今回はXの方でコメントくれたbscさんのリクエストに応えて、前回の内容のつづきとなり、LRT延伸計画の延期が宇都宮市内の不動産相場にどのような影響を与えるかを更に深堀りしてみます。
前回のブログ→【宇都宮市のLRT西側延伸、計画延期へ!】計画はどうなるのか?不動産相場への影響は!?
余談ですが、Xでは不動産業者よりも販売中の不動産に詳しい皆さんが日々最新情報をアップしてくれていて、大変助かっております🙏
仕事が立て込んでおりまして、なかなかSNSの方で直接対応ができずに失礼しておりますが、できる限りリクエストいただけたら、この場でブログ記事として情報をアップしていきます。
半年ほど前からこのブログではこのような展開になることはおおよそ予想していましたが、LRT西側延伸の計画延期は、宇都宮市内の不動産相場を予測する上で、大きな分岐点となるのは間違いありません!
市民の期待と投資家の冷めた視線
地元の皆さまとお話をしていると、「延期というけど、いずれは完成するんでしょう?」という声をよく聞きます。
確かに、市民の皆様にとってLRTが街の東西軸をつないで、街を一つにする待望の公共交通機関であり、西側延伸への期待は依然として高いものがあります。
特に高齢化が進む中、車に頼らない移動手段の確保は切実な問題ですから、その気持ちは痛いほどわかります。
私自身も、事務所のある駅東公園から、馬場町あたりまで、気軽にLRTでランチに行くのを夢見ていましたので、今回の発表は非常に残念であり、どんなに延期になってもぜひ実現してほしいと願っております。
しかし、投資家やデベロッパーの見方は全く異なります。
彼らにとって「計画延期」は「計画凍結」とほぼ同義です。
なぜなら、不動産投資は10年、20年という長期スパンで考える必要があり、「いつになるかわからない」インフラ整備を前提に投資判断を下すことはできないからです。
この温度差が、今後の宇都宮市の不動産市場に大きな影響を与えることになります。
市民は期待を持ち続けるかもしれませんが、市場は既に冷静に反応し始めています。
「延期」が「いつのまにか中止?」になった苦い前例
宇都宮市には、最近でも大型プロジェクトが頓挫した苦い経験があります。
記憶に新しいのは、JR宇都宮駅東口の再開発で計画されていたラグジュアリー高層ホテルの件です。
当初は駅前の景観を一変させる画期的なプロジェクトとして大々的に発表され、市民の期待も高まりました。
東口駅前の再開発のなかでも最も高層で目立ち、シンボル的な位置づけだった、ラグジュアリーホテルがコロナ禍の影響もあり、開発延期に。
その後、インバウンド需要も復調し、東京などではホテル代の高騰が著しいのに、未だに再開発の気配すらなく、宇都宮駅前のホテル用地は空き地のままです。
計画が延期となってから既に相当な年月が経過していますが、その後一向に再開発の目処は立っていません。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
再開発計画は、時間の経過とともに、物価や経済動向、投資環境も大きく変化します。
当初の事業計画の前提条件が次々と崩れていき、最終的には「もはや実現不可能」という結論に至るのです。
LRT西側延伸も、同じ道を辿る可能性は決して低くないと考えるべきでしょう。
東武百貨店の行方が追い打ちをかける
駅西側エリアにとって、さらに懸念材料となるのが東武宇都宮百貨店の先行きです。
全国的に地方百貨店の閉店が相次ぐ中、宇都宮の東武百貨店も例外ではありません。
売上高は年々減少傾向にあり、建物の老朽化も進んでいます。
知事も東武百貨店の建て替えを要望しているようですが、民間ですから採算の見通しが立たなければ、再開発は不可能です。
→「東武宇都宮百貨店は建て替えを」栃木知事、新春インタビュー(朝日新聞)
もし東武百貨店が撤退するようなことになれば、駅西エリアの商業的な求心力は決定的に失われることになります。
確かにパルコ跡地をゼビオが再開発していますが、スポーツ用品店を核とした施設が、かつてのパルコや東武百貨店のような集客力を発揮することは期待できません。
このような状況下で、LRT延伸まで延期となれば、駅西側への投資意欲は確実に後退します。
投資家から見れば、「インフラ整備は不透明」「商業施設は衰退傾向」という二重のマイナス要因を抱えたエリアに、あえて資金を投じる理由は見当たらないでしょう。
マンションデベロッパーが示す厳しい現実
最近、複数のマンションデベロッパーと話をする機会がありましたが、彼らの開発方針は極めて明確です。
過去ログ→【宇都宮市で不動産を売りたいなら急いだほうがいい!?】マンション開発の限界が迫っている!
「JR宇都宮駅から徒歩5分圏内でなければ開発しない」というものです。
というか、宇都宮にいる現場スタッフは開発したくても、金融機関から投資マネーを引き出せないのが状況です。
これは何を意味するのでしょうか。
建設コストの高騰により、もはや駅至近の確実に売れる立地でなければ、事業として成立しないということです。
実際、現在販売中の新築マンションも、販売に苦戦しているケースが少なくありません。
デベロッパーの資金が駅徒歩5分圏内に集中するということは、それ以外のエリアには投機的な資金が流入しないということを意味します。
つまり、大部分のエリアは実需ベースの取引となり、相場は購入者の購買力、すなわち市民の実質賃金の伸びに完全に依存することになります。
エリア別の不動産価格シナリオ
では、具体的に各エリアの不動産価格はどのように推移するのでしょうか。
私の予測をお伝えします。
JR宇都宮駅徒歩5分圏内は、駅至近という希少性から、今後も堅調な値上がり基調を維持するでしょう。デベロッパーが唯一積極的に開発を進めるエリアであり、供給が限定的な中で一定の需要が見込まれます。ただし、開発できる用地も限られており、取引も限定的です。インフレヘッジとしての不動産投機もこのエリアに集中するでしょう。
宮島町交差点から東武百貨店周辺のエリアは、横ばいもしくはやや下落すると予想されます。LRT延伸への期待が剥落し、商業施設の先行き不透明感も重なることで、投資家の関心は確実に薄れていきます。現在このエリアに物件をお持ちの方は、売却タイミングを慎重に検討される必要があるかもしれません。
東武百貨店から先の大通り、作新学院周辺、つまりLRT延伸予定だったエリアについては、残念ながら緩やかな下落トレンドに入ると考えられます。延伸計画を織り込んで形成されていた価格が、実需に基づいた本来の水準に向けて調整されることになるでしょう。LRT延伸延期とともに、路線バスの維持が先行き不透明なのもこのエリアには効いてきます。
一方、東側のLRT沿線エリアは、西側延伸の延期により相対的な優位性が高まります。限られた投資資金が東側に集中することで、緩やかな上昇基調は続くと予想されます。ただし、「LRT効果」への過度な期待が修正されることで、これまでのような急激な上昇は期待できないでしょう。
インフレ時代の不動産戦略
この他にも、重要なのがインフレで現金の価値が急速に減価し始めている影響です。
現在の経済環境を見ると、株価は史上最高値を更新し、金価格も過去最高水準で推移しています。
これは明らかにインフレが加速していることを示しています。
インフレ環境下では、現金の価値は相対的に目減りしていきます。
そのため、実物資産である不動産を保有する動機は強まることになります。
特に、中心市街地、駅東エリア、LRT開業済み沿線エリアの優良物件については、インフレヘッジの観点からも長期保有が賢明な選択となる可能性があります。
ただし、これはあくまでも立地の良い物件に限った話です。
将来性の乏しいエリアの物件は、インフレ下でも価値の維持は困難でしょう。
もしそうなってしまうと、インフレで資産を失うばかりになってしまいます。
不動産投資の鉄則である「立地がすべて」という原則は、どのような経済環境下でも変わることはありません。
今後の投資判断のポイント
LRT西側延伸の延期を受けて、宇都宮市の不動産市場は大きな転換点を迎えています。
市民の期待と投資家の冷静な判断の間には大きなギャップがあり、このギャップが今後の市場動向を決定づけることになるでしょう。
投資判断を行う際は、「いつか延伸される」という淡い期待ではなく、現実的な市場分析に基づいた判断が必要です。
JR宇都宮駅至近の確実性の高い立地、既に実績のあるLRT東側沿線など、リスクの低いエリアを選択することが、堅実な投資戦略となります。
一方で、駅西側の延伸予定エリアについては、当面は様子見が賢明でしょう。
計画が本格的に再始動する明確な兆候が見えるまでは、積極的な投資は控えるべきかもしれません。
なお、本稿の予測はあくまでも私の個人的な見解です。
実際の投資判断は、各自の責任において、より詳細な調査と分析を踏まえて行っていただくようお願いいたします。
皆様からのご意見やご質問、そして新たなリクエストありましたら、X(旧Twitter)でお気軽にコメントください。
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