2026年1月20日、金融市場に衝撃が走りました。
長期金利の指標となる10年物国債利回りが一時2.350%に上昇。1999年2月以来、実に27年ぶりの高水準です。
さらに40年債利回りは史上初めて4%台に乗せ、一日の上昇幅が0.2%を超えるという極めて異例の事態となりました。
記事リンク→国債で細る安定保有層、超長期は海外勢が過半 40年債利回り初の4%(日本経済新聞)
記事リンク→超長期債利回り急上昇、40年債初の4%乗せ 財政懸念で売りに拍車(日本経済新聞)
日経新聞は「トラス・ショックの様相」「高市ショック」と報じ、1980年代から市場を見てきた専門家は「債券市場が間違った政策に対して警告を出している」とコメントしています。
この金利急騰、住宅よりも真っ先に影響を受けるのが事業用物件です。
なぜなら、住宅は「住みたい人」が買いますが、事業用物件は「利益を出したい人」しか買わないからです。
金利が上がれば採算が合わなくなり、買い手は一斉に市場から退場します。
事業用物件を住宅と同じ感覚で持ち続けていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
金融市場が大きく動き始めた今、事業用物件オーナーが知っておくべき現実をお伝えします。
目次
- 住宅と事業用物件、決定的に違う「買い手の性質」
- マンションデベロッパーの撤退が事業用地を直撃
- バブル期の教訓と、今回の危うさの違い
- 金利上昇が事業用物件を直撃する理由
- 「売れる今」と「売れなくなる将来」の分岐点
- まとめ:事業用物件オーナーが今すべきこと
住宅と事業用物件、決定的に違う「買い手の性質」
不動産売却を考えるとき、多くの方が見落としがちなポイントがあります。それは「誰が買うのか」という根本的な問題です。
住宅の場合、買い手は「そこに住みたい人」です。
人間にとって、衣食住は欠かせないものであり、住宅には絶対的な需要があります。
子育て世帯が学区を考えて選ぶ、転勤で宇都宮に来た方が通勤の便を考えて選ぶ、高齢のご夫婦が病院や買い物に便利な場所を選ぶ、いずれも「生活のため」という切実なニーズがあります。
一方、事業用物件はどうでしょうか。
投資家、事業拡大を考える企業、新規出店を狙うテナント、いずれも「利益を出すため」に買う人たちです。
ここに決定的な違いがあります。
住宅は「住む場所が必要」という人間の根本的なニーズに支えられています。
景気が悪くなっても、人は住む場所を必要とします。
だから住宅市場は、景気変動の影響を比較的受けにくいのです。
しかし事業用物件は違います。
「利益が出る見込みがなければ買わない!」
これが事業用物件の買い手の本質です。
投資家は利回りで判断し、事業者は採算で判断します。
感情や生活の必要性ではなく、冷徹な数字のみが重要視されます。
止まらない金利上昇での負担増、インフレによる建築コストの上昇よって、不動産ビジネスの採算性は急速に悪化してきており、「買い手の限定性」が年々厳しくなっているを現場で感じています。
住宅なら「この街に住みたい」という動機だけで購入に至ることがありますが、事業用物件で「この物件が好きだから」という理由で買う人はまずいません。
これを分かりやすく例えるなら、住宅市場は「毎日必ず食べる米の市場」、事業用物件市場は「景気がいい時だけ売れる高級ワインの市場」のようなものです。
米は景気が悪くても売れますが、高級ワインは真っ先に買い控えの対象になります。
宇都宮市内でも、この傾向は顕著に表れています。
コロナ禍では飲食店舗の空きが急増し、テナント募集の看板があちこちに立ちました。
一方、住宅市場は在宅勤務の普及でむしろ活況だったのです。
事業用物件は「景気がいい時に売る」のが鉄則です。
これを忘れると、売りたい時に買い手がいないという最悪の事態に陥ります。
マンションデベロッパーの撤退が事業用地を直撃
事業用地の売却を考える際、見落とされがちな重要なポイントがあります。それは「大口の買い手」の存在です。
事業用地、特にまとまった広さのある土地の場合、最も有力な買い手候補はマンションデベロッパーでした。
彼らは数千万円から数億円規模の土地を一括で購入し、分譲マンションを建設して販売しています。
このビジネスモデルが、事業用地の流動性を支えてきたのです。
しかし今、この構図が大きく崩れ始めています。
「駅徒歩5分圏内でなければ開発しない」という現実
以前のブログでもお伝えしましたが、複数のマンションデベロッパーと話をする機会があり、彼らの開発方針は極めて明確でした。
「JR宇都宮駅から徒歩5分圏内でなければ開発しない」
過去ログ→【宇都宮市で不動産を売りたいなら急いだほうがいい!?】マンション開発の限界が迫っている!
これは何を意味するのでしょうか。
建設コストの高騰により、もはや駅至近の確実に売れる立地でなければ、事業として成立しないということです。
東京都心部のような投機マネーが流入しにくい宇都宮市では、新築マンションの販売価格には明確な上限があります。
購入者の大部分が実需であり、年収に基づいた現実的な予算で購入するからです。
つまり、売上単価を東京のように大幅に上げることができないにも関わらず、建設コストは全国一律で上昇しているため、より厳しい採算環境に置かれているのです。
新築マンションが売れない時代に
栃木県の新築マンション年収倍率は前年の8.88倍から12.03倍へと急騰しました。
全国でも最大級の上昇率です。
過去ログ→【栃木県の新築マンション年収倍率が12倍超に急騰!】中古需要は増加、しかし恩恵を受けるのは一部エリアだけ?宇都宮市の不動産市場の現実とは・・
年収倍率12倍というのは、年収500万円の世帯なら6000万円のマンションを買わなければならないということ。これはもはや、一般的な会社員家庭では手が届かない水準です。
結果として何が起きているか。
新築マンションの売れ行きが明らかに鈍化しています。
宇都宮市内でも、以前なら完成前に完売していた物件が、完成後も売れ残るケースが増えています。
複数のデベロッパーからは「想定していた価格では買い手がつかない」という声を聞くようになりました。
実際、現在販売中の新築マンションも、販売に苦戦しているケースが少なくありません。
駅徒歩5分圏外の事業用地は「買い手不在」に5分圏内でもリスクが
デベロッパーの資金が駅徒歩5分圏内に集中するということは、それ以外のエリアには投機的な資金が流入しないことを意味します。
つまり、駅から離れた事業用地を売却しようとしても、マンションデベロッパーという大口の買い手は最初から候補に入らないのです。
残る選択肢は「土地を分割して個人向けに売る」か「大幅に値下げして別の買い手を探す」かのいずれかです。
土地の分割には測量費用、分筆登記費用、場合によっては開発許可の取得など、相当なコストと時間がかかります。
しかも分割したからといって、すぐに買い手が見つかる保証はありません。
さらに深刻なのは、駅徒歩5分圏内であっても、マンションが売れなければデベロッパーは次の土地を仕入れる意欲を失うということです。
在庫を抱えたまま新たな土地を仕入れれば、資金繰りが悪化します。
金利上昇局面では、その負担はさらに重くのしかかります。
大口の買い手がまだ市場にいる今のうちに売却を検討する。
これは事業用地オーナーにとって極めて重要な判断です。
バブル期の教訓と、今回の危うさの違い
ここで、少し昔の話をさせてください。
1980年代後半のバブル期、宇都宮市内でも商業地の価格は急騰しました。
大通り沿いの店舗用地、駅前の商業ビルでは、「土地は必ず上がる」という神話のもと、多額のマネーが流れ込みました。
その後、何が起きたかは皆さまご存知の通りです。
バブル崩壊後、商業地の価格は暴落し、取引そのものも停滞し、その後30年以上にわたって低迷を続けました。
「あの時売っておけば」「なぜあんな高値で買ってしまったのか」
宇都宮市内でも、そんな後悔の声は少なくありませんでした。
バブル期と今、決定的に違う点
では、今の状況はバブル期と同じなのでしょうか。
残念ながら、今回はバブル期よりもさらに厳しいと言わざるを得ません。
バブル崩壊後、確かに価格は暴落しました。
しかし当時の日本には、まだ「人口増加」という追い風がありました。
世帯数も増え続けていました。
だからこそ、30年かかったとはいえ、一部のエリアでは価格が回復する余地があったのです。
しかし今回は違います。
人口減少と世帯数減少という、不可逆的な構造変化が同時進行しています。
宇都宮市の人口は2020年の約52万人をピークに減少に転じています。
そして今後、団塊世代の高齢化により、世帯数も本格的な減少局面に入ります。
これが事業用物件にとって何を意味するか。
店舗であれば、お客さんの数が減ります。
オフィスであれば、働く人の数が減ります。
賃貸物件であれば、借り手の数が減ります。
需要の「パイ」そのものが縮小していくのです。
バブル後の「30年塩漬け」が再び起きる可能性
バブル崩壊後、多くの事業用物件オーナーが「いつか価格が戻るはず」と待ち続けました。
しかし、価格が戻ることはありませんでした。
今回、同じように「待てばいつか上がる」と考えていると、バブル後の二の舞になる可能性があります。
しかも今回は、人口減少という追加のマイナス要因があります。
バブル後は「価格は下がったが、需要はあった」という状況でした。
しかしこれからは「価格が下がり、なおかつ需要も減る」という二重苦の時代に突入するのです。
バブル期を経験された世代の方なら、この危うさがお分かりいただけるのではないでしょうか。
金利上昇が事業用物件を直撃する理由
冒頭でお伝えした金利の影響が出るのは、これからです。
「金利が上がると不動産価格が下がる」——これはよく言われることですが、事業用物件においては、この影響が住宅よりもはるかに深刻に表れます。なぜでしょうか。
理由1:収益還元法という価格決定メカニズム
事業用物件の価格は「収益還元法」で決まることが多いです。
簡単に言えば、「この物件からどれだけ収益が得られるか」を基に価格が算出されます。
ここで重要なのは「期待利回り」という概念です。
投資家は「国債より高い利回りが得られなければ、リスクのある不動産に投資する意味がない」と考えます。
国債利回りが0.5%だった時代なら、不動産で4%の利回りが取れれば十分魅力的でした。
しかし国債利回りが2%を超える今、投資家は「最低でも5〜6%は欲しい」と考えるようになります。
利回りが上がるということは、同じ収益でも物件価格が下がるということです。
年間収入100万円の物件で計算すると、利回り5%なら2000万円の価値がありますが、利回り8%なら約1250万円です。
同じ収益でも、金利負担が増え、利回りの必要水準が上がると、価値は下がるのです。
理由2:買い手の資金調達コスト上昇
事業用物件の買い手は、多くの場合融資を利用します。
金利が上がれば、同じ返済額で借りられる金額は減少します。
さらに深刻なのは、金融機関の融資姿勢の変化です。
低金利時代には「不動産担保があれば貸す」という姿勢だった金融機関も、金利上昇局面では審査を厳格化します。「この物件で本当に返済できるのか」をより厳しく見るようになるのです。
結果として、「買いたくても買えない」買い手が増えていきます。
理由3:事業環境の悪化
金利上昇は企業の設備投資意欲を冷やします。
借入コストが上がれば、新規出店や事業拡大を見送る企業が増えます。
テナント需要が減れば、空室率は上がり、賃料は下がり、物件の収益力は低下します。
収益力が下がれば、収益還元法で算出される物件価格もさらに下がる。
この悪循環が始まるのです。
「売れる今」と「売れなくなる将来」の分岐点
ここまで読んで、「じゃあ、いつ売ればいいの?」と思われた方も多いでしょう。
結論から言えば、事業用物件の売却は「景気がいい時」「金利が低い時」「買い手がいる時」が鉄則です。
そして現在、この3つの条件がすべて悪化しつつあります。
なぜ「今」が分岐点なのか
2025年末から2026年にかけて、日本の金融環境は明らかに転換点を迎えています。
日銀は政策金利を0.75%に引き上げ、30年ぶりの金利水準となりました。
そして長期金利は27年ぶりの高水準です。
しかし、まだ市場は「完全に冷え込んでいる」わけではありません。
今はいわば「変わり目」の時期です。
住宅市場は、住みたいという実需に支えられているため、まだ比較的堅調です。
そしてその余波で、事業用物件市場もまだ「かろうじて買い手がいる」状態が続いています。
しかしこの状態がいつまで続くかは分かりません。
景気の先行き不透明感が強まれば、事業用物件の買い手は真っ先に市場から退場します。
「今なら売れる」が「来年は売れない」になる可能性。
これは決して大げさな話ではありません。
事業用物件の「流動性リスク」
住宅と事業用物件のもう一つの大きな違いは「流動性」です。
住宅は、価格を適正に設定すれば、比較的短期間で売却できます。
買い手の母数が多いからです。
しかし事業用物件は違います。買い手が「投資家」と「事業者」に限定されるため、そもそも買い手の母数が少ない。
その少ない買い手が市場から退場してしまえば、価格を下げても売れないという状況が生まれます。
宇都宮市内でも、過去に何度か見られた光景があります。
「もう少し待てば高く売れるかも」と様子見しているうちに、市場環境が激変し、売りたくても売れなくなってしまったオーナーの姿です。
事業用物件は「売れる時に売る」のが鉄則。買い手がいる時こそが売り時なのです。
まとめ:事業用物件オーナーが今すべきこと
事業用物件を所有されている方に、現場からの率直なアドバイスをお伝えします。
まず、住宅と同じ感覚で持ち続けることの危険性を認識してください。
住宅は「住みたい」という実需に支えられていますが、事業用物件は「利益が出る」という期待だけで成り立っています。
景気が悪くなれば買い手は消え、金利が上がれば価格は下がります。
この構造的な脆弱性を理解しておくことが重要です。
次に、今の市場環境を冷静に見極めてください。
27年ぶりの金利水準、景気の先行き不透明感、そして事業者の投資意欲の減退。
事業用物件を取り巻く環境は、明らかに厳しさを増しています。
しかしまだ「買い手がゼロ」になったわけではありません。
今はまさに「分岐点」です。
そして、売却を検討しているなら、先延ばしにしないでください。
事業用物件の売却で最も避けたいのは「売りたくても売れない」状態に陥ることです。
価格を下げても売れない。なぜなら買い手がいないからです。
特に以下のような物件をお持ちの方は、早めのご相談をお勧めします。
・テナントが撤退して空きが続いている店舗
・築年数が経過した収益物件(特に大規模修繕が必要な物件)
・相続で引き継いだが活用の目途が立っていない事業用地
・将来的な売却を考えているがタイミングを迷っている物件
これらに該当する方は、市場環境が急速に変化しつつある今、専門家に相談されることをお勧めします。
事業用物件は「待てば上がる」ものではありません。
「売れる時に売る!」これが事業用物件売却の鉄則ではないでしょうか。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年1月25日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★



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