30年間の超低金利を前提とした財政計画や事業計画は、大きな見直しを迫られるでしょう。
今こそ現実的な議論開始を!
LRT事業の負担者は国、栃木県、宇都宮市の3者です。
国の財政状況は周知の通り厳しく、日本の政府債務はGDPの2倍以上という状況です。
栃木県も宇都宮市も、人口減少や高齢化による税収の伸び悩みや社会保障費の増大に直面しています。
そのような状況の中で、予算が当初の見積もりから300億円も増加し、さらに金利負担も増大するとなると、この3者が本当に耐えられるのか、真剣に考える必要があるでしょう。
もし事業費や金利負担の増大により、市や県の財政が圧迫されれば、他の行政サービスへの影響も当然避けられません。
例えば:
- 道路や橋梁などの既存インフラの修繕・更新の遅れ
- 教育や福祉サービスへの予算削減
- 市民税や県民税の増税の可能性
こうした影響は、私たち市民の生活に直接関わってくる問題です。
長期的な街の維持発展のための投資ももちろん重要ですが、目先の生活が成り立たなければ元も子もありません。
そのためLRTのような重要なインフラ整備は、長期的視点で取り組む必要があります。
その過程で環境の変化があれば、柔軟に対応していくことも大切です。
現在直面している経済・金融環境の変化は、一時的なものではなく構造的な変化である可能性が高いです。
また、長期金利の上昇傾向はしばらく続くというのが多くの専門家の見立てです。
だからこそ、LRT西側延伸の必要性を認めつつも、その実現方法や規模、タイミングについて、より現実的な議論が必要ではないでしょうか。
まとめ
宇都宮の持続的発展のために欠かせないインフラとなるLRT西側延伸計画。
その重要性は理解しつつも、計画への過度な執着が最大のリスクになりかねないと感じています。
建築コストの増加だけでなく、「金利のない世界線」から「金利がある普通の世界線」への移行という新たな現実を直視すれば、当初の計画をそのまま進めることは、ますます不確実になっています。
特に懸念されるのは「時間の浪費」です。
街に迫る課題は待ってはくれません!
計画が立案された時の経済環境と現在の環境は根本的に異なります。
それにもかかわらず、同じ計画にこだわり続けることで、貴重な時間と財源が浪費される恐れがあります。
重要なのは目的(持続可能な公共交通の整備)であって、手段(LRT西側延伸)ではないはずです。
変化する経済環境に柔軟に対応し、限られた財源を最大限有効に活用する方法を、今一度市民全体で考え直す時期に来ているのかもしれません。
今回の内容が、皆さまの考えるきっかけになれば幸いです🙌
★荻原功太朗の業務について★
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