LRT開業から2年半が経過し、宇都宮市の街の姿は確実に変わりました!
にぎわいの中心は、かつてのオリオン通りからJR宇都宮駅へと明らかにシフトしました。
JR駅東口には中高大学生が集まり、再開発された宇都宮テラスは全テナントが埋まり週末は行列ができるほどの盛況ぶり。
一方、東武宇都宮駅周辺やオリオン通りは飲食店中心の「夜の街」化が進み、平日の昼間は人通りがまばらです。
長い間右肩上がりだった訪日客数も3年ぶりに減少に転じ、地方百貨店を取り巻く環境は一段と厳しさを増しています。
この「経済軸のズレ」は、宇都宮市の不動産にどんな影響をもたらすのでしょうか。
目次
- にぎわいの中心がオリオン通りからJR宇都宮駅へシフト
- 東武宇都宮駅・オリオン通りの「夜の街」化と治安悪化
- 訪日客減少と東武百貨店の苦境が重なる不安
- 街の経済軸のズレが不動産価格に突きつける現実
- まとめ
にぎわいの中心がオリオン通りからJR宇都宮駅へシフト
まず結論から言います。宇都宮市の「にぎわいの中心」は、かつてのオリオン通りからJR宇都宮駅へと、明らかにシフトしました。
私は日頃から仕事でJR宇都宮駅周辺を頻繁に行き来していますが、LRT開業後の駅東口エリアの変貌ぶりには目を見張るものがあります。
再開発された東口のホテルやテラスには開業直後から足を運び続けていますが、この2年半の変化は劇的です。
LRT開業直後から1年くらいの頃を覚えているでしょうか。
再開発された当初、宇都宮テラスには空きテナントが2割ほどありました。
マイカーで郊外のショッピングモールに行くのが定番スタイルになったなか、「本当に大丈夫なのか」「テナントが埋まらないのでは」という心配の声は、正直なところ業界内でも少なくありませんでした。
しかし、今ではどうでしょう。
宇都宮テラスは全テナントが入居し、需要の高い飲食店を中心にしっかりと商業施設として機能しています。
特に週末の賑わいは目を見張るものがあり、並ばないとすぐに席につけない店が多いほどの盛況ぶりです。
開業当初のガラガラだった光景が嘘のようです。
平日の放課後の時間帯にJR駅東口を歩くと、中学生、高校生、大学生が本当に多い。
LRTに乗って友達と遊びに来た高校生グループ、カフェで勉強する大学生、東側の公園やブレックスアリーナ周辺で過ごす若者たち。
LRT開業前には考えられなかった光景が、今では日常の風景になっています。
→過去ログ:LRTがもたらした宇都宮駅東エリアの新ライフスタイル
「街の顔」が変わったことの意味
日々この街で仕事をしていて、もう一つ強く感じることがあります。
それは、駅に人が集まるようになったことで、宇都宮市の「街のイメージ」そのものが上がっているということです。
考えてみてください。
出張や観光で宇都宮を訪れた人が最初に降り立つのは、JR宇都宮駅です。
その駅を出た瞬間に目に飛び込んでくるのが、LRTが走る近未来的な風景と、宇都宮テラスを中心に賑わう東口エリア。
外から来た人たちにとって、街の顔である場所に活気があるのは、その都市への印象を大きく左右します。
かつてオリオン通りが宇都宮の「街の顔」だった時代、初めて宇都宮を訪れた人がオリオン通りを歩いて「活気がない」「シャッターが多い」と感じてしまうことは、街のイメージにとって大きなマイナスでした。
それが今、JR宇都宮駅周辺という「街の玄関口」に賑わいが生まれたことで、宇都宮市に対する第一印象は確実に良くなっています。
このイメージの変化は、不動産マーケットにも影響を与えます。
「宇都宮って意外と活気があるんだ」という好印象は、転勤族の住居選びや企業の進出判断、投資家の関心にもつながるからです。
LRTが開業し、1年ほどの短期間で、変化に敏感な若者を中心に沿線のライフスタイルが根本的に変わり始めました。
あれからさらに1年以上が経ち、宇都宮テラスの全テナント稼働が示すように、この変化は一過性のブームではなく、完全に定着したと言っていいでしょう。
JR宇都宮駅周辺+LRT沿線は、まさに宇都宮市における「新しい中心」としての地位を着実に固めつつあります。
東武宇都宮駅・オリオン通りの「夜の街」化と治安悪化
一方、LRT効果で活気づく沿線とJR宇都宮駅とは対照的に、東武宇都宮駅周辺やオリオン通りの変化は、正直なところ心配になる方向に進んでいます。
オリオン通りは、この10年ほどで劇的に変わりました。
かつての物販店中心の商店街から、居酒屋やバー、飲食店が立ち並ぶ「夜の街」へと完全にシフトしています。
2023年にはパチンコ店跡地に屋内型の屋台村がオープンするなど、「食べる・飲む」に特化した街として再生を遂げた面はあります。
→過去ログ:宇都宮市のオリオン通りはモノからコト化へ更に進化!
しかし、ここに来て気になるのは、昼間の人通りの薄さです。
平日の午前中にオリオン通りを歩くと、シャッターが閉まった店が多く、人影もまばら。
飲食店の多くは夕方からの営業ですから、当然といえば当然なのですが、「商店街」としての昼間の賑わいは、ほぼ失われたと言わざるを得ません。
そして、飲み屋街化したことで明らかに治安が悪化した印象が拭えません。
JR駅東口の宇都宮テラスが全テナント稼働で週末行列ができる状況と比べると、この差は歴然です。
東口は昼も夜も人がいる。
オリオン通りは夜だけ人がいる。
にぎわいの「密度」と「時間帯の幅」が、まったく違います。
では、この変化は悲観すべきことなのでしょうか。
必ずしもそうとは言い切れません。
記事リンク→宇都宮・オリオン通り、なぜ「飲み屋街化」? 駒澤大准教授が分析 不動産転売も一因に(下野新聞)
商店が次々閉店し、シャッター通り化していた最悪の時期と比べれば、「飲み屋街化」して生まれ変わったことで活気が戻り、宇都宮の「餃子の街」というブランドとも相性が良いため、街の西と東で役割分担ができたともいえます。
ただし、不動産マーケットの観点からは、昼間の人流がない商業エリアの不動産価値は、長期的には下落圧力がかかるというのが現実です。
商業不動産の価値を支えるのは、昼夜問わない安定した人流と街のイメージです。
夜だけ賑わうエリアは、治安が悪化しやすく、テナント料の上限が低く、投資対象としての魅力も限定的になります。
実際、現場で流通している物件を見ていると、中心市街地の物件は年々動きが鈍くなっているのを感じています。
訪日客減少と東武百貨店の苦境が重なる不安
こうした東西格差が広がる中で、もう一つ気になるニュースが飛び込んできました。
2026年1月の訪日外国人旅行者数が前年同月比4.9%減と、3年ぶりに減少に転じたのです。
最大の要因は中国からの訪日客が前年同月比60.7%減と激減したことです。
今までずっと右肩上がりで、国内経済の推進役の一つのだった「インバウンド需要」がついに天井を打ったということです。
「宇都宮にはインバウンド需要なんてほとんどないんだから、関係ないでしょ?」と思う方もいるかもしれません。
確かに、宇都宮市は京都や大阪のような観光都市ではありません。
しかし、このニュースが宇都宮市にとって無関係とは言い切れない理由があります。
それは、百貨店全体の売上が悪化すると、地方百貨店と地方のハイブランド店の撤退が加速するからです。
栃木県で進む百貨店の淘汰
過去ログでも取り上げました、すでに隣県の水戸市にある京成百貨店では、2024年12月にルイ・ヴィトンが、2025年6月にはティファニーが相次いで撤退しました。
いずれも茨城県唯一の直営店でした。
こうしたラグジュアリーブランドの地方撤退は全国で加速しており、インバウンド売上の減少がそれに拍車をかけています。
→過去ログ:宇都宮にもルイ・ヴィトン撤退が迫っているのか!?
そして、栃木県内で見逃せない動きがあります。
大田原東武が2026年8月31日をもって閉店することが発表されたのです。
記事リンク→東武宇都宮百貨店大田原店が2026年8月いっぱいで閉店…栃木県北地域唯一の百貨店の閉店に、地元経済への影響を不安視する声も(読売新聞)
東武グループの百貨店が県内で一つ消える。
この事実の重さは、宇都宮市民にとっても他人事ではないはずです。
東武宇都宮百貨店の財務状況は深刻
ここで、あまり報じられていない重要な数字をお伝えします。
東武宇都宮百貨店の直近の決算公告(第80期)によると、純損失は8億3,900万円、利益剰余金はわずか3億2,100万円まで急減しています。
前々期(第78期)の時点で利益剰余金は11億2,200万円ありましたが、わずか2年で約8億円も吹き飛んだ計算です。
建物は築60年超で老朽化が進み、親会社の東武鉄道から借りている状態。
知事も建て替えを要望していますが、この財務状況で大規模な再投資は極めて困難でしょう。
→過去ログ:LRT西側延伸の計画延期は宇都宮市の不動産に何をもたらすのか?
もちろん、東武宇都宮百貨店がすぐに閉店するとは限りません。
親会社の東武鉄道が支えている限り、赤字でも営業を続ける可能性はあります。
しかし、「いつまでも存続する」という前提で投資判断をするのは危険です。
大田原東武の閉店決定は、東武グループとして不採算店舗の整理に踏み切る意思があることを示しています。
街の経済軸のズレが不動産価格に突きつける現実
ここまでの話を整理すると、宇都宮市では今、三つの構造変化が同時進行しています。
LRT開業による「にぎわいの中心」の東シフト、LRT西側延伸の事実上の凍結、そして訪日客減少と地方百貨店の淘汰加速。
これら三つが重なることで、宇都宮市の不動産マーケットには明確な二極化が進んでいます。
→過去ログ:宇都宮市のLRT西側延伸、2036年に開業延期で事実上の計画凍結か?
JR宇都宮駅東口+LRT沿線エリアは、若者の生活圏として定着し、宇都宮テラスの成功が示すように商業としても機能し始めました。
西側延伸が不透明になったことで、むしろ相対的な優位性が高まっており、実需に裏打ちされた底堅い展開が続くでしょう。
JR駅西口徒歩10分圏内も、駅至近の希少性から堅調を維持すると見ています。
一方で気になるのが、宮島町交差点〜東武百貨店周辺から大通り・作新学院方面にかけてのエリアです。
LRT延伸への期待剥落、東武百貨店の先行き不透明感、昼間の人流減少というマイナス要因が重なり、投資家の関心は以前と比べて明らかにトーンダウンしている印象です。
延伸計画を前提に形成されていた期待価格が、実需ベースの水準に調整される局面に入りつつあると見ています。
もっとも、このエリアの特殊な事情として、物件の流動性が極めて低いという点があります。
所有者は代々の資産家が多く、そもそも売りに出る機会自体が少ない。ここ10年ほどでようやくちらほらと売り物件を見かけるようになった程度です。
しかも資産に余裕のある売り主さんが多いため売り出し価格は強気で、結果としてなかなか流通しないという状況も散見します。
裏を返せば、今のうちに出せば「希少な売り物件」として注目される可能性がある、ということでもあります。
マーケット環境がさらに変化し、同じエリアから売り物件が一斉に出始めてからでは、その希少性は失われます。
動きが鈍いエリアだからこそ、先に動いた人が有利になる。不動産ではよくある話です。
まとめ
LRTが宇都宮市にもたらした変化は、単なる「便利な乗り物ができた」という話にとどまりません。
街のにぎわいの中心そのものを東にシフトさせ、若者の生活圏を変え、投資資金の流れを変え、不動産の価値構造を根本から書き換えつつあります。
宇都宮テラスの全テナント稼働と週末の行列、中高大学生で活気づくJR駅東口。
これらは宇都宮市の未来にとって明るいニュースです。
外から来た人が最初に見る「街の顔」に活気があることは、都市としてのブランド価値を確実に高めています。
しかし、その裏側で東武駅周辺・オリオン通りエリアが昼間の求心力を失い、治安も悪化。百貨店の存続すら不透明になりつつある現実にも、目を向ける必要があります。
不動産は「待っていれば必ず上がる」時代ではありません。
エリアによって明暗がはっきり分かれる時代だからこそ、自分の物件がどちらの側にいるのかを冷静に見極めることが、資産を守る第一歩になるのではないでしょうか。
こうした判断は、数字とデータに基づいて行うしかありません。
今回ご紹介した東武百貨店の決算数値やエリア別の動向が、皆さまの資産についてあらためて考えるきっかけになればと思います。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年2月19日時点の情報に基づいています
株式会社サンプラン 荻原功太朗
★荻原功太朗の業務について★










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