転勤辞令が出たとき、多くの方が直面する大きな悩み。それは「今の家をどうするか?」という問題です。
売却するか?賃貸に出すか?
一見、賃貸に出せば家賃収入が得られて良さそうに思えますが、現場で20年以上転勤族の方々の相談を受けてきた私の結論は明確です。
結論から言うと、「売却一択!」です。
この結論に至る理由を、今回は詳しくお話しします。
宇都宮市の転勤族を取り巻く環境
宇都宮市は首都圏に近い立地もあり、市内には様々な大手企業にお勤めの方が数多く居住されています。
大手金融機関や保険会社のようなもともと移動の多い職場にお勤めの方は、そもそもマイホーム購入に慎重になりがちです。
一方で、宇都宮市内や周辺の大手製造業にお勤めの方は、基本的に転勤がないことを前提にマイホームを購入されるケースがほとんどです。
しかし、そんな「転勤はない」と思われていた職場でも、まさかの転勤辞令が出ることがあります。
企業の組織再編、新拠点の立ち上げ、親会社への出向など、予期せぬ人事異動は決して珍しいことではありません。
ではなぜ転勤となった際に、今住んでいるマイホームを賃貸ではなく売却を選ぶべきなのか、大きな3つ点に絞って解説します。
理由1:賃貸物件になった瞬間、「投資物件」の基準に
まず理解していただきたいのは、あなたがマイホームとして購入した物件も、賃貸に出した瞬間から「投資物件」として市場で評価され始めるということです。
マイホーム市場と投資物件市場では、価格を決める基準が全く異なります。
マイホームなら「住みやすさ」「デザイン」「学区」などの感情的な価値も評価されますが、投資物件は冷徹に「利回り」ベースでのみ判断されます。
宇都宮市内の住宅地で一般的な賃料から逆算すると、新しい物件であっても投資家が求める利回りは7〜8%程度が相場です。
例えば、新築時3500万円で購入した物件の家賃が15万円程度だとすると、年間180万円の収入で利回りは5.1%です。
しかし投資家は7〜8%を求めるため、投資物件として売却する場合の適正価格は2250万円〜2570万円程度となってしまいます。
しかし、同じ物件を入居者なしのマイホームとして売却する場合、立地や建物の魅力によっては3000万円程度で売れる可能性があります。
つまり、賃貸物件として売却すると、マイホーム市場より数百万円以上も安くなってしまうリスクがあるのです。
理由2:流動性の大幅な低下が最大のリスク
一般住宅を賃貸物件として市場に出し、入居者が付いてしまうと、「マイホーム物件」→「投資物件」となり、購入を検討するのは投資家のみに限定されてしまいます。
なぜなら、マイホーム購入者はこれから「自分が住むため」の物件を探しているのであって、既に入居者がいる賃貸中の物件には興味を示しません。
そのため、一旦賃貸物件となると購入者の対象の数は激減します。
この購入希望者の大幅な減少が、売却時の深刻なリスクとなります。
買い手候補が限定されることで売却期間が長期化し、最終的に大幅な値下げを余儀なくされるケースが少なくありません。
つまり、あなにとっては思い入れのあるマイホームでも、投資家にとってはひとつの「投資物件」として感情移入はなく、純粋に儲かるかどうかにしか興味がありません。
もともと自分が「終の棲家」として暮らすつもりで購入したマイホームでは、投資リターンを考えて企画された住宅ではないため、投資家が求める価値との差に大きな開きがあるのです。
賃貸中であることは、投資家にとっては全く問題ありませんが、マイホーム市場に比べて投資物件では常に利回りベースの厳しい査定基準で評価を行います。
そのため、もともと採算度外視のマイホームとして企画された建物を賃貸に出すのはそもそビジネスとして効率が悪いのです。
そのため、賃貸に出した後に売却を行うと、物件の流動性が低下し、急に現金が必要になったとき、売りたいときに売れないのが最大のリスクなのです。
理由3:「後で使うかも」は幻想に過ぎない
実際は、大多数の方は転勤の辞令が出たら売却の選択をします。
しかし「将来、また宇都宮に戻ってくるかもしれないから」という理由があることで、売却でなく賃貸を選択される方が多いのも事実です。
しかし、現実はどうでしょうか。
転勤族の方々を長年見てきて断言できるのは、「後で使うかも」という物件のほとんどは結局使われないという事例を数多く散見しています。
なぜなら、数年も経てばライフスタイルは劇的に変化するからです。
以前のブログでもお伝えした重要なデータがここで活きてきます。
過去ログ→【これから宇都宮市でマイホーム購入するなら、知っておかないと後悔する!?】住宅ローン実際の完済期間は「20年以下」が多数派から見えてくることとは?
なんと、住宅ローンは35年の長期ローンを組んでも平均完済期間はわずか、14.4年で終わるという現実です!
データからわかることは、マイホームは「一生住む場所」ではなく、「15〜20年の一時的な住まい」として考えるべきなのが示唆されます。
お子さんの成長、ご夫婦の年齢、収入水準、価値観。すべてが変わります。
5年前に「理想的」だった家が、5年後も同じように魅力的に感じられることは、むしろ稀です。
全国的な統計を見ても、転勤で賃貸に出した物件に再び住むケースは非常に少数です。
転勤期間が数年に及ぶと、家族構成の変化、子どもの成長による学区の重要度変化、収入水準の変化、そして何より住環境に対する価値観の変化により、以前の住まいでは満足できなくなるケースがほとんどなのです。
賃貸経営は「事業」である現実を理解すると・・
もし不動産賃貸を検討されているなら、これは立派な「事業」であることを理解してください。
入居者募集、家賃回収、クレーム対応、修繕手配、退去時の原状回復、確定申告での不動産所得申告など、やるべきことは山積みです。
宇都宮市内の賃貸市場は、LRT開業効果もあって東側エリアでは堅調ですが、それでも空室リスクは常に存在します。
入居者が決まらない期間の固定費負担、突然の退去、設備の故障など、予期せぬ出費も覚悟しなければなりません。
また、賃貸経営には専門的な知識も必要です。
敷金の扱い方、退去時の原状回復費用の負担区分、入居者との契約書の内容など、間違えれば大きなトラブルに発展する可能性があります。
さらに深刻なのは、賃貸物件では予期できない大きなリスクが存在することです。
入居者の自殺や孤独死といった事故が発生すれば、その物件は「事故物件」扱いとなり、資産価値は大幅に下落してしまいます。
こうしたリスクは、どんなに良い入居者を選んでも完全には避けられないのが現実です。
少々の利益のために、もしものときに多大なリスクを負わされるのは、割に合わない選択ではないでしょうか。
投資家志望でもない一般の皆さんが、片手間でできるほど不動産賃貸業は、甘い世界ではありません。
宇都宮市特有のマイホーム賃貸市場
宇都宮市の賃貸市場には地方都市ならではの、賃貸需要の特徴があります。
まず、車社会である宇都宮では、駐車場が十分に確保できていない物件の賃貸需要は限定的です。
ファミリー向け一般住宅地の場合、駐車場は2台以上確保できていないと、そもそも入居者が見つかりにくいです。
ただし、宇都宮市のような地方都市の場合、子育て中のニューファミリー層は基本、マイホームを購入する前提で住宅マーケットが構成されており、賃貸物件はつねに供給不足がちです。
そのため、しかたなく、数年の短期の転勤とわかっていても、予算に余裕のある方はマイホームを購入して快適に過ごし、転勤が決まったらさっさと売却する方もいらっしゃいます。
ただし、それでもファミリー層の賃貸需要は限定的で、賃貸マーケットのメインは単身者向けとなります。
税制面でも売却が有利
税制面から見ても、売却の方が有利です。
マイホームの売却には「3000万円特別控除」という強力な優遇措置があります。
これは、マイホームを売却した際の譲渡益から3000万円まで控除できる制度で、多くの場合、売却益に対する税金を大幅に軽減できます。
一方、賃貸収入は総合課税の対象となり、給与所得などと合算して課税されます。
宇都宮市内にお勤めの一般的なサラリーマンの賃料水準では、手取り収入は思っているより少なくなることも多いです。
また、将来的に賃貸物件として売却する場合、この3000万円特別控除は使えません。
つまり、賃貸に出してしまうと、税制上の大きなメリットを永久に失ってしまうのです。
それでも賃貸を選ぶべきケースはあるのか?
ここまで売却を勧めてきましたが、例外的に賃貸を選択すべきケースもあります。
それは、明確に不動産投資家として事業を行う意思がある場合です。
賃貸経営に必要な知識を身につけ、継続的に物件の管理・運営を行う覚悟がある方なら、賃貸も選択肢の一つになります。
それでも、不動産投資家を目指すなら、もともと収益目的でないマイホームを賃貸物件化するより、もともと投資用に設計されたアパートやマンションを購入し、大家業を始める方がよっぽど効率的です。
また、立地が非常に良く、長期的に地価上昇の恩恵を安定して受けられるような物件なら、賃貸に出し、長期のキャピタルゲイン(値上がり利益)をねらう余地もあります。
具体的には、JR宇都宮駅徒歩5分圏内、LRT電停徒歩3分圏内、大通り沿いの利便性の高い立地などです。
しかし、これらの条件を満たす物件は限られており、大多数の方にとっては売却が現実的な選択となります。
まとめ:現場からの率直なアドバイス
転勤が決まった時点で、まず考えるべきは「売却」です。
賃貸に出すという選択肢は、一見魅力的に見えますが、実際には多くのリスクと手間を伴います。
投資物件としての価格評価、流動性の低下、予期せぬ空室や修繕費用、そして継続的な管理業務。これらすべてを考慮すると、一般の方にはおすすめできません。
一方、売却なら住宅ローンを完済でき、新天地での生活に集中できます。
インフレで売却益が出ていても、3000万円特別控除などの税制優遇も活用でき、精神的にもスッキリした状態で次のステップに進めます。
基本的にマイホームは住むためのものであり、投資のためのものではありません。
特に転勤という人生の転換点では、身軽になることが何より大切なことではないでしょうか。
今回の内容が皆さまのお役に立てば幸いです🙌
★荻原功太朗の業務について★
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