今回は、以前に書いた「ウッドショック」に関しての続編をお伝えいたします。
前回の記事→【世界規模での木材高騰で新築住宅の価格が値上がりへ!?】今、狙うべきは中古市場だという理由とは!?
前回でも触れましたが、コロナの影響によるリモートワークの普及など、仕事や住環境が大きく変化しました。
需要と供給のバランスが崩れたことにより、木材価格が高騰しているばかりか通関や運輸コストも木材高騰の影響を受け値上がりし、それら一連の状態を総称し「ウッドショック」による影響と呼んでいます。
このウッドショックにより、内部留保の少ない地方工務店を中心に悲鳴があがり、倒産の危機に瀕している会社もあると耳にしました。
悲鳴を上げているとはいっても受注はそれほど落ち込んでいる訳ではありません。むしろ旅行や飲食関連など、コロナの影響を直接的に受け業績が悪化している業界からみれば、むしろ安定していると言えます。
それでは、なぜ悲鳴を上げているのか?
それには現在の国内における、木材供給量から説明する必要があります。
現状で建築会社への木材割り当ては、従来の40%前後が平均的なようです。
これは私が入手できる情報として、一般公表されている木材輸入総量や木材商社、工務店などから得た情報をもとにはじき出しています。
ですから数字の信憑性については絶対とまで言い切れませんが、さほどの誤差があるわけではないようです。
この40%前後の供給量も、大手ハウスメーカーが全体の数字を押し上げており、実際の地場工務店への割り当てはこの数字よりも少ないのが現実のようです。
大手ハウスメーカーは、ウッドショックの情報が入った時点から迅速に情報や機動力を駆使して、相応の木材量を確保しました。
またウッドショックが当面続くことを見越し、海外で木材の原木を仕入れて現地展開する工場で自社加工するなどの先手を打っています。
そればかりか地産材の工場に打診し木材を調達するスピードも早く、おせじにも生産能力が高いとはいえない地産木材工場の木材を抑えています。
地産材工場も古くから付き合いのある工務店を袖にもできませんから、全てをハウスメーカーに降ろすようなことはしませんが、それにしても全国的な必要木材量をカバーできるほどの生産能力を有していません。
とくにローコスト路線で需要を伸ばしてきた工務店は、構造材にホワイトウッドを多用しています。
ホワイトウッドは原産国がカナダやアメリカなどですが、コストを抑え加工もおこないやすい集成材です。
先ほどご説明した理由により国内におけるホワイトウッドの市場供給量は圧倒的に不足し、価格も上昇しています。
ところが先見性に欠けているのでしょうか、ウッドショックをごく一時的な現象だと軽く考えたのか、
「ウッドショックにより木材は高騰していますが、ウチは、お客様のために価格据え置きで新築住宅を供給します」と、断言して請負契約を受注しています。
私見ですが、工務店などの建築会社にとってはリーマンショックを上回る非常事態が、このウッドショックだと思っています。
価格据え置きで受注した場合の流れを考えてみましょう。
①契約工期でに竣工できず違約金が発生する
なんせ、木材が調達できませんから
②1件当たりの利益率は、原材料高騰により減少する
原材料費の高騰は、粗利益を下げます
③内部留保があるうちは良いが、資金的体力がなければそのうち力尽きる
会社によりますが、体力勝負にはいります
このような三段論法が成り立ちます。
結果、どうなるか?
体力のない会社から、倒れていきます。
あくまでも私の推測ですが、現在の世界的なコロナワクチン供給と接種状況から考えると、ウッドショックが落ち着き従来通りの木材供給に落ち着くのは2023年の6~8月前後ではないかと予測しています。
根拠は様々にありますが長くなるので割愛するとして、この予測が的中すればいまから約2年。
さて、内部留保の少ない工務店は持ちこたえられるでしょうか?
実際に、地銀の融資担当者から「ウッドショックの先行きについて話を聞かせて貰えないか」という電話問い合わせがありました。
話を聞くと、某工務店が受注は例年通りだが、資材高騰や着工や竣工の遅れにより資金が逼迫して融資を申し込んできたのだが、融資担当曰く
「提出された中・長期計画の木材供給安定による利益率回復の目算が甘すぎるように見受けられる」
エビデンスとして、業界情報に詳しい方に相談して回っているとのことでした。
これは先ほどの三段論法が現実に起こり始めているという、何よりの証拠かも知れません。
建築会社が倒産して一番困るのは、その会社で建築したユーザーです。
一般に「品格法」と呼ばれる住宅品質確保促進法により、
「住宅の柱や壁など構造耐力上主要な部分」や「屋根など雨漏りを防ぐ部分」と「地盤沈下など基礎に関する部分」については10年間の瑕疵補償が義務付けられていることから、JIOなど第三者保証を利用しているので万が一建築会社が倒産しても安心できます。
ですが、構造耐力上主要な部分の問題などそんなに多く発生するものではありません。
実際にはクロス補修や、水回りの不具合など経年変化により日常的に発生する問題にたいして、建築会社に問い合わせることが圧倒的に多いものです。
ところが、問い合わせをしようにも建築会社が倒産してしまっていてはどうしようもありません。
先見性の無い経営により倒産の憂き目を見る工務店に同情の余地はありませんが、それに振り回されるユーザーはたまったものではありません。
個人的には、明確な理由が存在していないのであれば新築住宅の建築は当面、状況を見守る必要があると考えています。
希望条件にあう中古住宅を中心に検討するのが、選択肢の一つではないでしょうか?
★荻原功太朗の業務について★
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