宇都宮市が目指すまちの姿として、推進しているのが「ネットワーク型コンパクトシティ」です。
「ネットワーク型コンパクトシティ」とは、中心市街地や駅周辺、産業や観光に魅力がある地域などを拠点として集約(コンパクト化)し、それらを利便性の高い公共交通などで連携(ネットワーク化)した都市のことです。
宇都宮市だけでなく全国的に地方では、これから急速に人口減少や少子高齢化が進むことが確実ななか、身近なスーパーやドラッグストア等の閉店や病院がなくなることで、生活が不便になることが予想され、まちの魅力やにぎわいが失われることが懸念されています。
そのほかにも、電車やバスの利用者が減り、運行本数が減ることで移動手段がなくなり、病院や身近な店舗などに出かけることが不便になることも予想されています。
都市として、時代の変化へ対応するため、宇都宮市は東西の背骨として、LRTを整備し、公共交通のネットワークを再構築して、コンパクトシティ構想を推進している最中です。
LRTの東側整備が完了し、想定以上の大成功を収めた今、コンパクトシティ構想を進める上でも、LRT西側延伸の早期整備は、必要不可欠な状況となっています。
コンパクトシティ推進の課題は「クルマ依存」からの脱却
LRTの東側整備は大成功をおさめ、一見、順調そうに見える宇都宮市の「ネットワーク型コンパクトシティ」構想ですが、まだまだ道半ばです。
課題は、何と言っても「脱マイカー」、クルマ依存都市からの脱却です。
そもそも、街が無秩序に拡大拡散してしまった要因が、マイカーの普及によるモータリゼーションの進展です。
上の地図は、宇都宮市の1976年から2014年の建物用地の変化です。
約40年で、人口増加とモータリゼーションの進展に伴い、オレンジの色の建物用地が約2.5倍あまりにも急速に拡散拡大しました。
その一方で、農地や緑地は大幅に減少しています。
1976年には都市中心部にオレンジ色の建物用地が集約していましたが、2014年には都市中心部の拡大と同時に、郊外にまばらにスポンジ化した居住地が点在してしまったのがよくわかるはずです。
1975年から2015年の40年間で宇都宮市の人口は約1.4倍に増えました。
一方、同期間で建物用地は2.5倍あまりにも増加していますから、人口増加以上に無秩序に街が拡大拡散したことがわかります。
背景には、人口の増加以上に、核家族化が進んだこともあって、世帯数が増加したことも大きな要因となっています。
かつては憧れだったマイカーも、一家に1台から、一人1台が当たり前となり、不動産の需要も大きく変化しました。
道路の狭い旧市街地の住宅地は敬遠され、道路の整備された広い敷地の郊外の住宅地が人気となり、マイホームの必須条件として、駐車場は2台以上確保されるのが当たり前となりました。
マイカー移動を前提としたニュータウンは当然ですが、公共交通の利用には不便な立地がほとんどです。
宇都宮市の東側に新たな公共交通の軸としてLRTが整備されたとはいえ、依然として多くの方々はマイカーに依存した生活を続けており、街をコンパクトに集約していくためには、普段の生活の中で公共交通の利用をいかに促進していくかが課題となっています。
過去ログ→【LRT開業の影響でJR宇都宮駅の人流が2.5倍に!】脱クルマ社会が街の魅力を高める!?
過去50年余りで、人口増加と世帯数の増加で、無秩序に拡散拡大した街は、これから逆回転を始め、街の荒廃を防ぐためにも、都市をコンパクトに再整備し、集約化していくことが必要不可欠となっています。
公共交通の利用促進にキレイゴトはいらない!?
そもそも、一旦便利なマイカーライフに慣れてしまった方々に、公共交通の利用を促すのは至難の業です。
現実問題として、理路整然とキレイゴトを並べたところで、行動の変化を促すのは難しいでしょう。
宇都宮市と同様に地方都市では、盛んに公共交通の利用を促していますが、多くがこのようなキレイゴトを並べた広告が主流になっています😅
皆さんは、この広告を見て、使い慣れ、便利なマイカーから、公共交通に移動手段をシフトしたいと思いますか??
言いたいことはわかりますが、行動変化を促す効果には疑問を感じます💦
利用を促すなら、「健康・環境」より「おトク・便利・楽しい」を訴えるべきではないでしょうか。
渋滞緩和に向けては、不便を我慢するような記載より、時間通りに目的まで行ける利便性や、公共交通を便利にする公共投資を有権者に訴えることが望ましいと考えられます。
皆さんのまわりには、どれだけ自分の生活を犠牲にしてまで、環境に配慮する人がいますか?
ガソリン車からEVへのシフトを見ても、多額の補助金が出たり、燃費面でお得感があるから、価格が高く、遠方への外出が不便になっても、EVに乗り換える方が増えたのではないでしょうか。
つまり、キレイゴトだけでは人は動かないのです。
求められる公共交通の利用を促すアイデアとは!?
間違っても、SDGsや環境問題をゴリ押しし、不便を強いるようなアプローチは避けるべきでしょう。
キーワードは「おトク♪」・「便利♪」・「楽しい♪」です!
ここを訴求できてこそ、公共交通の利用を促すきっかけが掴めるのではないでしょうか。
公共交通の啓蒙広告は、効果が無さそうな熊本県の事例ですが、利用促すための具体的な施策では、面白い試みも行っていますのでご紹介します😲
熊本県のバス・電車で使える「渋滞なくそう!半額パス」は、交通事業者の窓口にて2,500円(デポジット500円含む)の会員パスを事前に購入すると、熊本県内全域の路線バス、電鉄電車、熊本市電の運賃が実証期間中、平日の朝ピーク時間を除いて何回乗っても通常運賃の半額でご利用できるサービスになります。
期間は10月1日〜2月28日まで、なんと5ヶ月間ずっと、半額で公共交通を利用できる太っ腹な企画です!😳
行列ができるほど、売れ行きは、好調のようです!
栃木県でも是非実施してほしいですね👏
私個人のアイデアとしては、お酒と公共交通利用は相性がいいので、そこをうまく利用しない手はないと思います。
例えばですが、金曜の夕方から日曜まで、LRTや公共交通を利用し、中心市街地の飲食店を利用したら、1000円分の食事券を配布する企画など面白くないでしょうか。
公共交通の利用促進と、中心市街地の活性化、双方に訴求できる企画なら、予算をつける価値はあると思います。
友達や仲間みんなが、おトクな公共交通を利用し、飲酒運転の心配をしないで、活気に満ちた街中に、気軽に飲みに行けるような、行動変化を促す企画を期待したいですね。
いずれにしても、宇都宮市が目指す「ネットワーク型コンパクトシティ」構想を推進するためには、インフラ整備だけでは十分でなく、様々な行動変化を促すための施策も必要不可欠です。
LRTの西側延伸を早期に整備し、宇都宮市全体として公共交通の再編をするのと同時に、都市としてクルマ依存から脱却するため、住民の行動変化を促す企画力がこれからの行政には求められるのではないでしょうか。
★荻原功太朗の業務について★
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。