宇都宮市長選と栃木県知事選で、どちらも現職が勝ったことで、宇都宮市では、今まで通りLRTの整備を軸とした都市開発を継続することが、民意として承認されました。
LRTを西側延伸し、東西の公共交通の背骨として機能させ、それに伴い、バス路線の再編を行っていく流れとなります。
もはや、運転手不足によるバス路線の崩壊は全国各地で、急速に進んでいて、待ったなし!の状況です💦
→バス運休、通院難民……「公共交通の崩壊」がもたらす想像以上の大ダメージ! なぜ、経済合理性だけで判断してはいけないのか?Merkmal(メルクマール)
宇都宮市が人口減少社会に対応した「まちづくり」の大きなグランドデザインとして掲げているのが、公共交通での移動を前提とした「ネットワーク型コンパクトシティ」構想です。
過去ログ→【宇都宮市のコンパクトシティ構想の成否を決めるのは〇〇だけ!?】他都市の失敗例から見えることとは・・!?
コンパクトシティとして宇都宮市が目指しているのは、街のスポンジ化を防ぎ、できるだけ居住地域を集約化させ、人口密度を上げることで、インフラ維持のコストを抑制し、街の活気を維持することになります。
しかし、、不動産取引の現場からは見えるのは、コンパクトシティとは逆行するような動きで、理想と現実には大きなギャップがあります😅💦
今回は、宇都宮市が推進するコンパクトシティ構想とその課題について考えてみます。
宇都宮市のマイホーム取得補助金から見えること
宇都宮市は、移住・定住を促進し、活力あるまちづくりを進めることを目的に、住宅を取得した世帯に住宅取得費用の一部の補助金として支給する制度を設けています。
この制度は、コンパクトシティ構想を推進するため、住民の居住地を誘導するための補助金でもあります。
気になる補助金の額ですが、市外からの転入者は、上限85万円+子ども1人につき5万円加算、市内からの転居者は上限50万円+子ども1人につき5万円加算となっています。
こちらは上限なので、補助金額は個別の条件で変わってきます。
補助金を受けられる所得基準は、4人家族で所得の合計、1394万円以下となっていることから、多くの方が補助の対象となります。
また、宇都宮市内ならどこに家を購入しても、もらえる制度ではなく、宇都宮市がコンパクトシティ推進するために、居住者を誘導したいエリアにのみ適応されます。
主に、市が策定した「立地適正化計画」の高次都市機能誘導区域 、都市機能誘導区域、居住誘導区域、その他に地区計画を定めた住宅街も対象になります。
詳しい補助金額の詳細を見てみると!
注目すべきは加算項目で、高次都市機能誘導区域と築20年以上の中古住宅の取得に高い補助金が設定されている点です!
宇都宮市が設定している高次都市機能誘導区域はこちらの青枠内です。
街の都心部に築20年以上の中古のマイホームを購入すれば、多くの補助金を得ることができます。
ちなみに、中古住宅は、戸建てだけでなく、分譲マンションも対象になります。
他の公的な住宅取得補助政策と併用も可能で、うまく利用できれば、かなりの金額の補助が受けられます😋
不動産の現場から見えるコンパクトシティへの課題
ご紹介したように、宇都宮市は補助金を活用して、居住地域の誘導を図っています。
しかし、現実問題として、多少の補助金を与えるくらいでは、市が構想するネットワーク型コンパクトシティ構想を進めるの難しいと感じています。
理由は大きく3つです。
・インフレによって住宅価格が高騰し、安い土地の需要が増えている
・マイカー移動前提の生活設計では、誘導地域に魅力を感じない
・新築住宅の規制なしでの誘導は困難
それぞれ解説します。
住宅価格の高騰により安い土地の需要が増加
新築住宅の価格高騰が止まりません💦
建築コストは、今年に入っても値上がりし続けており、10年前くらいと比べると、1.5倍あまりにも高騰しています😅💦
宇都宮市のマイホーム取得補助金では、築20年以上の中古物件を選べば、15万円の補助が受けられますが、ニューファミリー層の新築志向はまだまだ顕在であり、中古を選ぶ方は少数派です。
そのため、土地にかけられる予算が大幅に減額せざる得ない状況となっています。
人気のLRT沿線では、土地価格の値上がりも著しく、大半のニューファミリー層には、高嶺の花です。
市が設定する居住誘導エリアですら、手が出ないような層も多く、わずかばかりの補助金では、立地の将来性より、目先の支払いを優先せざる得ないのが現実です😅💦
マイカー移動前提では、誘導地域に魅力を感じない
そもそも、なぜ立地適正化計画を策定しているかといえば、人口減少と超高齢化が進む社会変化に対応し、公共交通ネットワークの構築し、コンパクトなまちづくりを推進するためです。
まだまだ元気のある現役世代は、マイカー移動が前提で住まいを探します。
宇都宮市のような地方都市では、若い世代で公共交通の利便性を重要視する層は、まだまだ少数派です。
そのため、わずかばかりの補助金をもらうことより、土地代が安く、駐車スペースが沢山確保できる広い敷地を求め、誘導区域外へと流れる傾向が続いてしまっています。
マイカーに依存する生活だと、これだけ注目をあつめているLRTにすら無関心な方も多く、車移動が不便になった沿線にも魅力を感じにくいです。
そのため、マイカーに依存している方々ほど、立地選定でも、公共交通の利便性を全く重視しません😅💦
国策として、公共交通の利用を促すため、自動車の保有や燃料に、増税し、その代わりとして、公共交通を無料にするなど、何か施策を打たないと、なかなかマイカー依存から抜け出すのは難しいでしょう。
マイカー依存からの脱却なくして、コンパクトシティ構想を推進するのは困難です。
新築規制や企業の協力も不可欠
政令指定都市の神戸市では、高層タワーマンションを建設できないように規制をかけたことで、注目を集めています。
また一部エリアでは住宅建設そのものが禁止されています😮
→人口150万人割れの神戸市が、タワマン規制をする理由(Forbes JAPAN)
意外に思うかもしれませんが、神戸市の人口は減り続けていて、2011年の154万人をピークに減少に転じ、2023年10月には150万人を下回りました💦
神戸市長は「再び人口増に転換するという可能性はほとんどないのではないか」と指摘しており、「これからは人口増を狙うのではなく、人口減少を前提にまちづくりを考えていくべきだ」と話しています。
これくらいの覚悟がないと、現実的にコンパクトシティ構想を推進するのは難しいと思われます。
行政が居住を誘導しないエリアに新築住宅を建設する場合に、高額の固定資産税を課すなど、誘導区域への高額な補助金とセットで、区域外への居住には増税をするなどの規制をかけなければ、計画は「絵に描いた餅」になってしまう可能性が高いとみます。
居住誘導区域外の場所は、将来性が低いことから地価も安く、市街化区域に指定されている場所なら、自由に新規の不動産開発ができますから、業者サイドは需要があれば、市が望まない場所ても、新たな宅地を開発し続けてしまいます。
わずかばかりの補助金では、この流れを止めることは困難でしょう。
また、企業サイドにも公共交通の便がいい場所に、職場環境を整備してもらうことや、通勤に公共交通の利用を促してもらう政策も必要になると思います。
まとめ
現状の経済環境では、わずかな金額の補助金制度だけでは、居住地の誘導を促す効果はあまり期待できません。
宇都宮市がLRT西側延伸を完了させたところで、国策としてマイカー移動からの脱却をかかげる大きな政策転換でもなければ、地方自治体だけで、コンパクトシティ化を推進するのは容易なことではありません😅💦
とどまるところを見せないインフレの影響で、引き続き、都市郊外の安い住宅地の需要が高まるのは確実です。
コンパクトシティは持続可能な都市づくりのために必要ですが、マイカーに依存した生活をする住民には、利点を感じにくいです。
宇都宮市は、マイカーなしでも快適に暮らせる新しいシティライフを、広く住民にPRしていく必要があるでしょう。
そのためにも、公共交通沿線に公共施設や、病院、商業施設などを積極的に誘致し、住民が率先して誘導地域に引っ越したいと思う環境を整備するべきでしょう。
人口減少が進めば、嫌でもインフラを維持する範囲の縮小が迫られます!
そのときは、近いと思います。
そうなったとき、混乱が起こらないよう、今のうちからできることを、しっかりやってもらえるよう、お願いしたいです👏
★荻原功太朗の業務について★
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