「インフレだから不動産は持っていれば安心」——そう思っていませんか?
実は今、不動産投資のプロである機関投資家が運用するJ-REIT市場で、極めて深刻な事態が進行しています。
2025年のJ-REIT増資額はリーマン・ショック以来の低水準に落ち込み、57銘柄中55銘柄がNAV倍率1倍割れという異常事態に。
記事リンク→JREIT増資額、リーマン以来の低水準 株価割安・不動産高騰が逆風(日本経済新聞)
プロが「成長できない」と判断している不動産市場で、個人の築古アパートオーナーはどう動くべきなのでしょうか。
目次
- プロ投資家が不動産から逃げ始めている?J-REIT市場の異常事態
- NAV倍率0.8倍が意味すること——市場は不動産価値を2割過大評価と判断
- 築古アパートオーナーが直面する「三重苦」の構造
- 買取再販業者の仕入れ抑制が示す「売れなくなる未来」
- まとめ:出口が閉じる前に動くべき理由
プロ投資家が不動産から逃げ始めている?J-REIT市場の異常事態
不動産投資市場で、これほど多くの警告サインが同時に点滅している状況は珍しいのではないでしょうか。
2025年のJ-REIT(不動産投資信託)の増資額は、1,034億円にとどまりました。
これは直近5年平均の3,822億円と比較して約4分の1という極めて低い水準であり、リーマン・ショックの影響があった2009年(892億円)以来の低水準です。
なぜこれほど増資が減っているのでしょうか。
J-REITは、投資家から資金を集めて不動産を購入・運用し、その賃料収入を分配金として還元する仕組みです。
成長するためには新たな不動産を取得する必要があり、そのための資金調達手段が「増資」です。
しかし今、その増資ができない状況に陥っています。
過去ログ→【インフレで株価最高値更新!でも不動産は売れない!?】過去10年のリターン比較で見えた、宇都宮市で「今すぐ売るべき」不動産とは?
NAV倍率0.8倍が意味すること——市場は不動産価値を2割過大評価と判断
増資できない最大の理由は、NAV倍率が1倍を大きく下回っていることにあります。
NAV倍率とは、株式のPBR(株価純資産倍率)に相当する指標で、J-REITが保有する不動産の時価評価額(鑑定評価額)に対して、市場でついている価格がどれくらいかを示すものです。
2025年2月末時点のJ-REIT市場全体のNAV倍率は0.84倍。
そして驚くべきことに、全57銘柄中55銘柄がNAV倍率1倍を下回っているという異常事態です。
これが意味することは何でしょうか。
NAV倍率0.8倍ということは、市場が「この不動産の鑑定評価額は2割過大評価されている」と判断していることを意味します。
つまり、不動産鑑定士が「100億円の価値がある」と評価した不動産に対して、市場は「実際は80億円の価値しかない」と見ているのです。
この状況でJ-REITが増資を行うとどうなるか。
NAV倍率0.8倍で増資すると、既存投資家の持分価値が希薄化してしまいます。
100万円の価値があった投資口が、増資後には90万円に下がってしまうようなイメージです。
これは既存投資家の利益を損なうため、運用会社としては増資に踏み切れないのです。
増資できない=新規物件を取得できない=成長できない
この悪循環に、プロの不動産投資市場が襲われています。
築古アパートオーナーが直面する「三重苦」の構造
では、このJ-REIT市場の異変は、宇都宮市内で築古アパートを所有する個人オーナーにとって何を意味するのでしょうか。
実は、J-REITが直面している問題と全く同じ構造的な課題が、個人の築古アパートにも突きつけられています。
第一の苦:修繕コストの構造的上昇
わずかここ5年余りで、建設資材コストは40%ほども上昇しています。
公共工事の単価は13年連続で上昇中で、2025年度は前年比6.0%増。
10年前と比較すると公共工事は約5割高い水準です。
ここで重要なのは、この上昇が「一時的なもの」ではなく「構造的なもの」だという点です。
建設業界の人手不足は2024年問題・2025年問題で加速しており、若手の就業者は全体の1割強しかいません。
しかも、世界的な資源高騰でと円安の影響で、さらなるインフレの圧力が強まっています。
つまり、今後も修繕費は上がり続けると考えるのが合理的です。
築20年を超えるアパートでは、給湯器・エアコンの交換、外壁塗装、屋上防水といった大規模修繕が必要になります。
建材・工事費ともに、さらなるインフレ圧力により、今後も大幅な負担増になることは目に見えています。
第二の苦:金利上昇による「持つコスト」の増大
30年ぶりの金利水準となった今、変動金利で借入をしているオーナーは支払利息の増加に直面しています。
しかし、それ以上に深刻なのは「売却時の買主(他の投資家)の購買力低下」です。
投資用物件の買主もたいていは融資を使います。
金利が上がれば、同じ返済額で借りられる金額は減少します。
つまり、金利上昇は投資家の購買力を直接的に削り、売却価格の下押し圧力となります。
過去ログ→【2026年の宇都宮市不動産マーケット大予測!】30年ぶりの金利水準で何が変わる?「価格下落」より先に来る「売れない時代」とは!?
第三の苦:家賃を上げられない「天井」
「インフレで物価は上がっているのに、地方の家賃は上げられない」これが宇都宮市の現実です。
なぜでしょうか。
理由は単純で、入居者の実質賃金が上がっていないからです。
エンゲル係数(食費の支出割合)は30%近くまで上昇しており、入居者の「家賃に回せるお金」は限界に近づいています。
人口流入の続いている首都圏と違い、宇都宮市のような地方都市では、家賃を上げれば退去されるリスクがあり、結局は周辺相場に合わせざるを得ません。
維持コストは上がり続けるのに、収入は増えない。
これがJ-REITのNAV倍率0.8倍と全く同じ構造です。
市場は「この収益力では、資産価値は今の相場価格より2割低い」と判断しているのです。
買取再販業者の仕入れ抑制が示す「売れなくなる未来」
ここで注目すべきは、宇都宮市内で買取再販を手がける業者の動きです。
明らかに変化が見え始めています。
過去ログ→【宇都宮市の不動産はインフレ下でも下がり続ける!?その理由とは?】プロ業者でも売れずに大損!?仕入れを控える局面に移行か
金利上昇により、業者の資金調達コストも上がっています。
以前なら「とりあえず仕入れて、リフォームして転売すれば利益が出る」という計算が成り立っていましたが、今は仕入れ段階で慎重にならざるを得ない状況です。
これが意味することは何か。
「売りたい時に、すぐに買ってくれる相手がいない」という事態が、現実味を帯びてきています。
特に築古アパートの場合、買主になり得るのは投資家か買取再販業者です。
その買取再販業者が仕入れを抑制し始めているということは、出口が徐々に閉じつつあるということです。
「修繕前に売る」という選択肢が持つ意味
投資用物件の価格は収益還元法で決まります。
300万円かけて修繕しても、賃料が上がらなければ売却価格は上がりません。
むしろ、買取再販業者にとっては「自分たちのやり方でリフォームできる」状態の方が都合が良いのです。
オーナーが高い費用をかけて修繕しても、業者にとっては「余計なことをしてくれた」と感じることすらあります。
つまり、修繕費を使う前に売却する方が、手取り額は多くなる可能性が高いのです。
ただし、これは「今なら」の話です。
買取再販業者の仕入れ抑制が本格化すれば、そもそも「買ってくれる相手がいない」状況になりかねません。
まとめ:出口が閉じる前に動くべき理由
J-REIT市場では、57銘柄中55銘柄がNAV1倍割れを起こし、増資額はリーマン・ショック以来の低水準。
プロの機関投資家が「不動産投資では成長できない」と判断していることは明らかです。
そして、個人の築古アパートオーナーも全く同じ構造的な問題に直面しています。
修繕費はここ5年でで30%あまり上昇し、今後も上がり続けるはほぼ確実です。
30年ぶりの金利水準で「持ち続けるコスト」は増大し、一方で入居者の実質賃金低下により家賃を上げることは困難です。
維持コストは上がり続けるのに、収入が増えない。
これがNAV倍率1倍割れと同じ構造なのです。
さらに、止まらない円安の影響で、日銀は利上げを継続すると、予想されています。
金利負担の増加が続けば、投資物件への資金の流れに更なるブレーキがかかり、出口も閉ざされてしまいます。
プロが増資を控え、買取再販業者が仕入れを抑制し始めている市場環境で、個人が築古アパートを持ち続けることのリスクは年々高まっています。
出口が完全に閉じられ、逃げ場が無くなる前に、選択肢があるうちに動く、それが今、この局面で求められる判断ではないでしょうか。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年1月15日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★

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