現物不動産を持っていればインフレに強い・・この言説の前提が、今まさに大きく揺らいでいます。
2026年3月、ホルムズ海峡封鎖という前代未聞の事態が起き、オイルショックが再び訪れるのはほぼ確実です。
記事リンク→NY原油急騰、一時119ドル台 3年9カ月ぶり、供給不安強まる(時事通信)
原油価格は急騰し、日本でも再びインフレが加速する懸念が現実のものとなりつつあります。
しかし不動産オーナーにとって、今回の「インフレ第二波」は単純に追い風とはなりません。
今回は、ホルムズ封鎖が宇都宮市の不動産に何をもたらすのかを考えてみたいと思います。
目次
- 原油価格が10日間でほぼ倍に!21世紀のオイルショックが始まった
- 原油高騰が直撃するのはガソリンだけではない
- 不動産でインフレに勝てる」モデルの前提が崩れている
- 宇都宮市の現場で起きていること
- 保有コストを考えると、本当にインフレに勝てるのか
- まとめ
原油価格が10日間でほぼ倍に!21世紀のオイルショックが始まった
原油価格は米国・イスラエルによるイラン攻撃前の1バレル67ドル程度から、2026年3月9日には一時120ドル近くにまで急騰しました。
わずか10日間で価格がほぼ倍になった計算です。
日本は原油輸入の約94%を中東に依存しており、そのタンカーの約8割がホルムズ海峡を通っています。
日本郵船や川崎汽船など大手海運会社は通峡を停止し、ペルシャ湾内には日本関係船舶44隻が身動きの取れない状態に置かれています。
封鎖が長期化した場合、日本経済はスタグフレーションと高インフレと低成長が同時に起きる状態陥るリスクがあると、複数の経済機関が警告しています。
緊張が緩和され、部分封鎖シナリオでも日本のGDPは想定より0.6%低下する見込みです。
では、インフレ局面に強いとされる「現物不動産」は、この環境下でも本当にヘッジになるのでしょうか。
原油高騰が直撃するのはガソリンだけではない
ホルムズ海峡を通過するのは原油だけではありません。
記事リンク→三井化学系、汎用樹脂値上げ ホルムズ封鎖で原料の市場価格高騰受け(日本経済新聞)
ナフサ(石油化学の原料)も同じ海峡を通ります。ナフサはエチレンや樹脂、合成ゴム、塗料、断熱材、電線被覆(PVC)など、建設現場で使われる素材のほぼすべての原料です。
実際、三菱ケミカルグループはすでに茨城県の鹿島コンビナートでエチレン生産設備の稼働率を引き下げています。
つまり、ホルムズ封鎖はエネルギーコストを上げるだけでなく、建設資材そのものの供給を直撃しています。
修繕コストが上がり、新規供給も絞られる。この流れが宇都宮市の不動産市場に無縁とは、なかなか言いにくい状況です。
過去ログ→【建設業倒産が12年ぶり2000件超!でも東京だけはホテル建設ラッシュ!】
「不動産でインフレに勝てる」モデルの前提が崩れている
大家さんにとって、不動産投資の収益を冷静に計算し直すと、実は思ったほど旨みがないことに気づきます。
たとえば、表面利回り7%の新築物件を9割融資・金利2.4%・30年で購入し、10年後に同額で売却した場合、投下した自己資金の実質リターンは3.5%程度にしかなりません。
保有中の空室リスク・修繕リスク・心労まで加味すれば、そこまでやる意味があるのか、という問いは決して的外れではありません。
低金利で融資が受けられる環境なら、1%で借りて、9%の利回りで賃貸経営できる時代は、確かに「やる」の一択でした。
超低金利で融資が引けて、値上がりの連続でしたから、何を買っても結果として儲かりました。
しかし今は何が変わったのか。
金利が上昇局面に入り、建設コストが高止まりし、そこにホルムズ封鎖による原油急騰が加わっています。
修繕費・火災保険・ローン金利という「持つコスト」が複数の方向から同時に上がっています。
そして宇都宮市のような地方都市では、これらのコスト増を家賃に転嫁する余地がほとんどありません。
この状況下では、大家業は、「実質3.5%の運用」という試算でさえ、楽観的すぎるかもしれません。
確かに、理論上は土地や建物の価値は物価と連動するはずです。
しかし、不動産は「持つこと自体にコストがかかる現物資産」です。金の延べ棒なら保管コストはほぼゼロですが、不動産は違います。
過去ログ→【インフレで株価最高値更新!でも不動産は売れない!?】過去10年のリターン比較で見えた、宇都宮市で「今すぐ売るべき」不動産とは?
過去ログでもお伝えしたように、インフレヘッジとして機能するかどうかは、「持つコスト」との綱引きで決まります。
2026年の今、アパート・マンションオーナーさんが直面しているコスト増は、5つの方向から同時に押し寄せています。
火災保険は2024年に過去最大の引き上げ率13%を記録し、10年累計では約1.4倍に達しました。
修繕工事は職人不足と材料費高騰で「直したくても業者が見つからない」状態がすでに続いています。
そこに今回のホルムズ封鎖が重なります。建材・塗料・断熱材など石油化学品を含む修繕コストは、数カ月後にさらに驚くほど跳ね上がることになるでしょう。
原材料の価格上昇が工事費に転嫁されるまでには時間差があるだけで、方向性はすでに決まっています。
固定資産税の負担も増え、管理委託費は「値上げしないと辞めます」という声が管理会社から聞こえ始めています。そして、金利上昇は続いています。
家賃が上がらないのに、コストだけが上がり続ける。これが地方都市の現実です。
過去ログ→【宇都宮市で火災保険が3倍に急騰!しかし・・家賃は上がらない!?】
過去ログ→【2026年7月、変動金利の返済額が跳ね上がる!】
宇都宮市の現場で起きていること
宇都宮市内で最近聞こえてくる声が変わってきました。
「思っていたより修繕にかかった」「保険の更新でびっくりした」「空室が続いて金利負担がきつくなってきた」。これが、2026年の宇都宮市の賃貸経営の実態です。
特に深刻なのは、相続でアパートを受け継いだ方々です。
ご自身で選んで購入したわけでもないのに、5つのコストが同時に上昇するという、親の代には考えられなかった事態が起きています。
ではLRT沿線はどうか。JR宇都宮駅東口の沿線エリアでは開業以来の好況が続いており、一部物件の賃料は上昇しています。しかし、それ以外のエリアはどうでしょうか。
宇都宮市の不動産市場はLRT東側沿線と、それ以外のエリアで、すでに明確な二極化が進んでいます。
ホルムズ封鎖による物価上昇圧力は、この二極化をさらに加速させる方向にしか動かないでしょう。
過去ログ→【インフレで株価最高値更新!でも不動産は売れない!?】過去10年のリターン比較で見えた、宇都宮市で「今すぐ売るべき」不動産とは?
保有コストを考えると、本当にインフレに勝てるのか
ここで少し立ち止まって考えてみてください。
火災保険・修繕費・固定資産税・管理委託費・金利、この5つの「持つコスト」は、すでにここ数年で大きく上昇しています。
そして原油価格の上昇が建設資材・修繕コストに本格的に転嫁されてくるのは、これからです。
今はまだ、その入り口に立っているにすぎません。
つまり、現時点でコスト増に苦しんでいるとすれば、これから先はさらに厳しくなる、というのが現実の見立てです。
では、インフレで物件の価値が上がれば帳消しになるのでしょうか。
宇都宮市のような地方都市では、それも簡単ではありません。
過去10年間で、日経平均株価が+200%、金価格が+270%のリターンを記録する中、不動産投資全体(J-REIT)のリターンは+40〜50%にとどまりました。
宇都宮市の多くの物件は、そのJ-REIT水準かそれ以下のパフォーマンスしか残せていないのが現実です。
インフレに強い不動産が存在するとすれば、それはJR宇都宮駅・LRT駅至近で、希少性があり、金利が上がっても買い手が融資を引ける価格帯の、本当にごくごく限られた一握りの物件に限られます。
それ以外の多くの物件は、インフレに「強い」どころか、上がり続ける保有コストと、上がらない家賃の間で静かに収益が削られていく・・
そういう局面に、すでに入っていると見たほうが現実的ではないでしょうか。
まとめ
原油価格が10日間でほぼ倍になり、ナフサを経由して建設資材の調達難が現実のものとなりつつある今、「現物不動産を持てばインフレに勝てる」という言説は、その前提を大きく問い直されています。
修繕費・火災保険・ローン金利という「持つコスト」の上昇に、ホルムズ封鎖によるエネルギーインフレ第二波が加わることで、コスト増を家賃で吸収できない宇都宮市の多くの物件では、インフレヘッジどころか資産の目減りが加速するリスクが高まっています。
もっとも、これは必ずしも悲観すべき話ではありません。
今の状況を正確に理解し、本当にインフレに強い物件を見極められる方にとっては、むしろ「今だからこそ動くべき」局面でもあります。
不動産の問題は、動き出すタイミングが早いほど選択肢が多く残っているものです。
今お持ちの物件が、今の環境下で本当にインフレヘッジになっているかどうか。
一度、冷静に見直してみる価値があるかもしれません。
いずれにしても、これから数カ月後に、ガソリンが突然急騰したのと同じことが、建築資材にも起こることはほぼ確実なので、覚悟しておく必要があるでしょう。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年3月18日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★


0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。