「火災保険(5年契約)が100万円だったのに、更新で300万円請求された」・・(*_*)
宇都宮市内の一棟マンションオーナーさんのこんな話を耳にして、正直驚きました。
しかし現実のコスト上昇は火災保険だけの話ではありません。
修繕費、固定資産税、管理委託費、そして借入金利……
いま、アパートやマンションを持ち続けるための費用が、5つの方向から同時に上がっています。
とくに深刻なのは、相続で親世代から築古物件を受け継いだ方です。
「親の代ではうまく回っていたはずなのに、なぜこんなに手残りが少ないのか?」
その答えは、この5つのコスト上昇にあるかもしれません。
しかも宇都宮市のような地方都市では、これらのコスト増を家賃に転嫁する余地がほとんどないのが現状です。
今回は、この5つのコスト上昇を、専門知識がなくてもイメージできるように整理してみます。
目次
- コスト①:火災保険料――なぜ突然こんなに高くなったのか
- コスト②:修繕工事費――「直したいのに業者が見つからない」時代
- コスト③:固定資産税――「古い建物なら安いはず」の落とし穴
- コスト④:管理委託費――管理会社から「値上げしないなら辞めます」と言われたら
- コスト⑤:借入金利――持つコストが上がり、売る道まで塞がる
- 全部足したら、いくらコストが増えているのか
- まとめ:まずは「今の数字」を知ることから
コスト①:火災保険料――なぜ突然こんなに高くなったのか
冒頭のオーナーさんのように、「なぜいきなり3倍に?」と驚かれる方は少なくありません。
相続で初めて更新手続きをする方なら、なおさらです。
分かりやすく言うと、火災保険料はここ10年で何度も値上がりしてきました。
台風や豪雨による被害が全国で増えたことで、保険会社の支払いが膨らみ、その分が保険料に上乗せされてきたのです。
しかも値上がりは一度きりではなく、何度も繰り返されているので、10年前とはまるで違う金額になっています。
さらにタイミングの問題もあります。
以前は火災保険を最長36年の長期で契約できたのですが、2015年に最長10年に、2022年にはわずか5年にまで短縮されました。
長期契約は保険料を「まとめ買い」のように安く抑えられる仕組みだったので、短くなるほど割高になります。
親御さんが10年前に結んだ契約が満期を迎えて、今の高い料率で5年契約に切り替えると、金額が2倍、3倍になるのは珍しくないのです。
築年数が古い物件はとくに厳しい状況です。
2024年から水害リスクが5段階に細かく分けられるようになり、立地によってはさらに保険料が割増しになります。
設備が古くて水漏れ事故のリスクが高いと判断されると、最悪の場合、保険会社から「うちでは引き受けできません」と断られることすらあります。
保険に入れないとなると、お金を借りている銀行からも「困ります」と言われかねません。
ポイントは、これが「一時的に高くなった」のではなく、5年ごとの更新のたびに値上がりが反映される仕組みに変わったということです。
次の更新でも上がる可能性があると考えておいたほうがよいでしょう。
コスト②:修繕工事費――「直したいのに業者が見つからない」時代
アパートやマンションは、年数が経てば必ずどこかに不具合が出ます。
外壁のひび割れ、屋上からの雨漏り、給排水管の老朽化……。
放っておけば入居者の退去につながりますし、建物自体の価値も下がります。
ところが、いざ修繕しようとすると、「見積もりを取ったら5年前の1.5倍だった」「そもそも業者さんに断られた」ということが宇都宮市内でも増えています。
理由はシンプルです。
職人さんが足りない、材料が高い。
この2つに尽きます。
建設業界では働く人がこの30年で約3割減り、しかも今いる職人さんの多くが50代以上。
若い人がなかなか入ってこないので、仕事を頼める業者さん自体が少なくなっています。
人が少なければ当然、工事の値段は上がります。
さらに木材や鉄鋼などの建築材料もこの5年で約4割値上がりしており、「人件費も材料費も両方高い」という状態が続いています。
宇都宮市ではさらに厳しい事情があります。
東京まで新幹線で約50分という距離なので、腕のいい職人さんほど単価の高い都内の現場に流れてしまいがちです。
加えて、LRT沿線では新しい建物の建設が活発で、地元の業者さんはそちらに手を取られている。結果として、築古物件の小さな修繕は「後回し」にされやすいのです。
相続で物件を受け継いだ方にとって厄介なのは、「親の代ではこれくらいの費用で直せた」という過去の金額がまったく参考にならないことです。
「待てば安くなる」という時代は、残念ながら終わっています。
コスト③:固定資産税――「古い建物なら安いはず」の落とし穴
固定資産税は、土地や建物を持っているだけで毎年かかる税金です。
相続で物件を受け継いだ方は、毎年届く納付書の金額を「こういうものか」とそのまま払っていることが多いのではないでしょうか。
「築30年も経てば建物の評価は下がるから、税金もどんどん安くなるはず」。そう思いがちですが、実はそうとは限りません。
仕組みをざっくり説明すると、建物の固定資産税は「同じ建物を今建てたらいくらかかるか」×「古さによる値引き率」で計算されます。
ここにカラクリがあります。
「古さによる値引き率」には下限があって、どんなに古くても2割分は残るのです。
築30年以上の建物はすでにこの下限に到達しているので、これ以上は下がりません。
一方で、「同じ建物を今建てたらいくらかかるか」というベースの金額は、建築費の高騰にともなって上がっています。
2024年の見直しでは、このベースが引き上げられました。
つまり、建物は古くなっているのに、「今建てたらいくらか」という計算の土台が上がっているので、税額が下がらない、場合によっては上がるという状況です。
次の見直しは2027年度に予定されており、さらなる上昇が予想されます。
意外と知られていないのが、建物を壊して更地にすると、今度は土地の税金が一気に跳ね上がるということです。
住宅が建っている土地には税金が最大6分の1に軽減される特例があるのですが、建物を取り壊した瞬間にこの特例が外れて、土地の税額が最大6倍になります。
「維持費がかかりすぎるから、いっそ建物を壊してしまおう」と考える方もいらっしゃいますが、壊したら壊したで今度は土地の税金が大きな負担になる。
まさに「どちらに進んでも厳しい」という状況です。
コスト④:管理委託費――管理会社から「値上げしないなら辞めます」と言われたら
4つ目は、管理委託費です。
これは建物の管理を管理会社にお願いしている場合に払う費用で、共用部分の清掃、入居者・退去者への対応、設備の点検手配などが含まれます。
相続で物件を受け継いだ方は、まさに「何をどうすればいいか分からない」ので管理会社に頼るしかない、という方がほとんどでしょう。
ところが、この管理委託費も上がっています。
理由はシンプルで、管理員さんや清掃員さんの人件費が上がっているからです。
最低賃金はここ数年、毎年のように引き上げられています。
管理会社としても、このコスト増を自分たちだけで吸収しきれなくなっているのです。
驚くべきことに、全国のマンション管理会社の数は13年連続で減っています。
つまり、管理の仕事自体が「やっても儲からない」状態になり、事業をやめてしまう会社が増えています。
東洋経済の2025年11月の記事では、管理会社が「委託費を20%上げてください。受け入れてもらえなければ3ヶ月後に契約を終了します」と通告するケースが紹介されていました。
相続で物件を受け継いだばかりの方にとって、「管理会社から値上げか撤退かを迫られる」というのは、かなり心細い話だと思います。
しかし、これは宇都宮市に限らず全国的に起きていることなのです。
コスト⑤:借入金利――持つコストが上がり、売る道まで塞がる
最後の5つ目は、借入金利です。
そしてこれが、5つのコストの中でもっとも深刻な問題を引き起こします。
「うちは親のローンがもう終わっているから、金利は関係ない」と思われた方もいるかもしれません。
相続で受け継いだ築古物件の場合、たしかにローンが完済済みだったり、固定金利で借りていて返済額は変わらないというケースがほとんどでしょう。
ではなぜ金利が問題なのか。影響を受けるのは、自分ではなく「買い手」のほうだからです。
どういうことか。宇都宮市のような地方都市では、一棟アパートやマンションを買う人のほとんどがローンを使います。
現金でポンと買える方はごく一部です。金利が上がると、買う側が銀行から借りられる金額が減ります。
たとえば月々の返済を15万円に抑えたいと思っている買い手がいたとして、金利が低ければ4,000万円借りられたのが、金利が上がると3,500万円しか借りられない。
結果として「その値段では買えません」という人が増えるわけです。
さらに深刻なのは、銀行が築古物件への融資そのものを渋り始めていることです。
築年数が古く、今後の家賃収入の伸びが見込めない物件には「融資できません」と断るケースが増えている。買い手がローンを組めなければ、いくら値段を下げても売れません。
つまりこういうことです。①〜④のコスト増で「持ち続けるのがしんどいな」と感じたとき、普通なら「じゃあ売ろう」と考えます。
ところが金利上昇で買い手の資金力が落ち、銀行の融資も厳しくなっているので、「売ろうと思ったときには、もう買い手がいない」という状況に陥りかねない。出口が塞がってしまうのです。
①〜④は「持っている間のコスト」の話。⑤の金利は「持っている間のコスト」と「手放すときの選択肢」の両方に効いてくる。ここが、ほかの4つとは少し性質の違う、厄介なところです。
全部足したら、いくらコストが増えているのか
ここまで5つのコストを見てきました。ひとつひとつは「まあ仕方ないか」と思えるかもしれません。
しかし、怖いのはこの5つが同時に起きていることです。
具体的にイメージしてみましょう。
宇都宮市内にある家賃6万円×10戸の築25年マンション。満室なら年間の家賃収入は720万円です。
この物件で、5つのコスト増を全部足すとざっくり年間で約150万円。
これは家賃2部屋分にあたります。
満室でがんばっても、5年前にはなかった出費で2部屋分の20%あまりの収入が消える。
実質8部屋分(8/10)しか手元に残らないということです。
では家賃を上げればいいかというと、宇都宮市では現実的ではありません。
物価高で入居者の生活にも余裕がなく、家賃を上げれば退去につながります。
LRT沿線の一部を除けば、築古物件の家賃はむしろ下がり気味です。
収入は増やせない。でもコストは増え続ける。そして⑤で見たように、売ろうとしても買い手がつきにくくなっている。
これが、2026年に築古物件を持つオーナーが直面している現実です。
まとめ:まずは「今の数字」を知ることから
今回の内容は、少し厳しい話が多かったかもしれません。
相続でアパートやマンションを受け継いだ方は、ご自身で選んで購入したわけではありません。
賃貸経営の知識がないまま、突然オーナーになった方がほとんどです。
親の代では問題なく回っていたかもしれませんが、火災保険、修繕費、固定資産税、管理委託費、そして金利・・この5つのコストは、ここ数年で大きく変わりました。
そして残念ながら、これらはいずれも「いずれ元に戻る」一時的な上昇ではなく、構造的な変化によるものです。
最も重要な点は、⑤で触れたように、金利の上昇で時間が経つほど選択肢が狭まっていく可能性が高いということです。
コストが膨らんで収支が苦しくなってから「売ろう」と思っても、そのときには買い手がローンを組めない・・そんなケースが、すでに出始めています。
まずは、今の数字を一度整理してみるだけでも、見え方が変わるかもしれません。
- 火災保険の契約はいつ満期か、次の更新でいくらになりそうか
- 固定資産税の納付書の金額は5年前と比べてどうか
- 管理会社への支払いは最近どれくらい変わったか
- 次に必要な修繕工事は何で、今の相場ではいくらくらいか
- ローンの残高はいくらで、金利は固定か変動か
5つのコストは、今この瞬間も上がり続けています。
そして⑤で見たように、金利上昇と融資引き締めで、売却という出口は確実に狭まってきています。
「いつか考えよう」と先送りしている間に、その「いつか」に選択肢が残っているかどうか・・
それは、誰にも保証できません。
今回の内容が、皆さまのお役に立てば幸いです🙌
本記事は2026年2月10日時点の情報に基づいています
★荻原功太朗の業務について★











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