【監査で暴露されたJR宇都宮駅東口ハイブランドホテル計画の舞台裏!】建設費高騰で事実上の計画凍結か?

2025年9月13日土曜日

宇都宮市の不動産と街の動向 不動産ビジネスあれこれ 不動産投資・大家さんネタ

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 LRTの利用者が順調に推移しているのとは正反対に、予想はしていましたが、JR宇都宮駅東口の再開発区画のシンボルとなるハイブランド高層ホテル建設計画は事実上の凍結といえるような状況になってしまいました。

→JR宇都宮駅東口、未整備のハイブランドホテル 企業グループ「当面の間は困難」 宇都宮市に申し入れ(下野新聞)

JR宇都宮駅東口の再開発計画のうち未整備のハイブランドホテルについて佐藤市長は、施設整備主体の企業グループから市に対し「建設費高騰など現在の事業環境下では当面の間、整備は困難」との申し入れがあったことを明らかにしました。

すでにウツノミヤテラスなどの主だった再開発計画は2022年に完了し、そこから3年以上の月日が経っているのに未だに、ハイブランドホテル用地は手つかずのまま放置されています。

もはやこの場所を最初から公共の空きスペースだと勘違いしている皆さんも多々いらっしゃるのではないでしょうか。

この頓挫している再開発ホテル計画の流れを、外部監査報告書が詳細に報じています!

今回は驚きの暴露内容を追いながら、今後の東口駅前の再開発の行く末を考察してみます。

監査で明らかになった深刻な問題の数々

包括外部監査では、複合施設棟②(ハイブランドホテル)について、4つの重大な問題点が指摘されています。

これは単なる建設費高騰の問題ではなく、事業構造そのものに致命的な欠陥があったことを示しています。

問題1:提案時から事業主体が決まっていなかった

最も衝撃的なのは、事業者選定時点でホテル整備の具体的な事業主体が決まっていなかったという事実です。

これを分かりやすく説明すると、宇都宮市が「駅東口にハイブランドホテルを建てる事業者を募集します」と公募をかけた際、応募してきた企業グループ「うつのみやシンフォニー」の提案は「誰かが建てます」と言っているだけで、その「誰か」が決まっていない状態でした。

その後、平成31年1月になって初めて㈱Colours Internationalという会社がホテル建設の担当として参加しましたが、この会社は提案時点では存在すらしていませんでした

つまり、肝心のホテルを建てる会社が決まらないまま事業者として選ばれてしまったのです。

さらに深刻なのは、約90億円というホテル建設費の調達方法についてです。

最初は「全額自己資金で建設します」と提案していたにも関わらず、選考審査の途中で「やっぱり銀行から借金して建設します」に変更されています。

90億円という巨額の資金調達方法の変更は事業の根幹に関わる重大事項であるにも関わらず、宇都宮市は変更理由も資金調達の実現可能性も一切確認していませんでした

問題2:構成員変更時の審査が不十分

平成31年1月になると、さらに混乱が生じました。

当初の企業グループ「うつのみやシンフォニー」では、オフィスフロアの担当だった㈱ビック・ビーが突然脱退し、代わりにホテル建設を担当する㈱Colours Internationalが新たに参加することになりました。

要するに、選定後にチームのメンバーが入れ替わり、さらに建物の設計まで大幅に変更されたのです。

この際、施設計画も大幅に変更されています。

  • 客室数:200室→280室
  • 宴会場、レストランなどの共用部機能を追加
  • 階層:14~25階→6~27階(6~12階のオフィス等業務施設をホテルに変更)

監査では、この構成員変更および施設計画見直しについて、事業費・収支計画の変更や事業への影響評価が全く行われていなかったことが問題として指摘されています。

問題3:提案内容が実行されない場合の対応策なし

事業契約書には、提案内容が実行されない場合の対応についての契約条項が全く定められていませんでした。

公募型プロポーザル方式では提案内容の実行可能性が不可欠であるにも関わらず、実行されなかった場合のペナルティ条項すら設けられていなかったのです。

ここは計画に対する姿勢が楽観的過ぎたのか、脇が甘すぎの感が否めません。

結果的に再開発の美味しいところだけ持っていかれているようにも見えます。

問題4:宇都宮市のマネジメント不足

監査では、宇都宮市のホテル整備に係る進行管理が不十分であることも厳しく指摘されています。

ハイブランドホテルの実現見通しが立たないにも関わらず、所管部署である「駅東口整備室」を令和4年度から市街地整備課に移管しており、継続的な管理体制にも問題があったとされています。

事実上の計画凍結状態が続く深刻な影響

現在、ホテル予定地は暫定広場として運用されている状況が続いています。

しかし、監査では、もしウツノミヤテラスと同時期に事業用定期借地契約を締結していれば、令和5年度までに約4,765万円の地代収入が得られていたと試算されています。

つまり、宇都宮市は本来得られるべき地代収入を逸失し続けている状態です。

不動産のプロの私から見たらこの駅前一等地で、土地の賃料が月額100万円ほどとは、かなり割安です。

それでも民間業者は再開発に踏み込めないほど、建築コスト高騰は深刻な問題であることを浮き彫りにしています。

LRT大成功の陰で起きる皮肉な矛盾

ここで考えなければならないのは、宇都宮LRTが圧倒的な成功を収めていることと、ハイブランドホテル計画が頓挫していることの深刻な矛盾です。

LRTの利用実績は驚異的です。2023年8月の開業からわずか2年足らずで累計利用者数1000万人を突破し、想定より6カ月も早い到達となりました。

月間利用者数も2025年7月には約50万6000人と過去最高を記録し、開業初年度から黒字化も達成しています。

これは宇都宮駅東口エリアの都市開発が堅調であることを明確に示しています。

LRTという新たな交通インフラが市民に受け入れられ、経済効果も着実に上がっているのです。

沿線には新たな住宅開発も進み、地価上昇も実現しています。

しかし皮肉なことに、この好調なLRTの玄関口であるJR宇都宮駅東口で、最も重要な商業施設であるはずのハイブランドホテルが建設できないという事態が起きています。

交通需要も経済効果も実証されているエリアで、なぜ高級ホテルが実現できないのでしょうか。

建設業界の構造的問題が露呈

この矛盾の背景にあるのは、過去ログでもお伝えした建設業界の「採算の限界突破」です。

→過去記事:【全国で公共工事のストップが続出!都心マンションバブルでも供給減!】つくれない時代が宇都宮市の不動産に与える影響とは?

東京都心部でさえ、バブル価格でも建設コストの上昇がそれを上回るため採算の取れない物件が続出しています。

LRTという成功インフラがあり、確実な需要が見込める宇都宮駅東口ですら、建設コストの高騰により高級ホテル開発が成立しないのが現実なのです。

つまり、需要があることと建設可能であることは、もはや全く別の問題となってしまったのです。

LRT西側延伸への深刻な警鐘

このハイブランドホテル計画の頓挫は、LRT西側延伸計画にも深刻な影響を与える可能性があります。

西側延伸計画は、当初400億円から700億円へと事業費が膨張し、現在は「開業時期未定」の延期状態にあります。

しかし、LRTの利用者が順調に推移し、県内で地価上昇率トップ、宇都宮駅東口駅前という最も条件の良い立地で、割安な地代で好条件にも関わらず、約90億円規模のハイブランドホテルすら建設できないのが現実です。

この状況で、公共工事とはいえ700億円という巨額投資を要する西側延伸の実現可能性にも暗雲が漂い始めています。

建設業界の選別受注が進む中、利益率の低い公共工事は敬遠される傾向が強まっています。

複雑で技術的難易度の高いLRT軌道工事を請け負える専門業者は限られており、その少数の業者も、より条件の良い都市部の案件を優先する可能性が高いのです。

駅東口の民間ホテル開発でさえ建設費高騰により頓挫している状況で、公的予算の制約が厳しいLRT西側延伸が計画通り進められるとは考えにくいというのが当面の現実的な見方でしょう。

監査が示す現実的な解決策


監査では、宇都宮市に対して近い将来の期限設定と新たな方策の検討を求めています。

具体的には2点あり、

  • 期限内にホテル事業者が決定しない場合、「うつのみやシンフォニー」以外の整備事業者の募集検討
  • 事業契約書第16条「債務不履行等」の適用検討

監査資料では、「ハイブランドホテルにこだわらなければ、多くの事業者が参入の意向を示すことが考えられる」と指摘されており、計画の抜本的見直しの必要性を示唆しています。

現実を受け入れ、新たな活用策を模索する時期

街のブランド価値を上げる意味でも、駅前にハイブランドホテルはなんとかしてでも誘致してほしいところです。

誘致に成功すれば大きな経済効果が見込めることは間違い有りません。

多くの皆さまがLRTに熱狂する中、私はこのハイブランドホテルがLRTとともに、東口を全く別のステージの押し上げる最重要な開発案件だと思い注視していました。

なぜなら、国際水準の宿泊施設があることで、エリア全体のグレード感が向上し、周辺のマンションや商業用不動産の価値も連動して上昇する傾向が強いからです。

駅前に街のシンボルとなるような、かっこいい高層建物があり、最高のサービスを受けられるハイブランドホテルがあることで、宇都宮市全体のイメージアップや企業誘致、観光振興などに大きな効果が期待できるはずでした。

しかし、この監査資料を読む限り、当初の計画通り、ハイブランドホテル実現は極めて困難と言わざるを得ません。

理想を追い求めるあまり、駅東口という一等地が長期間塩漬け状態になることは、宇都宮市にとってより大きな損失となってしまいます。

今となっては、そのままイベント用空きスペースでも良いと思われる方も多いでしょうが、当初描いた再開発計画はハイブランドホテルも含めて、駅前全体の施設が相乗効果が出るように設計されています。

隣の病院も、高度な医療を受けられる施設で、国内外のVIPの治療にも対応できるような計画をしていたとも聞いています。

結果的に、ハイブランドホテルの再開発計画が頓挫したことで、周辺施設は当初の目論見を修正せざる得ない状況です。

建設費高騰と供給制約という構造的問題は、期待や願望では解決できません。

新しい時代の流れをしっかりと直視し、限られた予算と制約の中で実現可能な最善策を見つけることが急務ではないでしょうか。

監査資料が指摘する通り、「ハイブランドホテルにこだわらなければ、多くの事業者が参入の意向を示すことが考えられる」のが現実です。

今の経済社会情勢と真摯に向き合い、現実的なビジネスホテルや中級ホテル、あるいは商業・オフィス複合施設など、より現実的な開発プランに軌道修正することで、空白区画の利用法を再度見直す時期に来ています。

完璧を求め何も実現しないよりも、現実的な選択肢で着実に街づくりを進めることこそが、宇都宮市の将来にとって最も有益ではないでしょうか。

今回取り上げた監査資料は、大型再開発プロジェクトが抱える構造的な問題を浮き彫りにする貴重な記録となっています。

資料の詳細を追っていくと、このブログではとても取り扱えない、大規模な再開発の闇の部分がよく見えるはずです。

ご興味ある皆さまはぜひ、宇都宮市包括外部監査資料に直接目を通してみてください。

→宇都宮市包括外部監査資料のリンク


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★荻原功太朗の業務について★

株式会社サンプラン所属。資産家の皆様を対象とした、「増やすよりも、守る」を目的とした、宇都宮市内での不動産の売買・運営・管理・資産保全をサポート。他にも2つの法人の役員を兼務。不動産売買のご相談についても、ご指名頂ければ、できるかぎり対応させて頂きます。

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