先日、ダイヤモンド・オンラインに掲載されている記事を見た方から質問を受けました。
掲載記事は下記のリンク先から確認することができます。
→新築戸建ては「8割が欠陥住宅」、施工不良が相次ぐ深刻な事情とは(ダイヤモンド・オンライン)
記事を執筆したのは「株式会社さくら事務所」という建物現況調査、つまりホームインスペクションを主業として全国展開している会社の創業者ですが、何とも刺激的なタイトルです。
詳細な内容についてはリンクした記事に譲りますが、ようするに自社で行っている「新築工事チェックサービス」という、施主からの要望によりセカンドオピニオンのような形で、所属するインスペクター(既存住宅の診断士)が新築工事の各工程におけるチェックを行っているが、自社でチェックした8割が欠陥住宅であったとの内容です。
記事全文を読むには無料もしくは有料の会員登録が必要ですので、概略を補足しておきます。
記事には実際に診断をして欠陥指摘を行った部位の写真が豊富に掲載されていますが、それらを見ると補強金物の付け忘れや耐力壁に構造用合板釘が打たれていないなどの状態が確認できます。
また基礎と土台を緊結するアンカーボルトが入っていないなどの写真も載せられていました。
その他にも断熱材の充填不足、屋根板金との取り合い部における防水処理なども指摘されています。
これらの写真を、不動産業者である私が見ても確かに指摘されても仕方がない内容ではあります。
ただし直ちに「欠陥住宅」という呼び方をしてよいのかといえば、いささか疑問に思えます。
直ちに欠陥ではなく、処理が甘い、もしくは工事監理の人間が入念にチェックしていれば事前に防止することができる部位ですし、更に言えば施行する職方が「ウッカリ」せずに正しく施工基準通りに行えばよい部分だからです。
欠陥と言えば間違いなく欠陥、ただし意図的ではなく「ウッカリ忘れた」という部分が指摘されています。
私自身、相応に建築知識も有していますから図面さえあれば、施工検査を行えますし、要望によりオピニオン的な立場で現場に足を運ぶこともありますが、例えば釘の打ち忘れや金物の不足が目に付くことがあります。
そのような場合には職方に指摘して、是正してもらえば良いだけです。
もちろんお客様の大切な財産を建築している訳ですから「ミス」はいけません。
ですが、人間である以上「ミス」は起こりうるのですから、そのためにダブルもしくはトリプルのチェック体制を社内で実施して「ウッカリ」が生じないようにすることが大切です。
ミスをした個人を責めるのではなく「何故ミスが発生したのか」及び「再発防止のためどうするか」を考え、その方法を全体に定着させることが何より大切だと思います。
もちろん社内的には「ウッカリミス」が多い職方などには、個別に注意や指導を実施して再発防止に努めてもらうことも大事です。
このような徹底した複数回の検査を実施しても、やはり目を代えて再チェックすると新たな是正箇所が見つかります。
このような状態を完全に防止するには、時間をかけ複数人がそれぞれチェックすることが肝要です。
もっとも、意図的ではないにしても更に施工上の問題が原因で住宅に支障があった場合に備えて、建築会社は瑕疵保証保険に加入しています。
これは品確法(建物の品質確保の促進に関する法律)が施工されてから、新築業者には構造上主要な部分と雨水等の侵入を防止する部分には10年間の保証が義務付けられていることによります。
ですから万が一、施工上のミスによる不具合が発生しても保険会社から支払われる保険金で補修を実施できるのです。
建築会社から瑕疵保険が申込みされた場合、引受先の保険会社は必ず自社による検査を実施します。
当然ですよね。
万が一の場合に保険金を支払う訳ですから、少なくてもその保険会社の定める基準以上の施工方法で建てられていなければ怖くて保険の引受ができません。
ご紹介した記事では「検査は実施されているけれど…………」と、建築会社や保険会社による検査は実施されているのだが、と認めつつも現場管理者や保険会社は複数の件数を担当しているので忙しく、検査する時間が短いため見落としされるのだと指摘しています(結局のところ、自社のような検査会社に別途依頼をすることが大切だと紐付けしたいのでしょうか)
セカンドオピニオンである「株式会社さくら事務所」は、徹底して時間をかけてチェックを行っているから施行不良を発見することができると論じているわけです。
冒頭で記載した私への問い合わせも「記事を見て心配になったので、このような会社に依頼したほうが良いのでしょうか?」というのが相談の趣旨でした。
結論から言えば、自分で第三者のチェック機関に依頼して確認を行えば、施工上の不具合を未然に防ぐことができますから安心できるでしょう。
ただし費用がかかります。
例えば「株式会社さくら事務所」のホームページに掲載されている料金表を見ても基本コースで¥60,000円(税別)からとなっており、床下や屋根など確認箇所を増やすほどに料金が増加します。
大切な住宅の建築です。
この料金を「安心料」と考えれば納得もいくかも知れませんが、私の知る限り意図的に手抜きをする建築業者はそれほど数が多くはありません。
ただ忙しさから見落としや「ウッカリ」が発生していることは否めませんが、それであれば頻繁に建築現場に施主として顔出しするほうが良いのではないかと思います。
「建築知識がないから………」なんてことは気にする必要もありません。
建築図面やメジャーを持参して、携帯カメラなどで施工状況の写真を撮り難しげな「顔」で頷く。
さすがに毎日ですと、職方にも迷惑ですから2~3日に1回程度までに抑えた方がよいかと思います。
現場に行く際にはちょっとした心遣いで、休憩時の缶コーヒーや茶菓子なんかを持っていけば喜ばれます。
職人さんや現場管理者と仲良くなって「損」することはありません。
できれば予め休憩時間などを把握しておき、極力、作業中に行くことを避けることと自分の「家」ではあっても引き渡しを受けたわけではありませんから「コンニチワご苦労さまです」などと挨拶をしながら入るようにするほうが良いでしょう。
知識のある専門家に有償で依頼するのも一つの方法ですが、施主である自分自身が頻繁に現場に赴くことにより、工事監理者も施行をしている職方も良い意味での緊張感を持つようになりますから、ミスの防止となる暗黙のプレッシャーを与えることができます。
覚えておいたほうが良いでしょう。
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