プレジデントオンラインに不動産業者としては興味深い記事が掲載されていました。
詳細な内容は上記のリンク先より記事をお読み戴ければと思いますが、要約すれば築42年・3LDKの分譲マンションを売却し、その資金と退職金と合わせ、新たに融資を受けず新築マンションに住み替えようとした計画が頓挫して困り果てたという内容です。
記事文中の方には気の毒ですが、ところどころの内容が、不動産業としては「ツッコミ」どころ満載の記事です。
まず最初の仲介業者が「専任媒介」で依頼したのに積極的に販売活動を行ってくれなかったのがつまづきの1歩目です。
もっとも、1件目の依頼先で「失敗」することはよくあるので、これは良いとしても
その後、一般媒介で他社に依頼して内見客も訪れますが……
「駅までの距離が遠い」「旧耐震」である「修繕積立金の積立額が少ない」などの理由でなかなか販売がうまくいきません。
ちなみに旧耐震とは、1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準のことで、それ以降の耐震基準は「新耐震」と呼ばれています。
旧法では震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されていますが、新耐震では震度6~7にたいして倒壊しない程度に引き上げられています。
つまり耐震性能が引き上げられている訳です。
予断になりますが「住宅ローン控除」を受けることができる条件も、新耐震以降の建物とされ、それ以前の建物でも建築士に「新耐震並の耐震性を有している」とする適合証明書を発行してもらえれば適用になります(強度不足により、必ずしも適合する訳ではありません)
話を続けますが、販売が思うようにいかないことから大幅に値下げをして、やっと購入検討者が表れますが……
「旧耐震で住宅ローンの審査が降りなかった」との理由で購入見送りされます。
売れるものと見込んで、すでに住み替え先のマンションを契約しており、残金支払日も目前に迫っているので困り果て、融資相談に駆け回りますが66歳では年齢制限で貸し出しが受けられずに苦戦し、ようやく完済年齢80歳の大手金融機関が融資を引き受けてくれます。
借入額は2000万円で借入期間は14年、マンションが売却できればある程度は繰り上げ返済できますが、それまでの返済額は月々、約13万円です。
おそらく新築マンションの販売先には「現金購入」としていたのだろうと思いますが、そのため売買契約には万が一、融資承認が得られない場合に無条件で白紙となる「ローン条項」もつけておらず、また住み替えであるのに万が一、売却できなかった場合に契約解除できる「買い替えの特約」もつけていませんでした。
この場合、新築マンションの販売業者に落ち度はありません。
当然に資金計画は聞いているでしょうが、あくまでも「売り・買い」を切り離しているのですから、先述した特約を設ける必要はありません。
ツッコミどころ満載としたのは、このような場合、売り買い連動して計画しなければ「ドツボ」にはまる可能性が高いからです。
このような住替えの場合には、万が一、売却できなかった場合の「買い取り保証」を付けてもらい、その最低保証額を基準として資金計画を考えるのが基本です(弊社では、このように買取査定も併せてご提案しています)
そもそも査定金額はあくまでも「概ね3か月以内に売れるだろう」という目安の金額です。
ですから「必ず売れる」という保証はありませんし、業者ごとに査定方法も異なるので金額に「差」があるのも当然です。
また取扱物件欲しさに、極端な「高値」で査定してくる業者もありますが、このような業者に依頼するのは論外です。
物件には「相場」が存在し、特段の事情でもない限り相場を度外視した高値で売れることはありません。
また「旧耐震だからローンが受けられない」というのも不思議です。
確かに担保掛目は低くなりますが、住宅ローンの場合、重要視するのは人的属性です。
つまり担保以外の勤務先・年収・借入状況などを総合的に判断(もちろん担保査定も)して審査します。
ですから、まったく借りられないなんてことはありません。
結局のところ、このような総体的な説明をしてくれ、リスクヘッジの提案をしてくれる営業マンと出会えなかったというのが一番の問題なのかも知れません。
★荻原功太朗の業務について★
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。