ついに、東京都心部でも再開発が「足踏み状態」に陥り始めています💦
→新宿駅前に異変…再開発が「足踏み状態」に 西南口の一等地が更地のまま やっかいな「悪循環」と「難工事」(東京新聞)
以前からこのブログでは、建設事業の供給制約の問題を取り上げてきましたが、ついに、東京都心、日本一のターミナル駅の駅前一等地でさえ、再開発ができない厳しい状況となっています。
都心でさえこの状況ですから、地方のインフラ整備や再開発に影響がないわけがありません。
さらに、昨今は人手不足、資材高騰だけでなく、コンクリートを作るための材料である軽量骨材の供給不足も深刻となっており、先行きはますます不透明になりつつあります。
過去ログ→【人手不足と資材高騰にプラスして新たな問題が!?再開発・インフラ整備の限界が迫る!】コンクリートの材料不足で宇都宮市のLRT西側延伸にも影響が!?
宇都宮市で暮らす者の一人として、LRT延伸や街がきれいに整備される再開発には大いに期待していますが、この状況を冷静に見れば、宇都宮市が推進するLRT西側延伸計画や街の再開発事業でも同様の困難に直面する可能性が高くなっています。
今回は、あえて「最悪のシナリオ」を想定し、LRT西側延伸の無期限延期となってしまった場合、宇都宮市の交通体系とまちづくりにどのような影響が出るか、そして不動産市場への波及効果について考えてみたいと思います。
1. LRT西側延伸計画の無期限延期シナリオ
現在、宇都宮市はJR宇都宮駅西口から教育会館前までの約5キロの区間への延伸を計画しており、当初の2030年代前半から、ピッチを上げて2030年への開業を目指しています。
しかし、建設コストの大幅上昇や施工業者確保の困難、自治体財政の悪化などが重なれば、目標の2030年から開業目標は徐々に後ろ倒しになり、やがて「時期未定」という無期限延期状態に陥る可能性も十分に考えられます。
そうなってしまうと、いつまでたっても着工の目処が立たず、計画の見直しが相次ぎ、いずれインフラ整備計画そのものが頓挫しかねません。
2. バス路線の崩壊プロセス
LRT西側延伸の無期限延期と同時に、市内バス路線の崩壊も進行するでしょう。
全国各地で運転手不足によるバス便数の削減は既に始まっており、採算悪化により料金値上げも続いています。
この料金値上げと利便性低下による利用者減少という悪循環が生まれ、近い将来には利用者の少ない郊外路線は廃止せざる得なくなります。
早朝・深夜便の廃止も避けられず、市のバス補助金も限界を迎えるでしょう。
さらに状況が悪化すれば、メインルートでも減便が進み最低限の本数のみの運行となり、市内全域で移動困難エリアが発生することが予想されます。
3. ライドシェアの無秩序な拡大
地方ではすでに公共交通の崩壊は現実の課題であり、公共交通の空白を埋める必要性に迫られ、ライドシェアサービスが急速に普及し始めています。
2024年4月に限定解禁された「日本型ライドシェア」は、この状況下で規制緩和が急速に進み、2025年には維新の会が提出した全面解禁法案が可決されることも予想され、そうなると宇都宮市内でも広く利用されるようになるでしょう。
→維新 ライドシェアを全面的に導入するための法案 国会に提出(NHK)
しかし、ライドシェアの無秩序な拡大は新たな問題を引き起こします。
ただでさえ少ないタクシーやバス事業者は、ライドシェアに乗客を奪われ、さらに苦境に立たされるでしょう。
また、スマホ操作が困難な高齢者などはライドシェアを使いこなせず移動手段が制限されてしまいます。
特に懸念されるのは「選別的サービス」の拡大です。
採算性の高いエリア・時間帯には多くのドライバーが集まる一方、採算性の低いエリア・時間帯では配車が困難になり、地域間格差が生じます。
宇都宮市内でも、ライドシェアの利便性の格差が不動産価格に大いに影響していくことが予想されます。
すでに宇都宮市内でも、Uber Eats(出前サービス)が普及していますが、サービスを利用できるのは限られた市の中心部だけであり、このような域内格差が更に拡大していきそうです。
不便な場所がもっと不便になり、価値を失っていく方向によりバイアスがかかっています。
4. コンパクトシティ構想の崩壊
宇都宮市が推進する「ネットワーク型コンパクトシティ(NCC)」構想は、LRT西側延伸の無期限延期とバス路線の崩壊により根底から揺らぐことになります。
拠点間を結ぶ公共交通の弱体化により拠点の連携機能が失われてしまうと、公共交通による利便性向上という誘因がなくなり拠点への集約が進まなくなります。
それと並行して、ライドシェアの普及により自動車依存型の生活様式が再び強化されると、郊外開発圧力が再び高まるでしょう。
当初の政策目標である集約型都市構造と現実の拡散型都市構造との乖離が拡大します。
本来目指していた「公共交通の整備→拠点への集約→公共交通の採算性向上→さらなるサービス向上」という好循環が、逆に「公共交通の弱体化→分散型開発の拡大→さらなる公共交通の採算悪化」という負のスパイラルに陥りかねません。
5. 不動産市場への波及効果
こうした交通体系とまちづくりの変化は、宇都宮市の不動産市場に大きな影響を与えるでしょう。
全国的に不動産マーケットは二極化を超え、三極化に向かっていると言われ始めています。
LRT延伸計画が頓挫してしまった場合における、宇都宮市内の不動産マーケットの3極化を予測してみます。
JR宇都宮駅周辺・東側LRT沿線エリア(全体の10~15%:価格維持・上昇エリア)
現在運行中のLRT東側区間の沿線不動産は、芳賀・高根沢工業団地や清原工業団地といった大規模な雇用の場が控えており、その価値は比較的安定していると見られます。
バス路線の崩壊が誰の目にも明らかになってくると、LRT沿線の利便性は高齢者を中心に大きな価値を持ってきます。
開業後に一定の価値上昇が見られましたが、「西側延伸の無期限延期」により、全線開通という将来価値が期待できなくなるとその価値はさらに高まります。
ただし、街全体として投資マネーの撤退は避けられず、停留所至近(徒歩5分圏内)の物件のみが価値を維持し、少し離れた物件は70%の「なだらかに下落を続ける地域」へと分類される可能性が高いと予想されます。
また、JR宇都宮駅周辺(徒歩10分圏内)はもっとも有望なエリアになる可能性が高いでしょう。
西側延伸予定ルート沿線(70%:なだらかな下落エリア)
西側延伸予定ルート(JR宇都宮駅西口~県教育会館)沿線の不動産には、想定より限定的な影響があると考えられます。
この区間はもともと市内バス路線のメインルートであり、バス減便後も基幹的な交通利便性は一定程度維持されるでしょう。
しかし、「LRT効果」による劇的な地価上昇を見込んで高値で取得された物件は、期待が剥落し損失を被る可能性があります。
東武宇都宮駅周辺もLRTによるJR駅との直結は実現しませんが、既存の都市機能の集積や基幹バス路線により、急激な価値下落は避けられると見られます。
郊外住宅地(15~20%:無価値・マイナスエリアも含む)
郊外住宅地では明確な二極化が進みます。
自家用車アクセスの良い立地やライドシェアの確保しやすい人口密集地は70%のなだらかな下落エリアとなる一方、公共交通が廃止されかつライドシェアドライバーも来ない過疎エリアは空き家が急増し、事実上の資産価値ゼロ物件が増加、最悪のケースでは負の資産価値を持つマイナス物件も出現するでしょう。
中心市街地商業不動産(価格維持の可能性)
中心市街地の商業不動産は、公共交通の衰退による影響を受けながらも、徒歩圏内に生活利便施設が集約している強みが再評価される可能性が高いと予想されます。
街の郊外から中心市街地を訪れる人が減少する一方で、中心部に居住する「街なか居住者」は増加する可能性があります。
歩いて買い物、医療、行政手続きなどが完結する環境は、高齢者や若年単身世帯に魅力的です。
現在、高騰している住宅の多くは「都心」「駅前・駅近」「大規模」「タワー」の4大条件を満たしていますが、宇都宮市の場合は「中心市街地」「徒歩圏内の生活利便性」が新たな価値基準となりそうです。
投資判断の変化と賢明な不動産戦略
特に注目すべきは「徒歩15分圏内の生活利便施設の充実度」です。
公共交通もライドシェアも信頼できない時代には、徒歩で日常生活が完結できる「歩いて暮らせるまち」の価値が再評価されるでしょう。
こうした厳しい見通しの中でも、賢明な不動産戦略として考えられるのは、行政・医療・商業など複合機能を持つ拠点の徒歩圏内物件への集中投資、新規開発より既存ストックの価値向上を重視するリノベーション、そして高齢者と若者が支え合える多世代共生型の住まい方への転換が必要になると思われます。
特に重要なのは「資産価値の保全」から「使用価値の向上」への発想転換です。
不動産価格の右肩上がりを期待する時代は終わり、実際の生活の質を高める不動産の使い方がより重要になっていくでしょう。
おわりに
今回は「あえて最悪のシナリオ」を描いてみました。
もちろん、こうした事態が現実になることを誰も望んでいません。
しかし、人口減少、少子高齢化、財政制約、建設の供給制約、世界的な資源・エネルギー制約という複合的な要因を考えると、時間の経過とともに状況は悪化してきており、都市計画の不確実性が大きく増しています。
重要なのは、こうした可能性も視野に入れた冷静な判断です。
特に不動産投資や購入においては、LRT西側延伸計画の実現性を慎重に見極める必要があります。
宇都宮市の未来は、LRT延伸計画が予定通り進むか否かで大きく二分されるでしょう。
特に不動産マーケットでは長期的な視点で考える必要があり、過度に楽観的な見通しに基づいた判断は大きなリスクを伴います。
私たちは「都市の縮小」という未体験の現象に直面しています。
この現実を直視し、持続可能な都市と不動産の在り方を真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか。
この記事が皆さまの考えるきっかけになれば幸いです🙌
★荻原功太朗の業務について★
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