最近、「AIで自宅の査定額を調べたら、思っていたより高い金額が出ました」というお話を、私のところでも本当によく耳にするようになりました。
スマホひとつで一瞬にして相場の目安がわかる時代になり、便利になったものだと感じます。
ただ、長く宇都宮市で売買の現場に立ち会ってきた立場から正直に申し上げると、AIが弾き出す査定額は実際の相場より高めに出やすく、とくに宇都宮のような地方都市では、そのズレが思いのほか大きくなりがちです。
なぜそうなるのでしょうか?
そして「本当に売れる価格」を知るには、何が必要なのでしょうか?
今日はその仕組みを、できるだけわかりやすくお話ししてみたいと思います。
記事リンク→ AI査定とは?不動産のAI価格査定の仕組み・精度・メリットを解説【2026年版】
目次
- AIの査定額は、なぜ高めに出てしまうのでしょうか
- 宇都宮のような街で、AIがとくに苦手にしていること
- では、「本当に売れる価格」はどこにあるのでしょうか
- まとめ
AIの査定額は、なぜ高めに出てしまうのでしょうか
まず、AI査定の数字がどこから来ているのかを整理してみましょう。
不動産には、大きく分けて二つの「価格」があります。
ひとつは、売主さんが「これくらいで売れたらいいな」と希望して市場に出す売り出し価格。もうひとつは、実際に買い手と折り合って取引が成立した成約価格です。
意外に思われるかもしれませんが、AI査定の多くが主に参考にしているのは、前者の売り出し価格のほうです。
SUUMOやHOME'Sといったポータルサイトに今まさに掲載されている価格を、大量に読み込んで計算しているわけです。
では、なぜ成約価格を使わないのでしょうか。
理由はシンプルで、実際にいくらで売れたかという成約価格は、一般には公開されていないからです。
これは不動産会社だけが閲覧できる「レインズ」というシステムに登録される、いわば取引の機密情報にあたります。
そしてレインズの利用規程では、この成約データを集計したり、加工して外部に公開したりすることが禁じられています。
つまり、不動産取引で最も大切な「本当に売れた金額」は、そもそもAIが学習できない仕組みになっているのです。
これを身近な例で考えてみると、わかりやすいかもしれません。
フリマアプリで、出品されている希望価格の一覧だけを眺めて、「このあたりが相場だな」と判断している状態を想像してみてください。
実際には、その希望価格のまま売れた品もあれば、値下げを重ねてようやく売れた品、あるいはいつまでも売れ残っている品も混ざっています。希望価格だけを見ていると、どうしても相場を高く見積もってしまいますよね。
AI査定が高めに出やすいのは、まさにこれと同じ構造です。
売り出し中の価格には、強気の値付けでなかなか売れずに残っている物件も含まれます。
その「売れ残りの高値」も一緒に学習してしまうため、算出される金額が実際の相場より上ぶれしやすいのです。
過去ログ→【都心マンションに"ワニの口"出現!売り出し価格と成約価格の乖離が急拡大中!】宇都宮市でも"売れない価格"で出し続けると致命傷に!?
実際、首都圏の中古マンションのデータを見ても、売り出し価格と成約価格の差は築年数によっては三割近くにのぼるケースもあります。
一般的にも、最終的な成約価格は売り出し価格の八割から九割程度に落ち着くことが少なくありません。
AIの査定額をそのまま「売れる価格」だと思い込んで売り出すと、「問い合わせがまったく来ない」という事態になりかねないのは、このためです。
もっとも、AIが万能でないだけで、決して無能なわけではありません
ここで誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、私はAI査定を否定しているわけではありません。
むしろ技術は着実に進歩していて、取引事例が豊富な都市部のマンションでは、誤差が数パーセント程度まで縮まっている例も報告されています。
国土交通省が公開している取引価格情報や、地価公示、路線価といった公的なデータも組み合わせて計算されていますから、相場のおおよその見当をつける出発点としては、とても優秀なツールだと思います。
問題は、その「得意なケース」から外れたときに、数字が一気に当てにならなくなることなのです。
宇都宮のような街で、AIがとくに苦手にしていること
では、宇都宮市ではどうでしょうか。
AI査定が本領を発揮するのは、似たような物件の取引がたくさんあって、比較できる材料が豊富な場合です。
東京の人気エリアなら、同じマンションの同じような部屋が月に何件も売買されることもあります。
データが多ければ多いほど、AIの計算は正確になります。
ところが地方都市では、そもそも取引の数が圧倒的に少ないのです。
エリアによっては、年間の成約事例が数件しかないということも珍しくありません。
比べる材料が乏しければ、AIの査定額と実際の価格が大きくかけ離れてしまったり、そもそも計算結果が出てこなかったりすることもあります。
データが薄い土俵では、AIの強みがそのまま弱みに変わってしまうわけです。
そして、戸建てや土地になると、難しさはさらに増します。
同じ広さ、同じ築年数の土地でも、敷地の形、隣地や道路との高低差、接道の向き、日当たりの実際の様子で、価格は大きく変わります。マンションのように「型」で割り切れない要素が多く、こうした個別事情は、現地に足を運んでみないとわからないものばかりです。
AIが画面上の数字だけで読み取るのは、どうしても限界があります。
宇都宮の場合は、ここにもうひとつ、街そのものの変化という要素が加わります。
過去のブログでも触れましたが、LRTの開業以降、電停からの距離によって実際の成約価格に差が出始めています。
同じ町内でも、細かな立地の違いで価値が分かれていく。
私はこれを宇都宮の不動産の「三極化」と呼んでいますが、こうした今まさに進行している変化を、AIが即座に査定へ反映させるのは難しいのが現状です。
過去ログ→【宇都宮市の不動産査定、生成AIの普及で業者不要になるのか!?】わかったつもりのAI査定の弱点・落とし穴とは!?
では、「本当に売れる価格」はどこにあるのでしょうか
ここまで読んで、「では、結局どうやって本当の相場を知ればいいのか」と思われた方も多いはずです。
もちろん、ご自身で調べる手段もあります。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、レインズの過去の成約データをまとめた「レインズマーケットインフォメーション」は、誰でも無料で使えますし、おおよその相場感をつかむのにとても役立ちます。AIと合わせて、まず自分で調べてみるというのは、賢い第一歩だと思います。
ただ、これらの公開データにも限界があります。
物件を特定できないように、詳しい住所までは出てきませんし、あくまで過去の、しかも一部の取引の記録です。
「では、あなたの家は、今、いくらなら買い手がつくのか」という肝心の問いには、答えてくれません。
興味深いのは、この「本当に売れた金額」という情報が、実はネットのどこにも、AIの中にも、まとまった形では存在していないということです。
それは、どこにあるのでしょうか。
正直に言えば、その土地で実際に売買に立ち会ってきた人間の、頭の中に少しずつ蓄積されているものなのです。
あの物件がいくらで売れたのか。
なぜその価格で買い手がついたのか。
逆に、よく似た物件がなぜいつまでも売れ残ったのか。
値付けをどこで間違えると、ぱたりと問い合わせが止まるのか。
こうした「数字の裏側にある理由」は、現場で何度も売買を経験する中で、少しずつ体に染み込んでいく類いのものです。
表計算ソフトのセルには収まりきらない知識、と言ってもいいかもしれません。
以前、宇都宮でも物件の二極化、三極化が進んでいるというお話をしました。
過去ログ→【富裕層のための財産を守る不動産インフレ対策とは?】宇都宮市の不動産も超2極化!選別がすすむ!
価値のある物件はすぐに売れ、そうでない物件はいくら値下げしても動かない。
この見極めもまた、実際の成約をいくつも見てきた感覚があってこそ、できることなのだと感じています。
まとめ
AI査定は、相場のあたりをつけるための、便利で優秀な出発点です。
これからもどんどん活用していくべきだと思います。
ただ、AIが見ているのは「まだ売れていない希望価格」であって、「実際に売れた価格」ではありません。
とくに宇都宮のような取引数量の少ない街や、個別性の高い戸建て・土地では、その差が数百万円という形で表れることもあります。
「AIで調べてみたけれど、この数字を信じて売り出していいのだろうか」。
そんなふうに少し立ち止まったときは、AIの数字を入り口にしつつ、その土地で実際に売買を見てきた人に一度話を聞いてみる。
それくらいの慎重さがあっても、損はないでしょう。
便利な時代だからこそ、最後の最後は「本当のところはどうなのか」を確かめてみる。
そのひと手間が、大切な財産を守ることにつながるように思います。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年6月24日時点の情報に基づいています
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