ネットで「不動産売却」と打ち込めば、それはもう沢山のサイトがヒットします。
検索エンジンの有償広告の欄には上場大手を筆頭にエリアでビジネスを展開している会社が並びますが、それ以降でも 約3,760万件ぐらいの検索結果が並びます。
「どこよりも高く・早く売ります」なんて常套句はあたりまえで「他社で駄目でも当社なら大丈夫」など、様々なコピーが並んでいます。
そのような検索結果の中にある一括査定サイト。
7~8社同時に査定依頼できるなど、不動産会社の評判をいちいち調べてから連絡する必要がなく便利そうな気もしますが、実際のところはどうなんでしょう?
「不動産会社なんてどこでも同じだろう!」なんて、ユーザーの声が聞こえてくるような気もしますが、利害関係のない不動産コンサルタントの意見としては、
「不動産会社選びこそがもっとも大切です!」と言い切れます。
正確に言いなおせば「不動産会社+担当者」です。
会社の評判が良くても、実際に査定や販売活動の中心となるのは営業担当ですから相性も含め、担当者の能力も大切です。
「愛想がよく話しやすい」など、接遇に関してのマナーや言葉遣いなんてのは基本ですが、それ以上に大切なのが難解な不動産に関しての知識総量や、不動産市場を的確に読み提案できるといった能力です。
たとえばですが、JR宇都宮東口駅徒歩圏で途方もなく安い物件があれば営業マンなんて必要ありません(そもそも不動産業者が買い取るでしょうから市場にも出回らないでしょうが)
的確に実勢価格や市場動向が読めている不動産営業マンが作成する査定書は、書類構成は様々にあれど価格は概ね同じ金額帯に収束します。
安すぎるのは論外ですが、高すぎるのも問題です。
根拠があって高いのは喜ばしいのですが、たんに競合する他社よりも目立ちたい理由で高値査定をしてくる業者が、本来なら最初に断るべきです。
「当社は販売力がありますからこの価格でも大丈夫です!」
「え~こんな素晴らしい家なのに、他社の営業さんは見る目がありませんねぇ」
などと見てくれの良い爽やかな営業マンに流暢に言われれば「へーそうなんだ。それじゃ……」となりがちですが、少しお待ちください。
行き着く先は不動産業界の悪しき慣習と言われる「物件の囲い込み」です。
不動産業者は取り扱い物件が多いほど華やいだ雰囲気になります。
全く同じ物件が広告に掲載されているのを見かけたこともおありかと思いますが、そもそも業者同士で情報を共有し販売活動を推進する目的として、専属専任や専任媒介契約においてはレインズという業者ネットワークに物件を登録することが義務付けられています。
複数の仲介業者から同じ物件が広告されていることがあるのは、売主から直接依頼を受けている会社はあくまでも1社ですが、情報が共有されることにより、それ以外の会社は元請けの業者から広告応諾を取り、広告しているのです。
これにより買主・借主などの目に売却物件の情報が目に留まりやすくなり、売主なども早く目的が達せられることになります。
このような形で契約した場合は元付けは売主から、買主は買い客側からそれぞれ仲介手数料を頂戴する訳ですが元付が直接買主を見つけて契約した場合には売り・買い双方から仲介手数料を頂戴できますので利益が「倍」になります。
これを両手取引といいますが、どのような業者でも両手で取引したいのは本心です。
ですが、そこは紳士協定に基づき他業者の協力を得て販売活動をする業者が大半なのですが「囲い込み」業者は違います。
彼らはまず口八丁で媒介契約を取得することを目的とします。
そして市場よりも値段の高い物件については、積極的に販売もせずに放置しておいて
「いや~頑張っているのですがなかなか引き合いが無くて厳しいかもしれませんね。つきましてはお値段をさげて……」なんて、自分は悪くないといった論調で値下げを要求してきます。
物件を売る方は、当然に売却理由があるのですからしかたがないと値段を下げるしかありません。
値ごろ感がでてくれば、他業者から引き合いがでますがそれに対しては「商談中です!」と断ったりします。
この商談中は便利な言葉で本当か嘘かは別として「商談中です!」と言われれば、買い客側の業者はそうですかと引き下がるしかありません。
個人的な話ですが某大手業者では、半年以上売れ残っている物件も含めて全て、問い合わせれば「商談中です!」と言われてしまいます。
過去に、あまりにも不義理な行動が目に余り糾弾したことを根に持っているのかなと……
もちろん他業者から引き合いがあっても断っていることを、売主さんは知りません。
もちろんそのような業者は僅かばかりですが、今回は経験豊富な不動産業者からの立場で、一括査定のデメリットについて解説します。
1.査定価格があがり、相場からかけ離れた査定金額が提案される。
前項までに解説した囲い込みの内容と重複しますが
業者は自社で取り扱う売り情報が1件でも多く欲しいのは、商売であるから当然なのです。
一括査定サイトを利用するとシステム登録している会社には、顧客情報が一斉メールされてきます。
はなから数社が競合にいる状態で情報を受け取る訳ですね。
そうなれば少しでも高く査定して、目を引きたいのが人情です。
ところが不動産には適正相場が存在します。
不動産業者はプロですから、過去の事例や状態などの情報を基に査定すれば適正相場を基準として例えば1,800~1,900万円が査定価格として同じような価格が並ぶことになるのですが、それでは目を引かない。
そこで2,000~2,100万円なんて査定書を出してしまう。
査定書を提出する会社もその金額で売れるなんて思っていません。
他社より目を引きたいだけ。
誰だって少しでも高く売りたいのは人情です。
当然、査定額の高い会社の営業マンから「ウチは豊富な実績とネッワークがあるから、この価格でも売ることができるんです。ご安心ください!!」などと弁舌爽やかに自信たっぷりに言われたら「そうなのかな?」と思ってしまいますよね。
はっきり言っておきますが、九分九厘その価格では売れません!
あたりまえですが購入を検討されている方は、下手をすれば不動産会社の営業マンより検討エリアの相場をよく知っています。
気になる業者をお気に入り登録して、メルマガや最新の物件情報なんかも入手しています。
さきほど解説した不動産業のネットワークであるレインズへの物件登録は、媒介契約締結後から専属専任で5日以内、専任契約は7日以内(一般媒介は登録が義務ではありません)
つまりその間は、他業者の情報を他の不動産業者が知ることはできません。
そのためお客様から「○○町で2,300円の気になる物件が出たみたいなんだけど、どう思います?」と連絡を戴きレインズで検索しても、登録がされていなければでてきません。
そこで致し方がなくお客様から業者名とおおよその概要を聞きとる(SNSなどで概要書を送付して戴くなど)どちらが不動産業者なのか良くわからない状態が起きてしまいます。
お客様が情報たいし敏感なのは、融資を組むなどして高額な不動産を購入する目的があればこそです。
そのような方が明らかに相場よりも高い物件を、特別な理由もなしに購入しようと思うはずがありません。
で、どうなるか
言わずもがな「いや~頑張って広告をしているんですが反応が芳しくないですね。お値段で調整したほうが良いかも……」なんて、業者のペースで進められてしまいます。
もちろん法律上で問題がある訳ではないですし、それが営業テクニックだと開き直れればそこまでなんですが……道義的にどううなんでしょうか?
もちろん多くの不動産業者は誠実にビジネスをしているのですが、一括査定で複数の業者が同時にスタートした場合には、査定価格を上げて目を引きたい心理も分かります。
それ以外にも下記のような点については、予め検討しておくことをお勧めします。
2.査定会社の数だけ訪問され、査定書が提出されるので混乱しやすい。
3.依頼に値しない会社が紛れ込んでいる。
4.一斉に連絡が来て鬱陶しい!
最後に個人的な意見ではありますが、一括査定は自分で業者を選択せずに査定が依頼できますので、業者探しに悩まないので「ラク」
メリットはこれのみです。
その代わり甘言に踊らされず業者を選定する「目」が必要です。
高額な不動産の売却・購入は、良い業者選びが何よりも大切だからです。
★荻原功太朗の業務について★
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