国が目標とする二酸化炭素削減を実現するためには、民生部門(一般家庭など)において目標とする削減量も達成が必須とされています。
目標を実現するためには、一定の住宅性能が求められます。
一般家庭においてエネルギー消費量が最も大きいのは冷暖房などですが、これは住宅性能が高くなることにより、一気に削減できます。
単純に表現すれば下記のようになります。
「住宅性能が高い=外気温の影響を受けづらい=少ないエネルギーで良好な室内環境を維持できる」
ということですね。
コロナの影響もありガソリン価格の高騰がニュースで報じられていますが、それだけではありません。
値上がりの背景には原油高がありますから、灯油などの石油精製品は全て価格が上昇していますし、輸入に必要な船賃などのコストも軒並み値上がりしています。
石油精製品は私たちの生活に密接に関係しており、原油価格の高騰は家計を直撃します。
市販品の値上げは、少しでも価格の安い店を探して買い置きするなど幾つかの方法が考えられますが、冷暖房などの室内環境を維持するのに必要な経費は限界があります。
室内を極端に「暑い、もしくは寒い」状態で我慢するのは、体に負担をかけ健康に影響を及ぼすのでお勧めできません。
昨今の技術革新により冷暖房エアコンなども省電力化がすすみ、従来よりもはるかに少ないエネルギーで利用することができます。
ただし、その機能を最大限に発揮するためには、ある程度の住宅性能が必須です。
当たり前の話ですが、家中が隙間だらけであればどんなに省エネタイプのエアコンでも、設定された室内温度を維持するためのフル稼働しますから、結果的にエネルギーコストは跳ね上がります。
これではエネルギーの垂れ流し状態ですので、あまりにも勿体ない。
これは住宅における「隙間」の話ですが、もう一つ大切なのが「基礎・壁・天井(屋根)」などの断熱性能です。
つまり断熱材自体の性能であり、その断熱材がどのような工法(内断熱・外断熱など)で充填されており、そして厚みはどれくらいあるかです。
当たり前の話ですが、熱還流率性能の高い断熱材を厚く充填すれば、それだけ断熱性能が高くなります。
もっとも断熱材を厚く充填するためには、比例して壁の厚みも必要になりますから、建築金額ばかり跳ね上がります。
何事も程々が大切ではありますが、いずれにしても「隙間と断熱性能」この2つが住宅の性能を図る目安であることに違いはありません。
専門的な話で恐縮ですが、このような性能は数値化され「Ua値・C値」として表されます。
せっかくですのでそれぞれを簡単に解説しておきます。
●Ua値
「外皮平均熱還流率」のことです。
室内側から見て「床(基礎)・壁(外壁)・天井(屋根)・窓(開口部)」などから外へ逃げる「熱」を平均した数値のことです。
当然のことですが、室内から室外へ熱が逃げないということは、反対に外気の影響も受けにくい訳ですから「冬暖かく・夏は涼しい」住宅である(高性能な住宅)といえます。
サッシ枠の種類(樹脂・木製・アルミなど)と、そこにはめ込むガラスの種類(単板・ペアガラス・トリプルガラ)
2.断熱材の種類と厚み
断熱材にはさまざまな商品がありますので細かい説明は省きますが、熱伝導率の低い(熱を伝導しにくい)断熱材を厚く充填すれば、壁の断熱性能が高くなります。
3.断熱材の施工方法
同等性能の断熱材を使用した場合には「内断熱・外断熱・W断熱(外・内の両方を採用)」の順番で断熱性能が高くなります。
●C値
「隙間相当面積」のことです。
Ua値は、設計段階で工法や使用する断熱部材の断熱性能から計算した、建物の断熱性能であることにたいし「C値」は建物の「気密性能」を表します。
断熱性能が高くても隙間がある家は、例えるなら
「高性能なダウンジャケットを着ても、サイズが合わずに裾や襟元から風が入り込んでしまう状態」です。
このように住宅における室内環境を快適にして、なおかつ冷暖房エネルギーを削減するには建物自体の性能が欠かせない訳ですから、日本における建物の性能レベルを底上げしたいのが政府の考えです。
ところが、そのような政府の思惑とは裏腹に、一般的な住宅の選択基準は「価格・立地・広さ・間取り」です。
これは皆様も心当たりがあるのではないでしょうか?
不動産広告で「住宅性能0.24w/(㎡・k)の高性能住宅」なんて見出しが躍っても、一般の方にはなんのことか分かりませんし、まったくといって良いほど興味のわかない表現に過ぎません。
このような現状で遅々として進まぬ住宅性能向上や省エネ設備機器導入ですが、状況を打破すべく国交省を主体として、住宅広告サイトに掲載される新築住宅を対象とした「年間目安光熱費」を表示する制度の導入が決定されました。
つまり難解な数字ではなく、具体的な年間光熱費などの金額を掲載して、住宅性能と連暖房コストについての理解を深めようとする試みです。
当面の表示は新築分譲(マンション・戸建て)と、新築賃貸住宅が対象とされているが、反応を見て将来的に既築住宅(中古住宅)への波及も視野に入れられています。
表示はあくまでも「任意」であって「義務」ではありません。
表示は新築分譲が2022年4月から、新築賃貸が2022年10月から開始されます。
表示するデータは建築士により、住宅のエネルギー消費性能計算プログラムを用いて計算され、試算結果は具体的に下記のような、年間エネルギー使用量を金額に換算して表記される予定です。
「住宅の省エネ性能の光熱費表示検討委員会」に参加した不動産業の代表は大手不動産業者の方だが否定的意見も多かったようです。
たしかにそうです。
表示される金額は、あくまでも机上計算による「目安」ですから、実際に使用する人の使用頻度や方法により、実際の金額は異なります。
分かる人は良いのですが、表現方法によっては誤解を与える原因になりかねません。
国交省の資料として公表されている質疑事項でも、似たような意見が散見されます。
もっとも主催が国交省・経産省・環境省の三省連合ですから、そのような意見が通るはずもなくゴリ押しで決定されました。
とくに賃貸や売買などの仲介営業マンは、これまで住宅性能について頓着してこなかった面もあり、★マークで表示されるBELS性能の意味合いも知らない方が多く、ましてやその根底にある「Ua値・C値・Q値」などについて計算方法も含め、端的に説明できる営業がどれほどいるのか疑問が残ります。
もっとも新築住宅の営業マンでも、これら性能については設計部門にまかせきりで、マニュアル通りの説明には長けていても、踏み込んだ質問をするとアタフタする人が多くいるのだから、仲介営業に限ったことではありません。
いずれにしも、表示は任意であると言え決定されました。
当面は、意見交換会に参加していた大手業者を中心として掲載されていくかと思いますが、年間光熱費が「見えている」ほうが、最終的な選択肢に残る可能性が高いでしょうから、そのうちに多くの業者が表示するようになっていくのではないかと考えられます。
住宅を選ぶ場合に性能は大切。
覚えておいて損のない判断基準の表示が、始まります。
★荻原功太朗の業務について★
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