年10月6日、10年国債の利回りが3.115%まで上がり、同じ日に入札された新しい10年国債の表面利率は3.1%と、およそ30年ぶりの高さになりました!
国にお金を貸すだけで年3%がもらえる時代に、修繕も空室もあるアパートを「利回り8%」で買う人はどれだけいるのでしょうか?
金利が上がると返済が苦しくなる、という話はよく耳にします。
しかし、アパートや貸家をお持ちの方にとって本当に怖いのは、建物も入居者も家賃も何ひとつ変わっていないのに、売れる値段だけが静かに下がっていくことではないでしょうか。
今回は、宇都宮市で収益物件をお持ちの方、そして相続でアパートを引き継いだ方に向けて、この「見えにくい値下がり」の仕組みを考えてみます。
記事リンク→債券11時 長期金利、3.115%で高止まり 20年債は31年ぶり高さ(日本経済新聞 )
記事リンク→東京都心の中古マンション価格、4カ月連続下落 高値維持も鈍る投資(日本経済新聞)
目次
- 国債で3.1%もらえる時代がやってきた!
- 「返済が苦しい」より怖いのは「売りたくても売れない」こと!?
- 家賃は同じなのに売値だけが下がる!なぜでしょうか
- 借金のない地主さんにも関係があるのはなぜ?
- 「地方で投げ売りが出ている」は本当か?宇都宮市の現場から考える
- まとめ
国債で3.1%もらえる時代がやってきた!
日本経済新聞によると、2026年10月6日午前の債券市場で、新発10年国債の利回りは前日より0.030%高い3.115%で取引されました。
同じ日に財務省が入札を行った新しい10年国債の表面利率は3.100%で、1996年8月以来、およそ30年ぶりの高さです。
20年国債の利回りも一時3.985%と、1995年5月以来およそ31年ぶりの水準まで上がりました。
日銀も今年6月に続いて9月に政策金利を1.25%へ引き上げており、来年には2%まで引き上げられる可能性も指摘されています!
数字だけ並べても実感がわきにくいので、身近な金額に置き換えてみます。
仮に7,500万円を10年国債に預けると、表面利率3.1%なら税引前で年間およそ230万円の利息が入ってきます。
屋根の塗り替えも、給湯器の交換も、退去後のクリーニングも、入居者募集の広告料も必要ありません。
つい数年前まで、この利息はほぼゼロでした。
利息がほぼゼロだったからこそ、「手間はかかるけれど利回り8%のアパート」には大きな魅力があったのです。
では、何もしなくても3%がもらえるようになった今、同じ8%のアパートは同じように魅力的に見えるでしょうか。
ここが今回のお話の出発点です。
「返済が苦しい」より怖いのは「売りたくても売れない」こと!?
個々最近、SNS上で人気のある不動産投資家の、ある投稿が大きな反響を呼びました。
内容を要約すると、金利が上がって大家さんの毎月の収支が圧迫されるのは確かだが、それはみんなが悲鳴をあげて騒げる分だけまだ分かりやすい。
本当に怖いのは「この金利でこの利回りを買う人はいないでしょ?」となって物件の評価が下がり、売ろうにも売れなくなることだ、という指摘です。
この投稿には、他の投資家からも共感の声が寄せられていました。
毎月の収支の悪化は目に見えるから手が打てるが、物件の値下がりは売るか借り換えるその瞬間まで顔を出さない、そこが一番怖いという声。
あるいは、金利がさらに上がった時に今の利回りのままで売れるのだろうか、家賃を上げられるほど景気は良くなっているのだろうか、という声です。
投資家同士のやりとりなので難しく聞こえますが、言っていることはシンプルです。
毎月の返済額が増えれば、通帳を見てすぐに気づきます。
気づけば、繰り上げ返済をする、家賃を見直す、経費を削るといった手が打てます。
一方、物件の「売れる値段」が下がったことは、通帳には出てきません。固定資産税の通知書にも書いてありません。売ろうと決めて査定を取ったその日に、初めて目の前に現れるのです。
このような事態にになることを予想し、今年1月の記事では、金利上昇でローン返済に頼った大家さんの資金繰りが苦しくなる構造をお伝えしました。
過去ログ→【日本の債券市場崩壊で「借金頼み大家さん」の退場が始まる!?】宇都宮市の不動産が「資産」から「負債」に変わる瞬間とは?
あれから9カ月が過ぎ、長期金利はついに3%を超えました!
今回は、その続きにあたる「出口」のお話です。
家賃は同じなのに売値だけが下がる!なぜでしょうか
アパートや貸家の値段は、マイホームとは決まり方が違います。
マイホームは「ここに住みたい」という気持ちで値段がつきますが、収益物件は「いくら稼げるか」で値段がつきます。
以前の記事でも、利益が出なければ誰も買わないのが事業用不動産だとお伝えしました。
過去ログ→【宇都宮市の事業用物件、今年売れなければ来年はもっと売れない!?】住宅と違い「利益が出なければ誰も買わない」事業用不動産の厳しい現実とは?
具体的な数字で見てみます。
年間の家賃収入が600万円のアパートがあるとします。
買い手が「利回り8%なら買ってもいい」と考えれば、値段は7,500万円です。
ところが買い手が「10%ないと合わない」と言い出すと6,000万円、「12%は欲しい」となれば5,000万円になります。
家賃は600万円のままです。建物も入居者も同じです。
それなのに、買い手が求める利回りが8%から10%に変わっただけで1,500万円、つまり2割も売値が下がるのです。
買い手の立場で計算してみると・・
「買い手が欲張りになっただけでは?」と感じた方も多いはずです。
しかし、買い手の側に立って計算してみると、そうせざるを得ない事情が見えてきます。
このアパートを7,500万円で、全額を25年ローンで買うとします。管理費や固定資産税、保険料などの経費を家賃の25%とすると、手元に残るのは年間450万円です。
金利が1.5%の時代なら、年間の返済は約360万円でした。450万円から返して、約90万円が手元に残ります。
ところが金利が3.5%になると、年間の返済は約450万円に増えます。手元に残るお金は、ほぼゼロです😅
空室が1部屋出れば、あるいは給湯器が1台壊れれば、その年は持ち出しになります。これでは買えません。
では、金利3.5%のもとで、以前と同じ年間90万円を残すにはいくらで買えばよいのでしょうか。
計算すると、約6,000万円になります。
つまり、買い手は欲張っているのではなく、金利が2%上がった分だけ、買える値段が2割下がっただけなのです。
そして宇都宮市の家賃は、金利が上がったからといって上げられるものではありません。
先ほどの「家賃を上げられるほど景気は良くなっているのか」という声は、まさにこの点を突いています。
ちなみにこれは投資物件に限らず、一般の住宅でも高額物件から金利上昇に伴い、売り抜けできない状況に陥り出しています。
東京都心の中古マンションでは売り出し価格と成約価格の差に大きな価格の開きが出て、値下げ物件が半数超えになっています。
過去ログ→【都心マンションに"ワニの口"出現!売り出し価格と成約価格の乖離が急拡大中!】宇都宮市でも"売れない価格"で出し続けると致命傷に!?
売り手の側では何が起きるのか
今度は売り手の立場です。
7年前にこのアパートを7,500万円で、全額を30年ローン、金利1.5%で買った方がいるとします。
7年間まじめに返済を続けても、ローンの残りは約6,040万円です。
今の買い手が出せるのが6,000万円だとすると、仲介手数料などの諸費用を差し引く前の段階で、すでにローンの残りに届きません。売るためには、自分の貯金から数百万円を足す必要があります。
毎月の家賃は入ってきている。返済も滞っていない。それでも「売れない」のです。
これが、SNSで投資家たちが「一番怖い」と言っていることの中身です。
借金のない地主さんにも関係があるのはなぜ?
ここまで読んで、「うちは借金がないから関係ない」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、ローンがなければ返済に追われることはありません。
しかし、売値が下がるという点では、借金のない方もまったく同じ影響を受けます。
なぜでしょうか。
売値を決めるのは、売り手の事情ではなく買い手の事情だからです。
宇都宮市でアパートを買う方の多くは、金融機関からお金を借りて買います。買い手のローン金利が上がれば、売り手に借金があろうとなかろうと、出せる金額は下がります。
親から相続したアパート、昔に建てて返済が終わったアパートをお持ちの方ほど、「毎月家賃が入ってくるから大丈夫」と感じやすいものです。
ただ、国債で3.1%がもらえる時代には、別の見方もできます。
例えば、今なら6,000万円で売れるアパートがあるとします。6,000万円を10年国債にすれば、何もしなくても税引前で年間およそ186万円です。
一方、アパートを持ち続けた場合に、経費を払い、修繕費を積み立て、空室の期間を差し引いて、手元に実際いくら残っているでしょうか。
築年数が進むほど修繕費はかさみ、火災保険料も上がっています。この差が小さくなるほど、「持ち続ける意味」は以前より薄くなっていると言えるのではないでしょうか。
過去ログ→【J-REITが警告する宇都宮市での不動産投資の限界!?】円安・インフレで修繕費が爆発!築古アパートオーナーが今すぐ考えるべき出口戦略とは?
もっとも、これは「すぐに売りましょう」というお話ではありません。
立地が良く、建物の手入れが行き届き、入居が安定している物件であれば、持ち続けることにも十分な理由があります。
大切なのは、「家賃が入っているから安心」という一点だけで判断しないことだと私は考えています。
「地方で投げ売りが出ている」は本当か?宇都宮市の現場から考える
先ほどのSNSのやりとりの中には、地方ではすでに投げ売りの物件が出てきているので、それを少し拾ってみようかと考えている、という声もありました。
では、宇都宮市はどうなのでしょうか。
まず東京の動きを確認します。
東京カンテイが9月24日に発表した8月の調査では、東京都心6区の中古マンションの平均希望売り出し価格は70㎡あたり1億8068万円で、4カ月連続の下落でした。直近3カ月以内に値下げした物件の割合は52.2%です。
強気だった売り出し価格を改めたり、値上がりを期待して売り渋っていた物件を急に売却したりする動きが出ており、相場は明らかに反転し、下落傾向を示しています。
8月末の記事では「3カ月連続の下落」とお伝えしましたが、流れは変わっていません。
過去ログ→【JR宇都宮駅西口に「億ション」完成!でもLRT西側延伸は2036年?】東京都心マンションは3カ月連続下落、変動金利も0.25%上げ・・駅西再開発は「間に合う」のか?
興味深いのは、東京で起きているのが「暴落」ではなく、「売り渋っていた人が売りに動き始めた」という変化だという点です。
宇都宮市に目を移すと、収益物件の情報サイトに掲載されている市内の一棟アパートは、2026年夏の時点で、築10年以内のものが利回り6%台後半、築30年から40年を超えるものが11%から12%といった水準で売り出されています。
ただし、これはあくまで「売り出し価格」です。
このブログで何度もお伝えしているとおり、売り出されている値段と、実際に売れた値段は別のものです。
過去ログ→【AIの査定額をうのみにするのは危険!?】宇都宮市で「本当に売れる価格」がAIにわからない理由とは?
サイトに「利回り8%」で載っている物件が、8%で売れているとは限りません。何カ月も載り続けている物件は、その値段では買い手がついていないということです。
そしてもうひとつ、「投げ売り」と呼ばれるような取引は、そもそも表には出てきにくいものです。
急いで現金化したい売り主さんは、広告を出して何カ月も待つ余裕がありません。そうした物件は、一般の方の目に触れる前に、買取業者や限られた投資家の間で値段が決まっていきます。
つまり、ネットで見える相場が動いていないからといって、水面下の相場も動いていないとは言えないのです。
現場の実感として、実質賃金が上がっていない以上、宇都宮市内で大きな家賃上昇は期待できません。
エンゲル係数(食費の支出割合)は30%近くまで上昇しており、入居者の「家賃に回せるお金」は限界に近づいています。
買い手側の資金調達も変わってきています。
不動産投資の情報サイト健美家によると、投資用ローンを扱うオリックス銀行の変動金利は2026年7月時点で年2.425%から4.425%でした。
これは9月の日銀の利上げより前の数字です。
ここから投資家の資金調達の状況はさらに悪化していきます。
宇都宮市には、東京の都心のように現金で買う富裕層や海外の投資家がほとんどいません。
買い手のほぼ全員がローンに頼る以上、金利が上がった影響は、東京よりもまっすぐに、そして早く値段に表れます。
東京が「2027年前半まで調整」なのであれば、宇都宮市の収益物件が同じ時期に無傷でいられると考えるのは、少し楽観的すぎるのではないでしょうか。
まとめ
長期金利は3.115%、新しい10年国債の表面利率は3.1%。およそ30年ぶりの水準です。
国債で3%がもらえる時代になると、アパートを買う人は以前より高い利回りを求めるようになります。
買い手が求める利回りが8%から10%に変われば、家賃が1円も変わらなくても、売値は2割下がります。
この値下がりは、毎月の通帳には表れません。売ろうと決めたその日に、初めて姿を見せます。
そして、ローンの残っている方だけでなく、借金のない地主さんや、相続でアパートを引き継いだ方にも同じように関わってくるお話です。
もっとも、すべての物件が同じように下がるわけではありません。
JR宇都宮駅周辺やLRT沿線などの人気エリアや、手入れの行き届いた物件には、金利が上がっても買い手がつきます。影響を受けやすいのは、郊外にあり、築年数が進み、これから大きな修繕が控えている物件です。
ご自身の物件がどちらに近いのか。
今の家賃収入だけでなく、「今売るとしたらいくらなのか」「ローンの残りと比べてどうなのか」という2つの数字を、一度並べて眺めてみる価値のある時期かもしれませんね。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年10月6日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★


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