宇都宮市の公式ホームページでは「ネットワーク型コンパクトシティ」についてのページが展開されています。
経産省や国交省などが協力して行っている「次世代型シティ」プロジェクト構想で、宇都宮市は日本における先駆者として参画しているのですが、知名度については今一つのようです。
この「ネットワーク型コンパクトシティ」についての考え方は、現在の日本における構造不況を打破する“力”があります。
日本全体の懸案として、歴史上においても稀な急激な人口減少・高齢化があります。
そのような環境下においても私たちには「持続的に成長し人々の生活の質を高めていく」ことが求められます。
そのために持続的な成長を実現できるよう社会インフラが賢く使える都市空間の形成を進めていく必要があると言え、具体策の一つとして集約型の都市構造(コンパクトシティ)の形成が提唱されているのです。
コンパクトシティが実現すれば、健康で快適な生活の実現や財政・環境面での都市の持続可能性の向上、地域経済の下支え等の効果が期待されます。
先日のコラムでお話をしましたが、宇都宮市は皆さんと行政による努力により、市政における財政面で非常に安定した状態を維持しています。
その状態に慢心すること無く、更に発展させる構想が「ネットワーク型コンパクトシティ」なのです。
宇都宮市の「ネットワーク型コンパクトシティ」構想は、全国的に見ても最先端を走っており各行政機関からも注目されています。
「2022_LRT」も「ネットワーク型コンパクトシティ」構築へのステップなのですが、全体としての具体的な構想が、市政情報の発信数が多いにも関わらず、あまり浸透していないと言う現実があります。
今回のブログは「宇都宮プライド」として「ネットワーク型コンパクトシティ」構想を私なりに解説したいと思います。
コンパクトシティの定義については、論者や文脈によってことなります。
一般的な概念としては
(1)高密度で近接した開発形態
(2)公共交通機関でつながった市街地
(3)地域のサービスや職場までの移動の容易さ
上記の特徴を有した都市構造のことを示しています。
まず、交通インフラの整備。
LRTによる交通渋滞の緩和が期待されています。皆さんもご存じの通り特に鬼怒通りにおいて朝夕発生する"通勤渋滞"の改善は「コンパクトシティ」構想において一番に改善されなければならない部分です。
「ゆいの杜」の東側にある、芳賀工業団地と芳賀・高根沢工業団地には本田技術研究所を中心に多くの工場があり、約2万2000人が働いています。
そのため、鬼怒川を渡る柳田大橋の東側を先頭にラッシュ時には数kmにわたり渋滞しています。
本田技研も宇都宮駅東口から朝ラッシュ時に20本以上の送迎バスを走らせていますが、どの便も大型バスの2台運行で満席です。
通常だと、宇都宮駅から本田技研まで車で25分程度のところを1時間以上もかかることがザラで、夕方時間帯も芳賀工業団地から柳田大橋まで歩くのと変わらないほどの渋滞となることもあります。
企業の送迎バスで宇都宮駅から清原工業団地および芳賀工業団地、芳賀・高根沢工業団地に通勤する人は3500人。さらに快速で「宇都宮駅東口」から30分台で結ばれるとなれば、車からLRTへの転換も期待されています。
現在公表されているのは「LRT全線最高時速40km」としての所要時間ですが、「今後最高時速引き上げの特例も国に要望していく」(宇都宮市建設部 LRT整備室)とのことで、さらに時間短縮の可能性もあります。
実際のコンパクトシティにはいくつかの類型があり、例えば「多極ネットワーク型」「串と団子型」「あじさい型」といったパターンがありますが、宇都宮市で計画されているコンパクトシティ構想は、富山市構想に近い「串と団子型」のシティ構想です。
基本的な考え方として「公共交通を活性化させ、その沿線に居住・商業・業務・文化などの都市機能を集中させることにより、拠点集中のコンパクトなまちづくり」をマスタープランとしています。
まちづくりに当たっては、少子、超高齢社会、人口減少時代の到来や、地球環境問題の深刻化、高度成長期に整備した道路、下水道、学校施設などの公共資本ストックの老朽化、さらには、都市の顔である中心市街地の活力の低下など、本市を取り巻くさまざまな問題に効果的・効率的に対応していくことが急務となっています。
人、もの、情報が活発に交流する広域的な拠点性を高めることにより、栃木県の県都として、また、首都圏における主要都市の一つとして、広域的な圏域での存在感や中枢性をさらに高めていくことが、本市や周辺自治体も含めた圏域の発展のためにも重要です。
このような中で、宇都宮市が将来にわたり、持続的に発展していくためには、長期的視点のもと、都市空間そのもののあり方を見直していく必要があります。
結果的に宇都宮市民の「生活の質の向上」を基本としています。
「生活の質の向上」には「集中拠点」の以外の棲み分けが重要になります。
例えば、高齢者の方は、集中拠点に居を移して戴き公共交通機関の利用により快適に「衣・食・住」や公共サービスを利用することが出来る。また、子育て世代で体力的にも余裕のある方は、集中拠点を囲むように「取得価格と広さ」について適切な住居を選択して戴く。
特に若い世代はITに関連する順応性が高いことから、ネット環境さえ構築されていれば在宅型勤務により、優先順位を土地の広さや価格にシフトすることも可能です。
そのような考え方から「ネットワーク型コンパクトシティ」の形成に向け、土地利用に当たっては以下のような考え方が出来ます。
「生産性と公益的機能が確保された農用地、森林の保全」
「市民生活の質の向上に資する住宅地の形成」
「広域的な都市圏の発展をリードする工業地の形成」
「生活圏における個性的な商業、業務地の形成」
「誰もが暮らしやすい住環境を整え、本市の中枢性、存在感の向上につながる高度な都市機能の受け皿となる中心市街地の形成」
つまり市街地の無秩序な拡大を抑制して土地利用の適正化を図ることにより、都市的機能と自然環境が調和する土地利用を目指していくと言うことです。
私たち不動産業界の人間も、お客様の要望や予算に併せて常に「コンパクトシティ」実現を視野に入れて、居住地のコンサルティングを、おこなうように心がけています。
基本的な視野としては
「中心市街地はもとより、産業、観光拠点や、既に形成されている地域拠点、生活拠点または生活圏など、都市機能の集積している既存の拠点や核などの有効活用や、必要に応じて、地域の自然的、社会的特性を踏まえ、拠点性の高いエリアの拠点化の促進」です。
世代によって異なる優先順位を視野に入れながら「自然にあふれ・利便性があり・快適な住環境である」不動産を提供することにより、持続可能な恒久都市「宇都宮」実現に向けて、私たちも協力していきたいと考えています。
★荻原功太朗の業務について★
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。