皆さんこんにちは!
いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。
昨今、政府が進めるライドシェア解禁の議論が活発化していますが、宇都宮市の都市交通戦略ではこの点についての言及がほとんど見られません。
それだけ、宇都宮市の計画には、ライドシェアが普及することは想定されていないのだと思います。
しかし、現実は現政権のキャスティングボートを担う存在となっている、日本維新の会が先月、完全な規制緩和となる「ライドシェア全面解禁」の法案を提出しているような状況です。
経済同友会もライドシェアの全面解禁を後押ししており、経済界からも改革への圧力が日に日に高まっています。
トランプ政権になり、外圧も強まり、今の国内の政治情勢を見ても全面解禁への流れが加速しているのは明らかでしょう。
そこで今回は、もし日本でライドシェアが全面解禁された場合、そして将来的に自動運転技術が実用化された場合、宇都宮市の交通環境にどのような影響が出るのか、そしてどのエリアがプラスまたはマイナスの影響を受ける可能性があるのかを考察してみたいと思います。
宇都宮市の交通戦略とライドシェアの位置づけ
宇都宮市の「第2次宇都宮都市交通戦略(後期計画)」では、「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」の形成を基盤とした「スーパースマートシティ」を目指しています。
この中で、LRT(ライトライン)の西側延伸やバス路線の再編、地域内交通の充実など、公共交通を軸とした交通網の整備が中心に据えられています。
しかし興味深いことに、交通戦略には、規制緩和への圧力が強まっているライドシェアについては具体的な言及がありません。
この点については「MaaS」や「モビリティサービス」という形で一部触れられているものの、海外で普及しているUberやLyftのような配車アプリを活用した一般ドライバーによるライドシェアサービスについての方針は明確になっていません。
また、「安全運転支援技術等の公共交通への活用」という項目はあるものの、完全自動運転車が普及した未来の交通体系についても具体的な言及は多くありません。
ライドシェアの現実的な普及可能性を考える
仮に国の方針で、ライドシェアが全面解禁された場合、実際にどのようなエリアで普及するかについては、単純に「公共交通が不足しているから普及する」という図式では捉えきれない複雑さがあります。
ライドシェアは需要と供給の両面が成立して初めて機能するサービスだからです。
海外の事例を見ると、ライドシェアは都市部や人口密度の高いエリアから普及する傾向があります。
これは、ドライバーとなる人が多く存在し、かつ利用者も一定数確保できるためです。
一方で、人口が少ない過疎地域では、そもそもドライバーの数が限られ、配車リクエストに対応できないという課題が生じやすいのです。
国も後押し!自動運転技術がもたらす可能性
さらにここへ来て、急速に伸びそうなのが自動運転技術の可能性です。
国も予算をつけて、自動運転タクシーを後押ししています!
→無人バス・タクシーに資金支援 政府、全国10カ所で(日本経済新聞)
現在のライドシェアの最大の制約は「ドライバーの確保」ですが、自動運転技術が実用化されれば、この制約は取り除かれます。
人が運転しない完全自動運転のロボタクシーや自動運転バスが実現すれば、ライドシェアと似たようなオンデマンドの移動サービスが、ドライバー不足に悩まされることなく提供できるようになります。
自動運転技術は、宇都宮市の交通戦略にも一部取り入れられており、「栃木県ABCプロジェクト」として自動運転バスの実証実験が行われています。
これは将来的に地域内交通や路線バスの無人運転化につながる可能性を秘めており、交通過疎地域での移動手段確保にも大きな役割を果たすかもしれません。
では、実際にライドシェアや無人運転タクシーが普及するようになると、街にどのような変化が起こるのでしょうか。
現時点で考えられるプラスエリア、マイナスエリアの可能性を考えてみましょう!
プラスの影響が期待できるエリア(現実的視点から再考)
都心部と周辺の住宅地: JR宇都宮駅や東武宇都宮駅の周辺エリア、そしてその周囲にある住宅地は、人口密度が高く、ドライバーと利用者の両方が確保しやすいため、ライドシェアが最も普及しやすいでしょう。特に夜間のバス運行が少ない時間帯や、飲食店での飲酒後の帰宅など、タクシー需要が高い場面で利用されることが予想されます。将来的に自動運転タクシーが実用化されれば、深夜帯でもより安定したサービス提供が可能になるでしょう。
ライトライン沿線の住宅地: ライトライン沿線もライドシェアや自動運転サービスの恩恵を受けるエリアとなり得ます。ライトラインと組み合わせたラストワンマイル移動手段として利用されることで、「駅から少し離れた場所」の価値が向上する可能性があります。自動運転の小型シャトルがライトライン停留場から放射状に運行する未来も考えられます。
中規模の需要がある郊外部: 環状線の内側エリアの住宅地は、完全な過疎地域ではなく一定の人口があるため、ライドシェアが成立する可能性があります。特に若い世代や子育て世代が多いエリアでは、デジタルリテラシーも高く、新しいサービスへの適応も早いでしょう。自動運転技術が実用化されれば、人口密度がそれほど高くないエリアでもサービス提供が可能になります。
自動運転なら過疎地域にも恩恵が: ライドシェア単体では普及が難しい宇都宮市の郊外(人口密度の低いエリア)篠井地区や上河内地区などでも、自動運転バスや自動運転タクシーが実用化されれば、人口密度が低くてもサービスが成立する可能性があります。運転手の人件費がなくなれば、少ない利用者でも採算が取れる可能性が高まるからです。
マイナスの影響を受ける可能性のあるエリア(現実的視点から再考)
過疎地域・極端に人口密度の低いエリア: 空き家が増えているような郊外の人口密度が極めて低いエリアでは、皮肉にもライドシェアが最も必要とされる一方で、ドライバー不足によりサービスが成立しにくい可能性があります。ただし、これは現在のドライバー型のライドシェアの話であり、将来的に自動運転技術が普及すれば、ドライバー不足の問題は解決し、過疎地域でもオンデマンド型の移動サービスが実現するかもしれません。
タクシー業界への影響: 特に都心部ではタクシー事業者への影響が懸念されます。タクシー需要の高いJR宇都宮駅や東武宇都宮駅周辺では、価格競争力のあるライドシェアにタクシー需要が流れる可能性があります。自動運転技術が普及すれば、タクシー業界はさらなる変革を迫られるでしょう。一方で、既存のタクシー会社が自動運転タクシーを導入することで、新たなビジネスモデルを構築できる可能性もあります。
バス路線との競合: 幹線バス路線ではなく、利用者が少ない支線バス路線では、ライドシェアとの競合で経営がさらに厳しくなる可能性があります。一定の利用者がいるものの、採算ラインを下回っているような路線が特に影響を受けるでしょう。ただし、これらの路線も将来的には自動運転バスに置き換わることで、運行コストを抑えながらサービス維持が可能になるかもしれません。
ライドシェアと自動運転がもたらす不動産価値への影響
これらの新しいモビリティサービスは、不動産市場にも影響を与える可能性があります。
恩恵を受けやすいエリア: 駅やバス停から少し離れていても、ある程度の人口密度があるエリアでは、ライドシェアがラストワンマイルの移動手段として機能し、不動産価値の向上に寄与する可能性があります。例えば、ライトライン停留場から徒歩15〜20分圏内の住宅地などが該当するでしょう。自動運転技術が実用化されれば、この効果はさらに広い範囲に及ぶかもしれません。
恩恵を受けにくいエリア: 極端に人口密度が低く、ドライバーの確保が難しいエリアでは、ライドシェアが普及しても実質的な交通利便性の向上につながらず、不動産価値への影響も限定的かもしれません。ただし、自動運転技術が十分に普及すれば、このようなエリアでも移動の選択肢が増え、不動産価値の下支え要因となる可能性があります。
駐車場需要への影響: 特に都心部では、ライドシェアや自動運転車の普及により、駐車場の需要が減少する可能性があります。JR宇都宮駅周辺などの商業地では、駐車場用地の転用が進み、より高度な土地利用が進む可能性もあります。
ライドシェアと自動運転がもたらす都市構造の根本的変化
ライドシェアや自動運転技術の普及は、単に移動手段が多様化するだけでなく、宇都宮市が目指す「ネットワーク型コンパクトシティ」の在り方そのものに大きな変革をもたらす可能性があります。
現在の都市交通の考え方は、拠点に都市機能を集約し、それらを公共交通でつなぐというものですが、ライドシェアや自動運転タクシーのような柔軟な移動手段が普及すれば、必ずしも公共交通沿線に居住する必要性が低下します。
「駅から徒歩圏内」という価値観が変化し、郊外の住宅地や農村部でも快適に暮らせる環境が整えば、住民の居住地選択の自由度は大きく高まるでしょう。
一方で、このような変化は公共交通の利用者減少を招き、ライトラインやバス路線の経営にも大きな影響を与える可能性があります。
特に多額の投資が必要となるLRT西側延伸については、将来的な利用者数の予測を慎重に行わざる得ない状況となり、開発への大きな逆風となるでしょう。
最も重要なのは、新しい規制緩和や交通技術の普及が「まちのかたち」そのものを変える可能性があるという点です。
現在、宇都宮市が目指しているコンパクトシティ構想は「拠点」と「ネットワーク」という二つの要素が基本となっていますが、ライドシェアや自動運転タクシーのような「点と点を直接結ぶ」交通手段が普及すれば、必ずしも路線に沿った開発が進まなくなる可能性があります。
これは都市の拡散を招くリスクもある一方で、多様な居住スタイルを可能にするという利点もあります。
宇都宮市としては、ライドシェアや自動運転技術を敵視するのではなく、むしろこれらの新技術を既存の都市交通戦略の理念と融合させる柔軟なアプローチが求められるでしょう。
例えば、拠点内での移動は自動運転シャトルで、拠点間の移動はライトラインで、拠点外の移動はライドシェアでという具合に、各交通手段の特性を生かした役割分担を明確にすることで、持続可能な交通体系を構築するのもひとつのアイデアです。
いずれにしても、国のさじ加減ひとつで、宇都宮市のまちづくりそのものに大きな激震が起こりかねない状況となっています。
不動産マーケットも、都市計画が大きく変更になるようなことがあるなら、大きな影響を受けるのは間違いありません。
その意味でも、ライドシェアの全面解禁がどのように推移するかには注視が必要でしょう。
今回の内容が皆さまのお役に立てば幸いです🙌
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